「適応障害」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
(マイナーな字句の訂正)
編集の要約なし
 
(同じ利用者による、間の2版が非表示)
1行目: 1行目:
<div align="right"> 
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0018809 塩入 俊樹]</font><br>
''岐阜大学精神科''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年3月28日 原稿完成日:2012年11月15日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
</div>
英語名:Adjustment Disorder  略号: AD
英語名:Adjustment Disorder  略号: AD


{{box|text=
 はっきりとした[[ストレス]]因子によって、[[抑うつ]]状態や[[不安]]状態、攻撃的な行動などが、通常は一時的に引き起こされた状態をいう。その症状はストレス因子の始まりから3ヶ月以内に出現し、その因子がなくなると、症状は6ヶ月以内に軽快する。したがって、誰にでも起こりそうなストレス反応に近いものであるが、この症状は臨床的に著しく、日常生活が著明に障害されることが必要となる。
 はっきりとした[[ストレス]]因子によって、[[抑うつ]]状態や[[不安]]状態、攻撃的な行動などが、通常は一時的に引き起こされた状態をいう。その症状はストレス因子の始まりから3ヶ月以内に出現し、その因子がなくなると、症状は6ヶ月以内に軽快する。したがって、誰にでも起こりそうなストレス反応に近いものであるが、この症状は臨床的に著しく、日常生活が著明に障害されることが必要となる。
}}


== 診断基準==
== 診断基準==
42行目: 51行目:


==鑑別診断==
==鑑別診断==
 まず前述の死別反応のような場合、医学的あるいは精神医学的なサービスを受けたとしても、ADの診断は通常なされない。中高年のADでは、軽度の『[[うつ病]]』との鑑別が重要である。ストレス因が解消し、症状が回復するのを確認できなければ、ADなのか、あるいは『うつ病』なのかの最終的な鑑別診断はできないと思っていい。一方、青年期の患者では、『[[統合失調症]]』や『[[パニック障害]]』などの『[[神経症性障害]]・[[ストレス関連障害]]』との鑑別が問題となる。もし、ストレス因子が、“例外的に強い”あるいは “並はずれた脅威や破局的な性質”を持っている場合には、『[[急性ストレス反応]]』あるいは『[[心的外傷後ストレス障害]]』との鑑別が必要となる。  
 まず前述の死別反応のような場合、医学的あるいは精神医学的なサービスを受けたとしても、ADの診断は通常なされない。中高年のADでは、軽度の『[[うつ病]]』との鑑別が重要である。ストレス因が解消し、症状が回復するのを確認できなければ、ADなのか、あるいは『うつ病』なのかの最終的な鑑別診断はできないと思っていい。一方、青年期の患者では、『[[統合失調症]]』や『[[パニック症]]』などの『[[神経症性障害]]・[[ストレス関連障害]]』との鑑別が問題となる。もし、ストレス因子が、“例外的に強い”あるいは “並はずれた脅威や破局的な性質”を持っている場合には、『[[急性ストレス反応]]』あるいは『[[心的外傷後ストレス障害]]』との鑑別が必要となる。  


 また、症状やその重症度において、ストレス因への反応で生じる、『[[気分障害]]』や『神経症性障害・ストレス関連障害』とのオーバーラップ、あるいは正常範囲の心理反応との区別が曖昧で難しいこともある。繰り返しになるが、ADの診断に当たっては、発病の様式や症状の内容、そして重症度などを慎重に評価し、特定の『気分障害』や神経症性障害・ストレス関連障害』の診断基準が満たされるならば、まずそれらの診断がなされる。ADは、あくまでも残遺カテゴリーという認識が、最も重要である。
 また、症状やその重症度において、ストレス因への反応で生じる、『[[気分障害]]』や『神経症性障害・ストレス関連障害』とのオーバーラップ、あるいは正常範囲の心理反応との区別が曖昧で難しいこともある。繰り返しになるが、ADの診断に当たっては、発病の様式や症状の内容、そして重症度などを慎重に評価し、特定の『気分障害』や神経症性障害・ストレス関連障害』の診断基準が満たされるならば、まずそれらの診断がなされる。ADは、あくまでも残遺カテゴリーという認識が、最も重要である。
65行目: 74行目:


<references/>
<references/>
(執筆者:塩入俊樹  担当編集者:加藤忠史)

案内メニュー