「軸索再生」の版間の差分

編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
15行目: 15行目:
==== 軸索再生阻害因子  ====
==== 軸索再生阻害因子  ====


 
[[Image:1. ミエリン由来軸索再生阻害因子の構造.png|thumb|right|300px|<br />図1.ミエリン由来軸索再生阻害因子の構造]] [[Image:2. 軸索再生阻害のシグナル伝達機構.png|thumb|right|300px|<br />図2.軸索再生阻害のシグナル伝達機構]]  
[[Image:1. ミエリン由来軸索再生阻害因子の構造.png|thumb|right|300px|<br>図1.ミエリン由来軸索再生阻害因子の構造]]
[[Image:2. 軸索再生阻害のシグナル伝達機構.png|thumb|right|300px|<br>図2.軸索再生阻害のシグナル伝達機構]]  


 中枢神経軸索は、[[オリゴデンドロサイト]]の細胞膜表面の[[wikipedia:JA:リン脂質|リン脂質]]からなるミエリンにより覆われている。軸索が損傷された後にも、ミエリンはdebrisとして残存し、この中には、複数の軸索再生阻害因子が含まれることが報告されている。中でも、[[Myelin associated glycoprotein]] (MAG), [[Nogo]], [[Oligodendrocyte myelin glycoprotein]] (OMgp)についての研究が進んでいる。  
 中枢神経軸索は、[[オリゴデンドロサイト]]の細胞膜表面の[[wikipedia:JA:リン脂質|リン脂質]]からなるミエリンにより覆われている。軸索が損傷された後にも、ミエリンはdebrisとして残存し、この中には、複数の軸索再生阻害因子が含まれることが報告されている。中でも、[[Myelin associated glycoprotein]] (MAG), [[Nogo]], [[Oligodendrocyte myelin glycoprotein]] (OMgp)についての研究が進んでいる。  
73行目: 71行目:
 末梢神経の再生に関しても、cAMPの細胞内濃度の上昇が重要である。上記の通り、神経栄養因子はcAMPの分解を抑制し、細胞内cAMP濃度を上昇させる。神経栄養因子とdb-cAMPの両方の投与により、脊髄損傷後の感覚神経軸索の再生が促される。損傷前に感覚神経の細胞体が存在する脊髄後根神経節にdb-cAMPを投与しておき、損傷後に神経栄養因子[[Neurotrophin-3]] (NT-3)の投与を行うと、損傷1-3ヶ月後に損傷領域を超えて感覚神経の再生が認められる。損傷領域を超えての軸索再生はdb-cAMP、NT-3それぞれ単独投与では認められないことから、脊髄損傷後の軸索再生に必要な細胞内cAMP濃度上昇を促すためには、cAMPの投与と分解の抑制の両方が必要である <ref><pubmed> 12086637 </pubmed></ref>, <ref><pubmed> 12086638 </pubmed></ref>。  
 末梢神経の再生に関しても、cAMPの細胞内濃度の上昇が重要である。上記の通り、神経栄養因子はcAMPの分解を抑制し、細胞内cAMP濃度を上昇させる。神経栄養因子とdb-cAMPの両方の投与により、脊髄損傷後の感覚神経軸索の再生が促される。損傷前に感覚神経の細胞体が存在する脊髄後根神経節にdb-cAMPを投与しておき、損傷後に神経栄養因子[[Neurotrophin-3]] (NT-3)の投与を行うと、損傷1-3ヶ月後に損傷領域を超えて感覚神経の再生が認められる。損傷領域を超えての軸索再生はdb-cAMP、NT-3それぞれ単独投与では認められないことから、脊髄損傷後の軸索再生に必要な細胞内cAMP濃度上昇を促すためには、cAMPの投与と分解の抑制の両方が必要である <ref><pubmed> 12086637 </pubmed></ref>, <ref><pubmed> 12086638 </pubmed></ref>。  


 
<br>


== 関連項目  ==
== 関連項目  ==
81行目: 79行目:
[[シュワン細胞]]  
[[シュワン細胞]]  


 
<br>


== 参考文献  ==
== 参考文献  ==
87行目: 85行目:
<references />  
<references />  


 
<br> (執筆担当者: 藤田幸、山下俊英、担当編集委員: 村上富士夫)
(執筆担当者: 藤田幸、山下俊英、担当編集委員: 村上富士夫)