「Discs, large homolog-associated protein」の版間の差分

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== 名称  ==
== 名称  ==


 GKAPという名称はguanylate kinase-associated proteinに由来する<ref>Kim E, Naisbitt S, Hsueh YP, Rao A, Rothschild A, Craig AM, Sheng M.GKAP, a novel synaptic protein that interacts with the guanylate kinase-like domain of the PSD-95/SAP90 family of channel clustering molecules. J Cell Biol. 1997 Feb 10;136:669-78.</ref>。興奮性シナプスの裏打ち蛋白質[[Postsynaptic density (PSD)-95]]の[[グアニル酸キナーゼ]]領域に結合する蛋白質として[[wikipedia:JA:ラット|ラット]]とヒトの蛋白質が最初に報告された。PSD-95は別名でsynapse-associated protein (SAP)90ともよばれるが、GKAPの報告とほぼ同時期に、SAP90に結合する蛋白質として、4種類のラットSAP-associated protein (SAPAP)アイソフォームがSAPAP1、-2、-3、-4として報告された(文献2)。ラットGKAPは666アミノ酸からなり、992アミノ酸からなるラットSAPAP1のN末端を欠損するalternative splicing variantにあたる。PSD-95のアイソフォームのひとつ[[Dlg1]](SAP97とも呼ばれ、神経細胞以外にも発現し、[[wikipedia:JA:細胞極性|細胞極性]]に関係する)に結合する蛋白質として、やはりほぼ同時期に報告されたDLG-associated protein(DAP)-1はヒトのSAPAP1に相当する(文献3)。SAPAP1はGKAP/SAPAP1/DAP-1と、それ以外のアイソフォームは、SAPAP2、-3、-4と表記されることが多い。なおcGMP-dependent protein kinase-anchoring proteinとglucokinase-associated phosphataseもGKAPと表記されるので、注意が必要である。Hugo Gene Nomenclature Committeeによるオフィシャルネームでは、ヒトの遺伝子は、DLGAP1、-2、-3、-4と表記され、SAPAP1、-2、-3、-4に対応している。それぞれの遺伝子は、18番、8番、1番、20番染色体上にある。DLGAP1には8個のvariantsが登録されている。以下、本稿においては、DLGAPとして表記する。  
 GKAPという名称はguanylate kinase-associated proteinに由来する<ref>Kim E, Naisbitt S, Hsueh YP, Rao A, Rothschild A, Craig AM, Sheng M.GKAP, a novel synaptic protein that interacts with the guanylate kinase-like domain of the PSD-95/SAP90 family of channel clustering molecules. J Cell Biol. 1997 Feb 10;136:669-78.</ref>。興奮性シナプスの裏打ち蛋白質[[Postsynaptic density (PSD)-95]]の[[グアニル酸キナーゼ]]領域に結合する蛋白質として[[wikipedia:JA:ラット|ラット]]とヒトの蛋白質が最初に報告された。PSD-95は別名でsynapse-associated protein (SAP)90ともよばれるが、GKAPの報告とほぼ同時期に、SAP90に結合する蛋白質として、4種類のラットSAP-associated protein (SAPAP)アイソフォームがSAPAP1、-2、-3、-4として報告された<ref>Takeuchi M, Hata Y, Hirao K, Toyoda A, Irie M, Takai Y.SAPAPs. A family of PSD-95/SAP90-associated proteins localized at postsynaptic density. J Biol Chem. 1997 May 2;272:11943-51.</ref>。ラットGKAPは666アミノ酸からなり、992アミノ酸からなるラットSAPAP1のN末端を欠損するalternative splicing variantにあたる。PSD-95のアイソフォームのひとつ[[Dlg1]](SAP97とも呼ばれ、神経細胞以外にも発現し、[[wikipedia:JA:細胞極性|細胞極性]]に関係する)に結合する蛋白質として、やはりほぼ同時期に報告されたDLG-associated protein(DAP)-1はヒトのSAPAP1に相当する<ref>Satoh K, Yanai H, Senda T, Kohu K, Nakamura T, Okumura N, Matsumine A, Kobayashi S, Toyoshima K, Akiyama T.DAP-1, a novel protein that interacts with the guanylate kinase-like domains of hDLG and PSD-95. Genes Cells. 1997 Jun;2:415-24.</ref>。SAPAP1はGKAP/SAPAP1/DAP-1と、それ以外のアイソフォームは、SAPAP2、-3、-4と表記されることが多い。なおcGMP-dependent protein kinase-anchoring proteinとglucokinase-associated phosphataseもGKAPと表記されるので、注意が必要である。Hugo Gene Nomenclature Committeeによるオフィシャルネームでは、ヒトの遺伝子は、DLGAP1、-2、-3、-4と表記され、SAPAP1、-2、-3、-4に対応している。それぞれの遺伝子は、18番、8番、1番、20番染色体上にある。DLGAP1には8個のvariantsが登録されている。以下、本稿においては、DLGAPとして表記する。  


