「積分発火モデル」の版間の差分

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==神経細胞モデル間の比較==
==神経細胞モデル間の比較==
 これまで、積分発火モデルとその様々な拡張モデルについて紹介を行った。本節では、4つの神経細胞モデル (積分発火モデル、Izhikevichモデル、Multi-timescale Adaptive Thresholdモデル、Hodgikin-Huxleyモデル) について比較を行い、モデルの特徴を整理する (表1)。
 これまで、積分発火モデルとその様々な拡張モデルについて紹介を行った。本節では、4つの神経細胞モデル (積分発火モデル、Izhikevichモデル、Multi-timescale Adaptive Thresholdモデル、Hodgikin-Huxleyモデル) について比較を行い、モデルの特徴を整理する('''表''')。


 まず、モデルの再現性、つまり、数理モデルが実際の神経細胞の発火パターンを再現できるかどうかについて考えよう。モデルの再現性として、
 まず、モデルの再現性、つまり、数理モデルが実際の神経細胞の発火パターンを再現できるかどうかについて考えよう。モデルの再現性として、
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 最後に、モデルパラメータの解釈性について考えよう。Hodgikin-Huxleyモデルは、全てのパラメータがイオンチャネルと対応しているため、パラメータの解釈を行うことが容易である。その一方、積分発火モデルやIzhikevichモデルは単純化されすぎているため、パラメータの生理学的意味を解釈することはできない。このため、積分発火モデルやその拡張モデルは現象論的モデルと呼ばれることもある。Multi-timescale Adaptive Thresholdモデルのパラメータは、複数のイオン電流の効果が合わさったものに対応している。このため、パラメータから遅いカリウム電流の有無などを解釈できるものの、イオン電流の詳細については解釈できない。
 最後に、モデルパラメータの解釈性について考えよう。Hodgikin-Huxleyモデルは、全てのパラメータがイオンチャネルと対応しているため、パラメータの解釈を行うことが容易である。その一方、積分発火モデルやIzhikevichモデルは単純化されすぎているため、パラメータの生理学的意味を解釈することはできない。このため、積分発火モデルやその拡張モデルは現象論的モデルと呼ばれることもある。Multi-timescale Adaptive Thresholdモデルのパラメータは、複数のイオン電流の効果が合わさったものに対応している。このため、パラメータから遅いカリウム電流の有無などを解釈できるものの、イオン電流の詳細については解釈できない。


 
{| class="wikitable" style="text-align: center
 
|+表: 神経細胞モデルの比較
表1: 神経細胞モデルの比較。 4つの神経細胞モデル、積分発火モデル (LIF)、Izhikevichモデル (Izhikevich), Multi-timescale Adaptive Thresholdモデル (MAT), Hodgikin-Huxleyモデルを比較した。
!  !! 積分発火モデル !! Izhikevich モデル !! Multi-timescale Adaptive Thresholdモデル !! Hodgikin-Huxleyモデル
|-
! 定性的な再現性
| ✖️ || ○ || ○ || △
|-
! 定量的な再現性:予測精度
| ✖️ || ✖️ || ○ || ✖️
|-
! 数値計算の速さ:計算速度
| ○ || △ || ○ || ✖️
|-
! 数値計算の精度:数値誤差
| ○ || ✖️ || ○ || ✖️
|-
! 理論的な取り扱いの容易さ
| ○ || ✖️ || △ || ✖️
|-
! パラメータの解釈性
| ✖️ || ✖️ || △ || ○
|-
|}
○:適したモデルである、△:最適なモデルとは言えない、✖️:目的に合わない。
○:適したモデルである、△:最適なモデルとは言えない、✖️:目的に合わない。
LIF Izhikevich MAT Hodgikin-Huxley
定性的な再現性 ✖️ ○ ○ △
定量的な再現性:予測精度 ✖️ ✖️ ○ ✖️
数値計算の速さ:計算速度 ○ △ ○ ✖️
数値計算の精度:数値誤差 ○ ✖️ ○ ✖️
理論的な取り扱いの容易さ ○ ✖️ △ ✖️
パラメータの解釈性 ✖️ ✖️ △ ○


==関連項目==
==関連項目==