「遺伝子導入」の版間の差分

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=== 電気穿孔法 ===
=== 電気穿孔法 ===
エレクトロポレーション
[[エレクトロポレーション]]


 細胞と[[プラスミドDNA]]の懸濁液に電気パルスをかけることで[[細胞膜]]に微小な穴を一過性にあけ、DNAを細胞内部に送り込む方法。浮遊細胞や接着細胞だけでなく、[[子宮]]内胎仔脳への遺伝子導入にも用いられる。遺伝子導入効率は高く、他の遺伝子導入法に比べて簡単であるが、専用の器械を必要とする。
 細胞と[[プラスミドDNA]]の懸濁液に電気パルスをかけることで[[細胞膜]]に微小な穴を一過性にあけ、DNAを細胞内部に送り込む方法。浮遊細胞や接着細胞だけでなく、[[子宮]]内胎仔脳への遺伝子導入にも用いられる。遺伝子導入効率は高く、他の遺伝子導入法に比べて簡単であるが、専用の器械を必要とする。
''詳細は[[電気穿孔法]]の項目参照。''


=== マイクロインジェクション法 ===
=== マイクロインジェクション法 ===
 微小ガラスキャピラリーを用いて DNAやRNAを細胞に注入する方法。DNAやRNAを注入したマイクロ[[マニピュレータ]]を、顕微鏡下で操作して細胞に差し込み微量注入する。不均一な細胞集団でも特定の細胞を選別しながら、一つ一つ確実に注入することができ,発現効率も良いが、一度に多数の細胞に対しては行えず、また専用の機器と、ある程度の練習が必要である。
 微小ガラスキャピラリーを用いて DNAやRNAを細胞に注入する方法。DNAやRNAを注入したマイクロ[[マニピュレータ]]を、顕微鏡下で操作して細胞に差し込み微量注入する。不均一な細胞集団でも特定の細胞を選別しながら、一つ一つ確実に注入することができ,発現効率も良いが、一度に多数の細胞に対しては行えず、また専用の機器と、ある程度の練習が必要である。


=== 遺伝子銃(パーティクル・ガン)法 ===
=== 遺伝子銃法 ===
[[パーティクル・ガン法]]
 
 [[wj:タングステン|タングステン]]や[[wj:金|金]]などの金属微粒子にDNAをコーティングし、[[wj:ヘリウム|ヘリウム]]などの高圧ガスを用いて高速で細胞内にDNAを導入する方法<ref><pubmed> 1422046</pubmed></ref>。ガス圧や射出口と試料の距離を変えることで、金属微粒子の射出強度を調節することができ、培養細胞、[[スライス培養]]標本や動植物個体へ打ち込むことが可能である。簡便な方法であるが、機材が高価でランニングコストもかかるという欠点がある。
 [[wj:タングステン|タングステン]]や[[wj:金|金]]などの金属微粒子にDNAをコーティングし、[[wj:ヘリウム|ヘリウム]]などの高圧ガスを用いて高速で細胞内にDNAを導入する方法<ref><pubmed> 1422046</pubmed></ref>。ガス圧や射出口と試料の距離を変えることで、金属微粒子の射出強度を調節することができ、培養細胞、[[スライス培養]]標本や動植物個体へ打ち込むことが可能である。簡便な方法であるが、機材が高価でランニングコストもかかるという欠点がある。


=== 超音波遺伝子導入法===
=== 超音波遺伝子導入法===
ソノポレーション
[[ソノポレーション]]


 すでに臨床で使用されている直径 1 – 10μmの超音波造影剤(マイクロバブル)へ超音波を照射することでバブルの圧壊(キャビテーション)が誘導される。そのときに生じるジェット流が一過性に開ける細胞の小孔から、外来遺伝子を細胞内に導入する方法<ref>'''谷山 義、森下 竜'''<br>超音波を用いた核酸導入法の開発<br> Yakugaku zasshi : Journal of the Pharmaceutical Society of Japan: 126:1039-45:2006.</ref>。標的部位を正確に制御することが可能で、[[電気穿孔法]]よりも組織へのダメージが少ない。まだ完全に確立された手法はなく、試行錯誤が必要である。
 すでに臨床で使用されている直径 1 – 10μmの超音波造影剤(マイクロバブル)へ超音波を照射することでバブルの圧壊(キャビテーション)が誘導される。そのときに生じるジェット流が一過性に開ける細胞の小孔から、外来遺伝子を細胞内に導入する方法<ref>'''谷山 義、森下 竜'''<br>超音波を用いた核酸導入法の開発<br> Yakugaku zasshi : Journal of the Pharmaceutical Society of Japan: 126:1039-45:2006.</ref>。標的部位を正確に制御することが可能で、[[電気穿孔法]]よりも組織へのダメージが少ない。まだ完全に確立された手法はなく、試行錯誤が必要である。


=== ウイルスベクター ===
=== ウイルスベクター ===
 細胞に吸着して自らのゲノムを細胞内に送り込むウイルスの性質を利用した遺伝子導入法。複製に関与する遺伝子領域および、カプシドなどの構造タンパク質のコード領域はもたず、代わりに目的とする外来遺伝子が組み込まれている。細胞に吸着して外来遺伝子を細胞内に送り込むが、ウイルス粒子の複製・増殖能はない。[[アデノウイルス]]、[[レトロウイルス]]、[[レンチウイルス]]、[[狂犬病ウイルス]]、[[センダイウイルス]]、[[アデノ随伴ウイルス]]など様々なウイルス由来のベクターが開発されている。
 細胞に吸着して自らのゲノムを細胞内に送り込むウイルスの性質を利用した遺伝子導入法。複製に関与する遺伝子領域および、カプシドなどの構造タンパク質のコード領域はもたず、代わりに目的とする外来遺伝子が組み込まれている。細胞に吸着して外来遺伝子を細胞内に送り込むが、ウイルス粒子の複製・増殖能はない。[[アデノウイルスベクター|アデノウイルス]]、[[レトロウイルスベクター|レトロウイルス]]、[[レンチウイルスベクター|レンチウイルス]]、[[狂犬病ウイルスベクター|狂犬病ウイルス]]、[[センダイウイルスベクター|センダイウイルス]]、[[アデノ随伴ウイルスベクター|アデノ随伴ウイルス]]など様々なウイルス由来のベクターが開発されている。
 
''詳細は[[ウイルスベクター]]の項目参照。''


== 関連項目 ==
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