== 構造と相互作用分子  ==
== 構造と相互作用分子  ==


 4つのアイソフォームはアミノ酸レベルで40-50%の相同性があり、いずれも、中央部に14アミノ酸からなる5回の繰り返し配列を持ち、その部位でPSD-95、[[MAGI2]]/S-SCAMのguanylate kinase領域に結合する。繰り返し配列よりN末端側には特徴的配列がないが、[[ニューロフィラメント]] (neurofilament)などの[[中間系フィラメント]]に結合する(文献4)。繰り返し配列のC末端側のプロリンリッチ配列を介して、[[チロシンキナーゼ]]Abl/Arg結合蛋白質である[[NArgBP2]]の[[SH3]]領域に結合する(文献5)。さらにそれよりもC末端側で[[ダイニン軽鎖]] (dynein light chain) [[LC1]]、[[LC8]]に結合するが、その部分には特徴的配列を欠く(文献6,7)。C末端に[[PDZ]]結合モチーフをもち、Shankの[[PDZ領域]]に結合する(文献8,9)。その他、[[神経型一酸化窒素合成酵素]](nNOS)とも結合する(文献7)。DLGAP3は、[[FAK]]、[[PYK2]]と相互作用すると報告されている(文献10)。[[カルシウム/カルモジュリン依存性蛋白質キナーゼII]](CaMKII)、p38 [[MAPK]]により[[リン酸化]]されることも報告されている(文献11,12)。相互作用分子の研究には、DLGAP1のラット、マウスホモログが用いられていることが多いが、アミノ酸配列の相同性に照らすと、報告されている相互作用の多くは、種とアイソフォームを超えて保存されていると推測される。
 4つのアイソフォームはアミノ酸レベルで40-50%の相同性があり、いずれも、中央部に14アミノ酸からなる5回の繰り返し配列を持ち、その部位でPSD-95、[[MAGI2]]/S-SCAMのguanylate kinase領域に結合する。繰り返し配列よりN末端側には特徴的配列がないが、[[ニューロフィラメント]] (neurofilament)などの[[中間系フィラメント]]に結合する<ref>Hirao K, Hata Y, Deguchi M, Yao I, Ogura M, Rokukawa C, Kawabe H, Mizoguchi A, Takai Y. Association of synapse-associated protein 90/ postsynaptic density-95-associated protein (SAPAP) with neurofilaments. Genes Cells. 2000 Mar;5:203-10.</ref>。繰り返し配列のC末端側のプロリンリッチ配列を介して、[[チロシンキナーゼ]]Abl/Arg結合蛋白質である[[NArgBP2]]の[[SH3]]領域に結合する<ref>Kawabe H, Hata Y, Takeuchi M, Ide N, Mizoguchi A, Takai Y. nArgBP2, a novel neural member of ponsin/ArgBP2/vinexin family that interacts with synapse-associated protein 90/postsynaptic density-95-associated protein (SAPAP). J Biol Chem. 1999 Oct 22;274:30914-8.</ref>。さらにそれよりもC末端側で[[ダイニン軽鎖]] (dynein light chain) [[LC1]]、[[LC8]]に結合するが、その部分には特徴的配列を欠く<ref>Naisbitt S, Valtschanoff J, Allison DW, Sala C, Kim E, Craig AM, Weinberg RJ, Sheng M. Interaction of the postsynaptic density-95/guanylate kinase domain-associated protein complex with a light chain of myosin-V and dynein. J Neurosci. 2000 Jun 15;20:4524-34.</ref><ref>Haraguchi K, Satoh K, Yanai H, Hamada F, Kawabuchi M, Akiyama T. The hDLG-associated protein DAP interacts with dynein light chain and neuronal nitric oxide synthase. Genes Cells. 2000 Nov;11:905-911.</ref>。C末端に[[PDZ]]結合モチーフをもち、Shankの[[PDZ領域]]に結合する<ref>Naisbitt S, Kim E, Tu JC, Xiao B, Sala C, Valtschanoff J, Weinberg RJ, Worley PF, Sheng M. Shank, a novel family of postsynaptic density proteins that binds to the NMDA receptor/PSD-95/GKAP complex and cortactin. Neuron. 1999 Jul;23:569-82.</ref><ref>Boeckers TM, Winter C, Smalla KH, Kreutz MR, Bockmann J, Seidenbecher C, Garner CC, Gundelfinger ED.Proline-rich synapse-associated proteins ProSAP1 and ProSAP2 interact with synaptic proteins of the SAPAP/GKAP family. Biochem Biophys Res Commun. 1999 Oct 14;264:247-52.</ref>。その他、[[神経型一酸化窒素合成酵素]](nNOS)とも結合する<ref>Haraguchi K, Satoh K, Yanai H, Hamada F, Kawabuchi M, Akiyama T. The hDLG-associated protein DAP interacts with dynein light chain and neuronal nitric oxide synthase. Genes Cells. 2000 Nov;11:905-911.</ref>。DLGAP3は、[[FAK]]、[[PYK2]]と相互作用すると報告されている<ref>Bongiorno-Borbone L, Kadaré G, Benfenati F, Girault JA. FAK and PYK2 interact with SAP90/PSD-95-Associated Protein-3. Biochem Biophys Res Commun. 2005 Nov 18;337:641-6.</ref>。[[カルシウム/カルモジュリン依存性蛋白質キナーゼII]](CaMKII)、p38 [[MAPK]]により[[リン酸化]]されることも報告されている<ref>Dosemeci A, Jaffe H.  Regulation of phosphorylation at the postsynaptic density during different activity states of Ca2+/calmodulin-dependent protein kinase II. Biochem Biophys Res Commun. 2010 Jan 1;391:78-84.</ref><ref>Sabio G, Arthur JS, Kuma Y, Peggie M, Carr J, Murray-Tait V, Centeno F, Goedert M, Morrice NA, Cuenda A. p38gamma regulates the localisation of SAP97 in the cytoskeleton by modulating its interaction with GKAP. EMBO J. 2005 Mar 23;24:1134-45</ref>。相互作用分子の研究には、DLGAP1のラット、マウスホモログが用いられていることが多いが、アミノ酸配列の相同性に照らすと、報告されている相互作用の多くは、種とアイソフォームを超えて保存されていると推測される。


