「統合失調症関連遺伝子」の版間の差分

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 [[統合失調症]]は、思春期・青年期に発症し、[[幻覚]]・[[妄想]]などの[[陽性症状]]、[[意欲低下]]・[[感情鈍麻]]などの[[陰性症状]]、[[認知機能障害]]などを主症状とする症候群である。有病率は約1%と頻度は高く、いわゆる「ありふれた疾患」の代表例といえる。患者の多くは慢性の経過をたどるため、罹患すると個人のQOL低下は著しく、社会的損失の大きい疾患である。治療は[[抗精神病薬]]の薬物療法が主体となるが、その原因は未だ不明なままであるため、病態生理に即した治療法は開発されていない。
 [[統合失調症]]は、思春期・青年期に発症し、[[幻覚]]・[[妄想]]などの[[陽性症状]]、[[意欲低下]]・[[感情鈍麻]]などの[[陰性症状]]、[[認知機能障害]]などを主症状とする症候群である。有病率は約1%と頻度は高く、いわゆる「ありふれた疾患」の代表例といえる。患者の多くは慢性の経過をたどるため、罹患すると個人のQOL低下は著しく、社会的損失の大きい疾患である。治療は[[抗精神病薬]]の薬物療法が主体となるが、その原因は未だ不明なままであるため、病態生理に即した治療法は開発されていない。


 他方、遺伝疫学的研究から、統合失調症の発症脆弱性には、遺伝的要因が関与することが確認されており(遺伝率:70~80%<ref><pubmed> 22783273 </pubmed></ref><ref><pubmed> 14662550 </pubmed></ref>)、現在までに多くの分子遺伝学的研究が施行されてきた。古くは[[連鎖解析]]に始まり、いくつかの領域で有意な連鎖が報告されてきたが、複数の民族で一致する領域はほとんど見いだされなかった。これはリスクの効果量(effect size)が小さいために、見逃されている可能性が示唆される。唯一の成功例と考えられる結果は、[[wikipedia:ja:スコットランド|スコットランド]]の大家系で同定された1番染色体と11番染色体の転座であり、その部位に位置する遺伝子は、[[Disrupted-In-Schizophrenia 1]]([[DISC1]])と命名された<ref><pubmed> 10814723 </pubmed></ref>。しかし、この転座を持つ患者でも、必ずしも統合失調症を発症するわけではなく、[[躁うつ病]]や[[うつ病]]など[[気分障害]]を罹患する場合も多いため、「統合失調症」特異的リスクとは断言出来ない。
 他方、遺伝疫学的研究から、統合失調症の発症脆弱性には、遺伝的要因が関与することが確認されており(遺伝率:70~80%<ref><pubmed> 22783273 </pubmed></ref><ref><pubmed> 14662550 </pubmed></ref>)、現在までに多くの分子遺伝学的研究が施行されてきた。古くは[[連鎖解析]]に始まり、いくつかの領域で有意な連鎖が報告されてきたが、複数の民族で一致する領域はほとんど見いだされなかった。これはリスクの効果量(effect size)が小さいために、見逃されている可能性が示唆される。唯一の成功例と考えられる結果は、[[wikipedia:ja:スコットランド|スコットランド]]の大家系で同定された1番染色体と11番染色体の転座であり、その部位に位置する遺伝子は、[[Disrupted-In-Schizophrenia 1]]([[DISC1]])と命名された<ref><pubmed> 10814723 </pubmed></ref>。しかし、この転座を持つ患者でも、必ずしも統合失調症を発症するわけではなく、[[躁うつ病]]や[[うつ病]]など[[気分障害]]を罹患する場合も多いため、「統合失調症」特異的リスクとは断言出来ない。


== 候補遺伝子関連解析からゲノムワイド関連解析へ ==
== 候補遺伝子関連解析からゲノムワイド関連解析へ ==