「Gタンパク質共役型受容体」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/7000004108 足立 直子]、[http://researchmap.jp/read0014761 齋藤 尚亮]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/7000004108 足立 直子]、[http://researchmap.jp/read0014761 齋藤 尚亮]</font><br>
''神戸大学バイオシグナル研究センター''<br>
''神戸大学バイオシグナル研究センター''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年1月19日 原稿完成日:2016年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年1月19日 原稿完成日:2016年2月7日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/haruokasai 河西 春郎](東京大学 大学院医学系研究科)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/haruokasai 河西 春郎](東京大学 大学院医学系研究科)<br>
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類義語:代謝活性型受容体 (metabotropic receptor)、 代謝型受容体、代謝調節型受容体
類義語:代謝活性型受容体 (metabotropic receptor)、 代謝型受容体、代謝調節型受容体


{{box|text= 代謝活性型受容体とは真核細胞の細胞質膜上もしくは、細胞内部の構成膜上に存在する受容体の一種。神経伝達物質と結合し細胞内に情報伝達を引き起こす受容体には、大きく分けてイオンを直接透過させるイオンチャネル型受容体と代謝活性型受容体の二つがある。ここでは代謝活性型受容体のうち三量体Gタンパク質と共役し細胞内に情報を伝達するGタンパク質共役型受容体(Gタンパク質共役型受容体)に焦点を絞り説明する。<u>(編集部コメント:Gタンパク質共役型受容体に項目名を変えましたので、それに絞った抄録を御記述頂けないでしょうか。1段落程度でお願いいたします。)</u> }}
{{box|text= Gタンパク質共役型受容体とは真核細胞の細胞質膜上もしくは、細胞内部の構成膜上に存在する受容体の一種。Gタンパク質共役型受容体は別名7回膜貫通型受容体と言われるように、7つのαへリックス構造が細胞質膜を貫通し、N末端は細胞外にC末端領域は細胞内に位置する。細胞外からの様々なシグナル([[神経伝達物質]]、[[ホルモン]]、化学物質、光等)を受容すると、Gタンパク質共役型受容体は構造変化を起こし、細胞質側に結合している[[三量体Gタンパク質]]に対して[[グアニンヌクレオチド交換因子]](GEF)として働く。GDP型からGTP型へと変換されたGタンパク質は、つづいて[[効果器]]の活性を変化させることで、細胞外シグナルが細胞内へと伝達される。現在使用されている薬剤のおよそ40%がGタンパク質共役型受容体を標的としており、Gタンパク質共役型受容体の機構解明に大きく貢献した[[wj:ブライアン・コビルカ|Brian K. Kobilka]]と[[wj:ロバート・レフコウィッツ|Robert J. Lefkowitz]]が2012年に[[wj:ノーベル化学賞|ノーベル化学賞]]を共同受賞した<ref><pubmed> 23412332 </pubmed></ref>}}


[[ファイル:naokoadachi_Fig_1.jpg|400px|thumb|right|'''図.Gタンパク質共役型受容体の構造と翻訳後修飾(クラスA)''']]
[[ファイル:naokoadachi_Fig_1.jpg|400px|thumb|right|'''図.Gタンパク質共役型受容体の構造と翻訳後修飾(クラスA)''']]
==Gタンパク質共役型受容体とは==
 Gタンパク質共役型受容体は別名7回膜貫通型受容体と言われるように、7つのαへリックス構造が細胞質膜を貫通し、N末端は細胞外にC末端領域は細胞内に位置する。細胞外からの様々なシグナル([[神経伝達物質]]、[[ホルモン]]、化学物質、光等)を受容すると、Gタンパク質共役型受容体は構造変化を起こし、細胞質側に結合している[[三量体Gタンパク質]]に対して[[グアニンヌクレオチド交換因子]](GEF)として働く。
 GDP型からGTP型へと変換されたGタンパク質は、つづいて[[効果器]]の活性を変化させることで、細胞外シグナルが細胞内へと伝達される。現在使用されている薬剤のおよそ40%がGタンパク質共役型受容体を標的としており、Gタンパク質共役型受容体の機構解明に大きく貢献した[[wj:ブライアン・コビルカ|Brian K. Kobilka]]と[[wj:ロバート・レフコウィッツ|Robert J. Lefkowitz]]が2012年に[[wj:ノーベル化学賞|ノーベル化学賞]]を共同受賞した<ref><pubmed> 23412332 </pubmed></ref>。


