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 発達障害は、医学、教育学、心理学、社会福祉、行政等の隣接諸分野にまたがる障害である。発達障害の概念は、これら諸分野からの影響が複雑に絡み合い、時代の流れを受けて刻々と変化し、それぞれの分野によって、概念や語の使用法が異なる場合もある。  
 発達障害は、医学、教育学、心理学、社会福祉、行政等の隣接諸分野にまたがる障害である。発達障害の概念は、これら諸分野からの影響が複雑に絡み合い、時代の流れを受けて刻々と変化し、それぞれの分野によって、概念や語の使用法が異なる場合もある。  
 
 
 発達障害の概念には、Developmental disabilityとDevelopmental disorderの2つがある。Developmental disabilityは主に社会福祉・行政分野で用いられる概念で、Developmental disorderは、主に医学分野で用いられる概念である。
 発達障害(Developmental disorders)という概念は、1987年に[[wikipedia:ja:アメリカ精神医学会|アメリカ精神医学会]]の診断基準である[[Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders]] (DSM)の改定第3版([[DSM-Ⅲ-R]]) <ref name="ref1"> ''' American Psychiatric Association.''' <br> Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 3rd edition, revised.<br> '' American Psychiatric Association. (Washington, DC)'' :1987 </ref> に初めて記述され、精神遅滞(知的障害)・特異的発達障害(LD・言語と[[wikipedia:ja:会話|会話]]の障害・運動能力障害)・PDDなどを包含するものと定義され、[[人格障害]]とともに第Ⅱ軸に記載された。これは、それまでの精神病カテゴリーや[[脳損傷]]に起因するとされてきた発達障害・症候群を、新たな医学的な疾病概念(障害概念)と位置付けたことで大きな転換点となった。1994年の第4版([[DSM‐Ⅳ]]<ref name="ref2"> ''' American Psychiatric Association. ''' <br> Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition.<br> '' American Psychiatric Association. (Washington, DC)'' :1994 </ref> )以後はDevelopmental disordersという表記が消えて、精神遅滞(知的障害)を第Ⅱ軸に残したまま、PDDやAD/HDなどは個別の疾患(障害)として第Ⅰ軸に移動し、その他の一般的な精神障害とともに記載されるようになった。これは、生涯変わらぬ障害としてではなく、治療対象として位置づけられるようになったことを示唆している。  
 
 Developmental disabilityという概念は、1963年に初めてアメリカ公法の正式な用語として記述された。当初、Developmental disabilityの対象疾患は、知的障害、[[脳性まひ]]、[[てんかん]]、などであったが、やがて[[自閉症]]などPDD、[[失読症]]、[[感覚障害]](盲ろう)、慢性疾患などへと拡大され、障害が発現する年齢も、18歳以前から22歳以前に引き上げられた。
 
 Developmental disordersという概念は、1987年に[[wikipedia:ja:アメリカ精神医学会|アメリカ精神医学会]]の診断基準である[[Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders]] (DSM)の改定第3版([[DSM-Ⅲ-R]]) <ref name="ref1"> ''' American Psychiatric Association.''' <br> Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 3rd edition, revised.<br> '' American Psychiatric Association. (Washington, DC)'' :1987 </ref> に初めて記述され、精神遅滞(知的障害)・特異的発達障害(LD・言語と[[wikipedia:ja:会話|会話]]の障害・運動能力障害)・PDDなどを包含するものと定義され、[[人格障害]]とともに第Ⅱ軸に記載された。これは、それまでの精神病カテゴリーや[[脳損傷]]に起因するとされてきた発達障害・症候群を、新たな医学的な疾病概念(障害概念)と位置付けたことで大きな転換点となった。1994年の第4版([[DSM‐Ⅳ]]<ref name="ref2"> ''' American Psychiatric Association. ''' <br> Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 4th edition.<br> '' American Psychiatric Association. (Washington, DC)'' :1994 </ref> )以後はDevelopmental disordersという表記が消えて、精神遅滞(知的障害)を第Ⅱ軸に残したまま、PDDやAD/HDなどは個別の疾患(障害)として第Ⅰ軸に移動し、その他の一般的な精神障害とともに記載されるようになった。これは、生涯変わらぬ障害としてではなく、治療対象として位置づけられるようになったことを示唆している。  


 一方、[[wikipedia:ja:世界保健機構|世界保健機構]]による[[wikipedia:ja:国際疾病分類|国際疾病分類]] (International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems, ICD)第10版([[wikipedia:ja:ICD-10|ICD-10]]) <ref name="ref3"> ''' World Health Organization. ''' <br> ICD 10: International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems. <br> '' World Health Organization. (Geneva)'' :1992 </ref> では、F80-F89 心理的発達の障害として、特異的発達障害(会話および言語、学習能力、運動機能)ならびにPDDが表記されている。ICD-10では、それまで通りAD/HDは、心理的発達の障害ではなく、F90-F98 小児&lt;児童&gt;期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害の中で、[[多動性障害]]として表記され、DSMとは異なる位置づけをしている。ただし、一般には、AD/HDは、乳幼児期より兆候が現われ就学後に顕在化し、成長とともに軽快するものの、成人後も機能障害が残存すること、PDDなど他の発達障害との遺伝的関連を認めること、男児に多いこと、などから、発達障害に含められることが多い。  
 一方、[[wikipedia:ja:世界保健機構|世界保健機構]]による[[wikipedia:ja:国際疾病分類|国際疾病分類]] (International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems, ICD)第10版([[wikipedia:ja:ICD-10|ICD-10]]) <ref name="ref3"> ''' World Health Organization. ''' <br> ICD 10: International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems. <br> '' World Health Organization. (Geneva)'' :1992 </ref> では、F80-F89 心理的発達の障害として、特異的発達障害(会話および言語、学習能力、運動機能)ならびにPDDが表記されている。ICD-10では、それまで通りAD/HDは、心理的発達の障害ではなく、F90-F98 小児&lt;児童&gt;期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害の中で、[[多動性障害]]として表記され、DSMとは異なる位置づけをしている。ただし、一般には、AD/HDは、乳幼児期より兆候が現われ就学後に顕在化し、成長とともに軽快するものの、成人後も機能障害が残存すること、PDDなど他の発達障害との遺伝的関連を認めること、男児に多いこと、などから、発達障害に含められることが多い。  
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