== 発現  ==
== 発現  ==


 神経細胞以外にもmRNAはあり、蛋白質も発現していると考えられるが、神経細胞における発現が極めて高い。脳内での各種アイソフォームの発現については、mRNAレベルでは4つのアイソフォームについて、蛋白質レベルではDLGAP2以外の3つのアイソフォームについて、ラット、マウス脳を用いた解析結果が報告されている(文献13,14)。ちなみに、「異なるアイソフォームの分布は、オーバーラップしているが、それぞれに特異的である」と表現される。例えば、小脳を例にとると、[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/70528599 DLGAP1]は[[顆粒細胞]]、[[プルキンエ細胞]]の両方に等しく、[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/69626909 DLGAP2]は小脳になく、[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/70528605 DLGAP3]は顆粒細胞に強く、[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/68499267 DLGAP4]はプルキンエ細胞に強く発現する。海馬では、DLGAP1は[[CA1]]、[[CA3]]の[[錐体細胞]]と[[歯状回]]の顆粒細胞に発現するが、DLGAP4は歯状回の顆粒細胞にはない。DLGAP3は[[線条体]]に強く発現している。DLGAP3ノックアウトマウスの表現型が、線条体局所へのDLGAP3の強制発現により回復する観察から、DLGAP3は線条体において、他のアイソフォームによっては代償されない機能を果たしていると推論される(文献15)。さらに、DLGAP3のmRNAは、神経細胞の[[細胞体]]でなく[[樹状突起]]に分布する点でも注目されている。  
 神経細胞以外にもmRNAはあり、蛋白質も発現していると考えられるが、神経細胞における発現が極めて高い。脳内での各種アイソフォームの発現については、mRNAレベルでは4つのアイソフォームについて、蛋白質レベルではDLGAP2以外の3つのアイソフォームについて、ラット、マウス脳を用いた解析結果が報告されている<ref>Kindler S, Rehbein M, Classen B, Richter D, Böckers TM. Distinct spatiotemporal expression of SAPAP transcripts in the developing rat brain: a novel dendritically localized mRNA. Brain Res Mol Brain Res. 2004 Jul 5;126:14-21.</ref><ref>Welch JM, Wang D, Feng G. Differential mRNA expression and protein localization of the SAP90/PSD-95-associated proteins (SAPAPs) in the nervous system of the mouse. J Comp Neurol. 2004 Apr 19;472:24-39.</ref>。ちなみに、「異なるアイソフォームの分布は、オーバーラップしているが、それぞれに特異的である」と表現される。例えば、小脳を例にとると、[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/70528599 DLGAP1]は[[顆粒細胞]]、[[プルキンエ細胞]]の両方に等しく、[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/69626909 DLGAP2]は小脳になく、[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/70528605 DLGAP3]は顆粒細胞に強く、[http://mouse.brain-map.org/experiment/show/68499267 DLGAP4]はプルキンエ細胞に強く発現する。海馬では、DLGAP1は[[CA1]]、[[CA3]]の[[錐体細胞]]と[[歯状回]]の顆粒細胞に発現するが、DLGAP4は歯状回の顆粒細胞にはない。DLGAP3は[[線条体]]に強く発現している。DLGAP3ノックアウトマウスの表現型が、線条体局所へのDLGAP3の強制発現により回復する観察から、DLGAP3は線条体において、他のアイソフォームによっては代償されない機能を果たしていると推論される<ref>Welch JM, Lu J, Rodriguiz RM, Trotta NC, Peca J, Ding JD, Feliciano C, Chen M, Adams JP, Luo J, Dudek SM, Weinberg RJ, Calakos N, Wetsel WC, Feng G. Cortico-striatal synaptic defects and OCD-like behaviours in Sapap3-mutant mice. Nature. 2007 Aug 23;448:894-900.</ref>。さらに、DLGAP3のmRNAは、神経細胞の[[細胞体]]でなく[[樹状突起]]に分布する点でも注目されている。  


