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''' ==蛍光特性==<br>'''FM1-43 の励起には 1光子では波長 480 nm光、2光子では波長 840 nm 光が頻用される。<br>極大蛍光波長はリポゾーム中にて 580 nm である。<br>波長 480 nm光の高出力励起(~150 μW)にてジアミノベンゼン(DAB)の光変換(photoconversion) を起こす。そのため、アルデヒドで固定可能な色素:FM1-43FX と DAB を細胞に与え、光変換させると、共局在部位で電子密度の高い産物が作られ、電子顕微鏡観察が可能となる。FM1-43 を取り込んだ小胞が、高い電子密度で描出され、微細構造解析に利用されている。 <br>
''' ==蛍光特性==<br>'''FM1-43 の励起には 1光子では波長 480 nm光、2光子では波長 840 nm 光が頻用される。<br>極大蛍光波長はリポゾーム中にて 580 nm である。<br>波長 480 nm光の高出力励起(~150 μW)にてジアミノベンゼン(DAB)の光変換(photoconversion) を起こす。そのため、アルデヒドで固定可能な色素:FM1-43FX と DAB を細胞に与え、光変換させると、共局在部位で電子密度の高い産物が作られ、電子顕微鏡観察が可能となる。FM1-43 を取り込んだ小胞が、高い電子密度で描出され、微細構造解析に利用されている。 <br>


'''<br>==応用例=='''<br>'''シナプス前機能の解析シナプス前終末における小胞プールの大きさと開口放出量の測定'''<br>細胞外を FM1-43 で還流中に、短い放出刺激を与え(例 20 Hz、30 発)、開口放出した小胞の膜を染める。 <br><br>[[Image:Takahashinoriko fig 3.jpg|thumb|center|400px|図3]]<br>小胞は 30-60秒で細胞内部にエンドサイトーシスで取り込まれる。その後、細胞外を、色素を含まない溶液で還流し、細胞外膜に結合した色素をwash out する。このような loading 過程を経て示される蛍光量は、30回の刺激時に開口放出した小胞にあたり Readily releasable pool (RRP)のサイズの指標となる。カエル NMJの場合、RRP の小胞数は神経終末内小胞の約 15%(12-17%)と報告された<ref><pubmed> 15044806 </pubmed></ref>。<br>
'''<br>==応用例=='''<br>'''シナプス前機能の解析シナプス前終末における小胞プールの大きさと開口放出量の測定'''<br>細胞外を FM1-43 で還流中に、短い放出刺激を与え(例 20 Hz、30 発)、開口放出した小胞の膜を染める。 <br><br>[[Image:Takahashinoriko fig 3.jpg|thumb|center|600px|図3]]<br>小胞は 30-60秒で細胞内部にエンドサイトーシスで取り込まれる。その後、細胞外を、色素を含まない溶液で還流し、細胞外膜に結合した色素をwash out する。このような loading 過程を経て示される蛍光量は、30回の刺激時に開口放出した小胞にあたり Readily releasable pool (RRP)のサイズの指標となる。カエル NMJの場合、RRP の小胞数は神経終末内小胞の約 15%(12-17%)と報告された<ref><pubmed> 15044806 </pubmed></ref>。<br>


<br>次に、細胞外色素フリーの状態で放出刺激を与えると、前段階で染められた小胞は細胞膜と融合し、細胞外液への拡散により神経終末の蛍光は減弱する(destaining)。この減弱の程度や時間経過から、開口放出の量と速度が評価できる。蛍光減弱の時間経過は single exponential に近似されることから、Release probability(Pr) は蛍光減弱の時定数に反比例すると考えられる。Prの計算法として、(Recycling pool の小胞数×0.63)/ (37%に蛍光減弱するまでに与えた電気パルス数)で示す方法<ref><pubmed> 18701072 </pubmed></ref> が提起された。より簡易的には、FM1-43 の蛍光半減期の逆数<ref><pubmed> 11426227 </pubmed></ref>で示されるケースもある。<br>
<br>次に、細胞外色素フリーの状態で放出刺激を与えると、前段階で染められた小胞は細胞膜と融合し、細胞外液への拡散により神経終末の蛍光は減弱する(destaining)。この減弱の程度や時間経過から、開口放出の量と速度が評価できる。蛍光減弱の時間経過は single exponential に近似されることから、Release probability(Pr) は蛍光減弱の時定数に反比例すると考えられる。Prの計算法として、(Recycling pool の小胞数×0.63)/ (37%に蛍光減弱するまでに与えた電気パルス数)で示す方法<ref><pubmed> 18701072 </pubmed></ref> が提起された。より簡易的には、FM1-43 の蛍光半減期の逆数<ref><pubmed> 11426227 </pubmed></ref>で示されるケースもある。<br>
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