「連想・比喩」の版間の差分

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 連想とは、[[ヒト]]が五感から得た情報から、関連した他の[[記憶]]を思い浮かべることである。例えば、「海」という言葉を聞いた際に、「砂浜」「マリンスポーツ」という言葉や、恋人と過ごした夏の思い出、潮の香りや裸足で歩く砂浜の感触などが連想される。具体的に何を連想するかは、個人ごとに異なり、それはそれまでの学習や経験によると考えられる。ただ、複数人の連想を調べた場合、共通して多く挙がる連想もあれば、少ない連想もある。
 連想とは、[[ヒト]]が五感から得た情報から、関連した他の[[記憶]]を思い浮かべることである。例えば、「海」という言葉を聞いた際に、「砂浜」「マリンスポーツ」という言葉や、恋人と過ごした夏の思い出、潮の香りや裸足で歩く砂浜の感触などが連想される。具体的に何を連想するかは、個人ごとに異なり、それはそれまでの学習や経験によると考えられる。ただ、複数人の連想を調べた場合、共通して多く挙がる連想もあれば、少ない連想もある。


 Damasio他<ref name=Damasio1996><pubmed>8606767</pubmed></ref>は、人物、動物、道具の写真を見てその名前を言うという課題(写真からその名称を連想する課題)を用いたイメージング研究を行い、左[[側頭葉]]の賦活を報告している。また、カテゴリごとに賦活する部位が異なっており、人物は[[側頭極]]([[38野]])、動物は下[[側頭回]]の前方([[20野]])、道具は下[[側頭回]]の後方([[ブロードマン20野|20野]])の関与が認められた。このことから、名称に関する知識([[意味記憶]])は外側の[[側頭葉]]に蓄えられていると考えられている。一方、内側の[[側頭葉]]はエピソード記憶の保持に関与している可能性が報告されている<ref name=Nyberg1996><pubmed>8614466</pubmed></ref>。
 Damasio他<ref name=Damasio1996><pubmed>8606767</pubmed></ref>は、人物、動物、道具の写真を見てその名前を言うという課題(写真からその名称を連想する課題)を用いたイメージング研究を行い、左[[側頭葉]]の賦活を報告している。また、カテゴリごとに賦活する部位が異なっており、人物は[[側頭極]]([[ブロードマン38野|38野]])、動物は下[[側頭回]]の前方([[ブロードマン20野|20野]])、道具は下[[側頭回]]の後方(20野)の関与が認められた。このことから、名称に関する知識([[意味記憶]])は外側の[[側頭葉]]に蓄えられていると考えられている。一方、内側の[[側頭葉]]はエピソード記憶の保持に関与している可能性が報告されている<ref name=Nyberg1996><pubmed>8614466</pubmed></ref>。


 さて、「海―砂浜」のように、語の組み合わせを覚える課題においては、[[海馬]]が賦活することが知られており、この賦活は2語<ref name=Henke1999><pubmed>10318979</pubmed></ref><ref name=Jackson2004><pubmed>14741683</pubmed></ref><ref name=Meltzer2005><pubmed>15627581</pubmed></ref><ref name=Prince2005><pubmed>15689557</pubmed></ref>、3語<ref name=Lepage2000><pubmed>10808138</pubmed></ref><ref name=Addis2006><pubmed>17023179</pubmed></ref>、2つの物<ref name=Kohler2005><pubmed>15999342</pubmed></ref>、顔と名前<ref name=Sperling2001><pubmed>11559958</pubmed></ref><ref name=Sperling2003><pubmed>14568509</pubmed></ref>においても同様である。一方、この連想を引き出す場合には、[[海馬]]に加えて、内側[[側頭葉]]、[[頭頂葉]]、[[前頭前野]]、そして[[後頭葉]]が賦活していた<ref name=Otten2001><pubmed>11709486</pubmed></ref>。また、感情が喚起される場合には、これらの活動がより強くなることが報告されている<ref name=Reisberg2005>'''Reisberg D, & Hertel P.'''<br>Memory and emotion.<br>''New York: Oxford University Press'': 2005.</ref><ref name=Dolcos2004a><pubmed>15325353</pubmed></ref><ref name=Dolcos2004b><pubmed>15182723</pubmed></ref><ref name=Dolcos2005><pubmed>15703295</pubmed></ref>。また、ネガティブな連想においては、[[記憶]]時と[[想起]]時の両方において、左中[[側頭回]]後方の賦活が報告されている<ref name=Onoda2009><pubmed>19428683</pubmed></ref>。この領域は、[[エピソード記憶]]よりも[[意味記憶]]の処理において賦活することが報告されていることから<ref name=Wiggs1999><pubmed>9920476</pubmed></ref>、意味的な変調<ref name=Mechelli2007><pubmed>16767767</pubmed></ref>をかけている可能性が考えられる。
 さて、「海―砂浜」のように、語の組み合わせを覚える課題においては、[[海馬]]が賦活することが知られており、この賦活は2語<ref name=Henke1999><pubmed>10318979</pubmed></ref><ref name=Jackson2004><pubmed>14741683</pubmed></ref><ref name=Meltzer2005><pubmed>15627581</pubmed></ref><ref name=Prince2005><pubmed>15689557</pubmed></ref>、3語<ref name=Lepage2000><pubmed>10808138</pubmed></ref><ref name=Addis2006><pubmed>17023179</pubmed></ref>、2つの物<ref name=Kohler2005><pubmed>15999342</pubmed></ref>、顔と名前<ref name=Sperling2001><pubmed>11559958</pubmed></ref><ref name=Sperling2003><pubmed>14568509</pubmed></ref>においても同様である。一方、この連想を引き出す場合には、[[海馬]]に加えて、内側[[側頭葉]]、[[頭頂葉]]、[[前頭前野]]、そして[[後頭葉]]が賦活していた<ref name=Otten2001><pubmed>11709486</pubmed></ref>。また、感情が喚起される場合には、これらの活動がより強くなることが報告されている<ref name=Reisberg2005>'''Reisberg D, & Hertel P.'''<br>Memory and emotion.<br>''New York: Oxford University Press'': 2005.</ref><ref name=Dolcos2004a><pubmed>15325353</pubmed></ref><ref name=Dolcos2004b><pubmed>15182723</pubmed></ref><ref name=Dolcos2005><pubmed>15703295</pubmed></ref>。また、ネガティブな連想においては、[[記憶]]時と[[想起]]時の両方において、左中[[側頭回]]後方の賦活が報告されている<ref name=Onoda2009><pubmed>19428683</pubmed></ref>。この領域は、[[エピソード記憶]]よりも[[意味記憶]]の処理において賦活することが報告されていることから<ref name=Wiggs1999><pubmed>9920476</pubmed></ref>、意味的な変調<ref name=Mechelli2007><pubmed>16767767</pubmed></ref>をかけている可能性が考えられる。