== 分類 ==
== 分類 ==
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=== パルミトイル化 ===
=== パルミトイル化 ===
 多くのGタンパク質共役型受容体では7番目の膜貫通領域直近のC末端側領域に存在する保存されたシステイン残基が[[S-パルミトイル化]]修飾を受ける。[[パルミトイル化|S-パルミトイル化]]修飾とは[[wj:飽和脂肪酸|飽和脂肪酸]]である[[wj:パルミチン酸|パルミチン酸]]( C<sub>16</sub>H<sub>32</sub>O<sub>2</sub>)がシステイン残基の[[wj:チオール基|チオール基]]に[[wj:チオエステル結合|チオエステル結合]]で付加される可逆的な修飾であり、細胞質側に存在する[[DHHCタンパク質]]ファミリーを介する<ref><pubmed> 20168314 </pubmed></ref>。多くはC末端領域に1~3個のパルミトイル化修飾が見つかっておりパルミトイル化されたC末端領域は新たな細胞内ループを形成する。パルミトイル化修飾によるGタンパク質共役型受容体の機能調節は多岐に渡り、各受容体によって異なるが、受容体の成熟、[[細胞質膜]]へ発現や輸送、Gタンパク質との結合への影響、[[脱感作]]や[[インターナリゼーション]]に関与することが報告されている<ref><pubmed> 19131499 </pubmed></ref>。
 多くのGタンパク質共役型受容体では7番目の膜貫通領域直近のC末端側領域に存在する保存されたシステイン残基が[[パルミトイル化|S-パルミトイル化]]修飾を受ける。S-パルミトイル化修飾とは[[wj:飽和脂肪酸|飽和脂肪酸]]である[[wj:パルミチン酸|パルミチン酸]]( C<sub>16</sub>H<sub>32</sub>O<sub>2</sub>)がシステイン残基の[[wj:チオール基|チオール基]]に[[wj:チオエステル結合|チオエステル結合]]で付加される可逆的な修飾であり、細胞質側に存在する[[DHHCタンパク質]]ファミリーを介する<ref><pubmed> 20168314 </pubmed></ref>。多くはC末端領域に1~3個のパルミトイル化修飾が見つかっておりパルミトイル化されたC末端領域は新たな細胞内ループを形成する。パルミトイル化修飾によるGタンパク質共役型受容体の機能調節は多岐に渡り、各受容体によって異なるが、受容体の成熟、[[細胞質膜]]へ発現や輸送、Gタンパク質との結合への影響、[[脱感作]]や[[インターナリゼーション]]に関与することが報告されている<ref><pubmed> 19131499 </pubmed></ref>。


=== リン酸化 ===
=== リン酸化 ===
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{| class="wikitable"
{| class="wikitable"
|+表. G<sub>α</sub>タンパク質の例
|+表. G<sub>α</sub>タンパク質の例
!ファミリー!!名称!!効果器!!共役する受容体の例
|-
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|rowspan=2|'''G<sub>s</sub> ファミリー'''<br>
|rowspan=2|'''G<sub>s</sub> ファミリー'''<br>
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|'''G<sub>q/11</sub> ファミリー'''||G<sub>αq/11</sub>|| [[ホスホリパーゼC]]を活性化し[[ジアシルグリセロール]]の産生と[[IP3|IP<sub>3</sub>]]を介したCa<sup>2+</sup>の上昇を引き起こす。||[[α1アドレナリン受容体|α<sub>1</sub>アドレナリン受容体]]、[[ヒスタミンH1受容体|ヒスタミンH<sub>1</sub>受容体]]
|'''G<sub>q/11</sub> ファミリー'''||G<sub>αq/11</sub>|| [[ホスホリパーゼC]]を活性化し[[ジアシルグリセロール]]の産生と[[IP3|IP<sub>3</sub>]]を介したCa<sup>2+</sup>の上昇を引き起こす。||[[α1アドレナリン受容体|α<sub>1</sub>アドレナリン受容体]]、[[ヒスタミンH1受容体|ヒスタミンH<sub>1</sub>受容体]]
|-
|-
|'''G<sub>12/13</sub> ファミリー'''||G<sub>α12/13</sub>||colspan=2|[[細胞骨格]]、[[細胞間結合]]などに関与する。<br />
|'''G<sub>12/13</sub> ファミリー'''||G<sub>α12/13</sub>||[[細胞骨格]]、[[細胞間結合]]などに関与する。||
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|}
|}