== 機能、性状  ==
== 機能、性状  ==


[[Image:PSD proteins.jpg|thumb|right|295px|<b>PSD蛋白質</b>&lt;span class=]]&lt;pubmed&gt; 17243894 &lt;/pubmed&gt;" class="fck_mw_frame fck_mw_right" /&gt;  DLGAPは[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の裏打ち蛋白質PSD-95に結合する分子として同定され、Shankにも結合するため、興奮性シナプスの[[足場蛋白質]]と見なされている。上述のように、多くの相互作用分子が同定されているものの、個々の相互作用の生理的意義は必ずしも明快に示されているとはいえない。ダイニン軽鎖との結合からは、PSD-95を含む複合体の輸送を担う機能が措定されている。DLGAP3ノックアウトマウスでは、DLGAP3が本来、強く発現する線条体の神経細胞において、[[代謝型グルタミン酸受容体]]5型(mGluR5)が細胞膜表面に留まり、そのシグナル活性が上昇し、その結果として[[AMPA型グルタミン酸受容体]]のシグナルの抑制、[[エンドカンナビノイド]] (endocannabinoid)による異常なシナプス抑制が観察される(文献16,17)。この知見をもとに、DLGAP3にはmGluR5の[[エンドサイトーシス]]を制御する機能があると推論されている。[[グリア細胞]]では、Dlg1を[[ダイニン]]につなぐ作用を通じて、[[wikipedia:ja:中心体|中心体]]の細胞内の位置決めに関与すると報告されている(文献18)。なお、いずれのSAPAPも[[wikipedia:JA:界面活性剤|界面活性剤]]に不溶性であるが、その不溶性はN末端に依存し、N末端を欠くGKAP (DLGAP1 variant2)は比較的可溶化されやすい。神経細胞に発現させた場合のSAPAP1 (DLGAP1 variant1)とGKAPの挙動にも、差異があると予測される。したがって、それぞれの研究で、GKAPが論じられているのか、SAPAP1が論じられているのかについて、注意を払う必要がある。  
[[Image:PSD proteins.jpg|thumb|right|295px|<b>PSD蛋白質</b>&lt;span class=]]&lt;pubmed&gt; 17243894 &lt;/pubmed&gt;" class="fck_mw_frame fck_mw_right" /&gt;  DLGAPは[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の裏打ち蛋白質PSD-95に結合する分子として同定され、Shankにも結合するため、興奮性シナプスの[[足場蛋白質]]と見なされている。上述のように、多くの相互作用分子が同定されているものの、個々の相互作用の生理的意義は必ずしも明快に示されているとはいえない。ダイニン軽鎖との結合からは、PSD-95を含む複合体の輸送を担う機能が措定されている。DLGAP3ノックアウトマウスでは、DLGAP3が本来、強く発現する線条体の神経細胞において、[[代謝型グルタミン酸受容体]]5型(mGluR5)が細胞膜表面に留まり、そのシグナル活性が上昇し、その結果として[[AMPA型グルタミン酸受容体]]のシグナルの抑制、[[エンドカンナビノイド]] (endocannabinoid)による異常なシナプス抑制が観察される<ref>Chen M, Wan Y, Ade K, Ting J, Feng G, Calakos N. Sapap3 deletion anomalously activates short-term endocannabinoid-mediated synaptic plasticity. J Neurosci. 2011 Jun 29;31:9563-73.</ref><ref>Wan Y, Feng G, Calakos N. Sapap3 deletion causes mGluR5-dependent silencing of AMPAR synapses. J Neurosci. 2011 Nov 16;31:16685-91.</ref>。この知見をもとに、DLGAP3にはmGluR5の[[エンドサイトーシス]]を制御する機能があると推論されている。[[グリア細胞]]では、Dlg1を[[ダイニン]]につなぐ作用を通じて、[[wikipedia:ja:中心体|中心体]]の細胞内の位置決めに関与すると報告されている<ref>Manneville JB, Jehanno M, Etienne-Manneville S. Dlg1 binds GKAP to control dynein association with microtubules, centrosome positioning, and cell polarity. J Cell Biol. 2010 Nov 1;191:585-98.</ref>。なお、いずれのSAPAPも[[wikipedia:JA:界面活性剤|界面活性剤]]に不溶性であるが、その不溶性はN末端に依存し、N末端を欠くGKAP (DLGAP1 variant2)は比較的可溶化されやすい。神経細胞に発現させた場合のSAPAP1 (DLGAP1 variant1)とGKAPの挙動にも、差異があると予測される。したがって、それぞれの研究で、GKAPが論じられているのか、SAPAP1が論じられているのかについて、注意を払う必要がある。  


== ヒト疾病との関係  ==
== ヒト疾病との関係  ==


 DLGAP3ノックアウトマウスは、ヒトにおける[[強迫性障害]] (obsessive-compulsive disorder(OCD))を連想させる行動異常を示す(文献15)。この観察から、DLGAP3遺伝子は、ヒトのOCD、及び、OCDに関連するgrooming disorderや[[トゥーレット症候群]] (Tourette syndrome)の原因遺伝子であるという仮説が立てられ解析がなされている。しかし、現時点では、機能的な候補遺伝子の一つという評価に止まり、決定的な連関は示されていない(文献19,20)。このほか、[[統合失調症]]患者において、DLGAP1の発現が高まっているという報告もある(文献21)。
 DLGAP3ノックアウトマウスは、ヒトにおける[[強迫性障害]] (obsessive-compulsive disorder(OCD))を連想させる行動異常を示す<ref>Welch JM, Lu J, Rodriguiz RM, Trotta NC, Peca J, Ding JD, Feliciano C, Chen M, Adams JP, Luo J, Dudek SM, Weinberg RJ, Calakos N, Wetsel WC, Feng G. Cortico-striatal synaptic defects and OCD-like behaviours in Sapap3-mutant mice. Nature. 2007 Aug 23;448:894-900.</ref>。この観察から、DLGAP3遺伝子は、ヒトのOCD、及び、OCDに関連するgrooming disorderや[[トゥーレット症候群]] (Tourette syndrome)の原因遺伝子であるという仮説が立てられ解析がなされている。しかし、現時点では、機能的な候補遺伝子の一つという評価に止まり、決定的な連関は示されていない<ref>Bienvenu OJ, Wang Y, Shugart YY, Welch JM, Grados MA, Fyer AJ, Rauch SL, McCracken JT, Rasmussen SA, Murphy DL, Cullen B, Valle D, Hoehn-Saric R, Greenberg BD, Pinto A, Knowles JA, Piacentini J, Pauls DL, Liang KY, Willour VL, Riddle M, Samuels JF, Feng G, Nestadt G. Sapap3 and pathological grooming in humans: Results from the OCD collaborative genetics study. Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 2009 Jul 5;150B:710-20.</ref><ref>Crane J, Fagerness J, Osiecki L, Gunnell B, Stewart SE, Pauls DL, Scharf JM; Tourette Syndrome International Consortium for Genetics (TSAICG). Family-based genetic association study of DLGAP3 in Tourette Syndrome. Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 2011 Jan;156B:108-14.</ref>(文献19,20)。このほか、[[統合失調症]]患者において、DLGAP1の発現が高まっているという報告もある<ref>Aoyama S, Shirakawa O, Ono H, Hashimoto T, Kajimoto Y, Maeda K. Mutation and association analysis of the DAP-1 gene with schizophrenia. Psychiatry Clin Neurosci. 2003 Oct;57:545-7.</ref>。


== 関連項目  ==
== 関連項目  ==