==== G<sub>βγ</sub>シグナリング ====
==== G<sub>βγ</sub>シグナリング ====
 G<sub>βγ</sub>と結合したG<sub>α</sub>は[[GDP]]との親和性が上がることから、G<sub>βγ</sub>の第一の機能はG<sub>αβγ</sub>三量体を不活性状態に保つことだと考えられる。一方で、G<sub>αi/o</sub>と共役するGタンパク質共役型受容体ではG<sub>βγ</sub>のシグナル伝達が重要となる。G<sub>i/o</sub>はG<sub>s</sub>やG<sub>q</sub>と比較して細胞内に高濃度で存在するため、G<sub>αi/o</sub>共役型Gタンパク質共役型受容体が活性化すると放出されるG<sub>βγ</sub>の量は多くなる。G<sub>βγ</sub>はG<sub>αi/o</sub>共役型Gタンパク質共役型受容体の下流で[[Gタンパク質活性化カリウム]]([[GIRK]])チャネルや[[P/Q型]]と[[N型]]の[[電位依存性カルシウムチャネル]]、さらには[[ホスホリパーゼC]]、[[PI3キナーゼ|PI<sub>3</sub>キナーゼ]]などを活性化することが知られている。
 G<sub>βγ</sub>と結合したG<sub>α</sub>は[[GDP]]との親和性が上がることから、G<sub>βγ</sub>の第一の機能はG<sub>αβγ</sub>三量体を不活性状態に保つことだと考えられる。一方で、G<sub>αi/o</sub>と共役するGタンパク質共役型受容体ではG<sub>βγ</sub>のシグナル伝達が重要となる。G<sub>i/o</sub>はG<sub>s</sub>やG<sub>q</sub>と比較して細胞内に高濃度で存在するため、G<sub>αi/o</sub>共役型Gタンパク質共役型受容体が活性化すると放出されるG<sub>βγ</sub>の量は多くなる。G<sub>βγ</sub>はG<sub>αi/o</sub>共役型Gタンパク質共役型受容体の下流で[[Gタンパク質活性化カリウムチャネル]]([[GIRK|GIRKチャネル]])や[[P/Q型電位依存性カルシウムチャネル|P/Q型]]と[[N型電位依存性カルシウムチャネル]]、さらには[[ホスホリパーゼC]]、[[PI3キナーゼ|PI<sub>3</sub>キナーゼ]]などを活性化することが知られている。


=== Gタンパク質非依存的シグナリング ===
=== Gタンパク質非依存的シグナリング ===
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#エンドサイト―シスにより細胞外リガンドのアクセスを阻害する。
#エンドサイト―シスにより細胞外リガンドのアクセスを阻害する。


 一般的にはこの状態を[[脱感作]]というが、細胞内小胞に乗った受容体はβアレスチンを介してGタンパク質非依存的に下流にシグナルを伝達する。例えば、β<sub>2</sub>アドレナリン受容体、[[アンジオテンシン1a受容体]]、[[P2Y2受容体|P<sub>2</sub>Y<sub>2</sub>受容体]]、[[CB1受容体|CB<sub>1</sub>受容体]]ではβアレスチンを介して[[ERK1]]/[[ERK2|2]](Extracellullar signal-regulated kinase)の経路を活性化する<ref><pubmed> 26471844 </pubmed></ref>。
 一般的にはこの状態を[[脱感作]]というが、細胞内小胞に乗った受容体はβアレスチンを介してGタンパク質非依存的に下流にシグナルを伝達する。例えば、β<sub>2</sub>アドレナリン受容体、[[アンジオテンシン1a受容体]]、[[P2Y2受容体|P2Y<sub>2</sub>受容体]]、[[CB1受容体|CB<sub>1</sub>受容体]]ではβアレスチンを介して[[ERK1]]/[[ERK2|2]](Extracellullar signal-regulated kinase)の経路を活性化する<ref><pubmed> 26471844 </pubmed></ref>。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==

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