エンドサイトーシス

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吉田 知史、河野 洋幸高森 茂雄
同志社大学脳科学研究科・神経膜分子機能部門
DOI:10.14931/bsd.10998 原稿受付日:2025年4月11日 原稿完成日:2025年4月15日
担当編集委員:林 康紀(京都大学大学院医学研究科 システム神経薬理学分野)

英:endocytosis 独:Endozytose 仏:endocytose

 エンドサイトーシスとは、細胞が細胞外液やその中に含まれる可溶性分子や固体を細胞膜によって包み、小胞としてそれら物質を細胞内に取り込む過程である。この過程は酵母からヒトを含む様々な真核細胞に共通して見られ、栄養の取り込み、細胞間のシグナル伝達、病原体の排除などに関与している。神経細胞のエンドサイトーシスは、神経細胞の極性の維持、シナプス伝達、シナプス可塑性、代謝の維持、神経発生の制御などに関与している。また、グリア細胞の貪食機能はエンドサイトーシスによって制御されている。

エンドサイトーシスとは

種類

 エンドサイトーシスとは、細胞が細胞外液やその中に含まれる可溶性分子や固体を細胞膜によって包み、小胞としてそれら物質を細胞内に取り込む過程である。飲作用 (pinocytosis)と食作用 (phagocytosis)に大別される。

 いずれの場合も、エンドサイトーシスで作られた小胞には液胞型プロトンATPアーゼ (vacuolar-type H+ ATPase:V-ATPase)が備わっており、ATP加水分解によって生じるエネルギーを使ってプロトンを内腔へと輸送し、小胞内を酸性化させる(pHを下げる)ことが機能的に重要である。例えば、多くの細胞表面受容体は、リガンドホルモン成長因子など)と結合した状態で小胞と共にエンドサイトーシスされ、その後小胞内が酸性化すると、リガンドと受容体の結合が弱まり、リガンドが離れる。この機構により、受容体は再利用(再び形質膜へと運搬)され、リガンドはエンドソームーリソソーム系により分解される。また、シナプス前終末で補償性エンドサイトーシスによって再合成されたシナプス小胞では、V-ATPaseが作るプロトンの電気化学勾配によって小胞型神経伝達物質輸送体が駆動され、神経伝達物質が小胞内部に濃縮される。これにより、持続的なシナプス伝達が可能となる。

飲作用

 直径約150 ナノメートル以下の小さな小胞を利用して、細胞外の栄養成分や受容体などのタンパク質を細胞内に取り込む機構である。飲作用はさらに、クラスリン依存的エンドサイトーシス、クラスリン非依存的エンドサイトーシス、カベオリン依存的および非依存的エンドサイトーシスなどに分類される。また、飲作用の特殊な形式としてマクロピノサイトーシス (macropinocytosis)があり、これは直径数マイクロメートルの比較的大きな小胞 (マクロピノソーム)を形成することによって、細胞外溶液や分子を細胞内に取り込む。細胞外液中の物質を細胞内に取り込む機構としてのエンドサイトーシスの他に、開口放出(エキソサイトーシス)によって形質膜に挿入された小胞膜成分を回収する機構があり、これを補償性エンドサイトーシス(compensatory endocytosis)と呼ぶ。

食作用

 直径数~10マイクロメートルの食胞(ファゴソーム)と呼ばれる大きな小胞によって、病原体や死細胞などを細胞内に取り込み、その後、取り込んだ物を分解・除去する重要な機構である。

関与するタンパク質群

 エンドサイトーシスの開始から完了までには複数の段階があり、それぞれの過程に重要な働きをする多くのタンパク質が同定されている。エンドサイトーシスの様式によって異なるタンパク質が関与する場合と、多くのエンドサイトーシス様式に共通の機能を果たすタンパク質に分けられるが、その境界は必ずしも明確ではない。以下に、エンドサイトーシス様式別に関与するタンパク質とそれらの機能を概説する。

クラスリン依存的エンドサイトーシス

 クラスリン依存的エンドサイトーシスは、形質膜から小胞が出芽する際に、クラスリン被覆の形成が伴うもので、その開始点の形成および膜の変形 (nucleation)、積荷タンパク質(cargoタンパク質)の選別 (cargo selection)、クラスリン被覆小胞の形成 (clathrin assembly)、膜の切断 (scission)、クラスリン被覆の除去 (uncoating)といった段階を経て完了する。これらの段階には、Bin/Amphiphysin/Rvs (BAR)ドメインタンパク質、Epidermal Growth Factor Receptor Pathway Substrate 15 (EPS15)、Intersectin、アダプタータンパク質複合体 (AP complex)、Clathrin、Dynamin、Auxilin、synaptojanin、HSC70など、さまざまなタンパク質が関与している[1]

EPS15・インターセクチン

 EPS15およびインターセクチンは、いずれも足場タンパク質として知られている。これらは、エンドサイトーシスの起点となる場=endocytic hot spotに集積し、クラスリン被覆形成までに必要な他のエンドサイトーシス関連分子を局所に集める役割を果たしている。

BARドメインタンパク質

 BARドメインタンパク質は、3つのcoiled-coil構造からなるBARドメインを含むタンパク質である。ホモ二量体を形成し、全体として6本のcoiled-coil構造によってバナナ型の構造を呈する[2]。BARドメインは正負の電荷を対側に配した構造をもっており、正電荷が帯びた領域がリン脂質と相互作用することで、細胞膜の曲率を認識・生成する機能を持つ。これにより、エンドサイトーシスの過程で膜の陥入を促進すると言われている。クラスリン依存的エンドサイトーシスにおいては、F-BARタンパク質であるFCHo、N-BARタンパク質であるAmphiphysinやEndophilinが主に機能する[1]。これらのタンパク質は、C末端側にSH3ドメインやµHDドメイン等を有し、他のエンドサイトーシスタンパク質と相互作用することで、ダイナミンなど(後述)を集積する働きをもつ。

アダプタータンパク質複合体

 クラスリンは、脂質膜と直接結合しない。アダプタータンパク質複合体は、クラスリンと形質膜にある積荷分子の双方に結合する能力を有し、積荷分子をクラスリン被覆小胞へと導く役割(Cargo Sorting)を果たす。クラスリン依存的エンドサイトーシスにおいては、主にAP-1およびAP-2が機能を発揮する。特に、シナプス小胞のエンドサイトーシスにおいては、AP-2の関与が大きい[3]。アダプタータンパク質複合体の詳細については、脳科学辞典「アダプタータンパク質複合体」の項を参照されたい。

クラスリン

 クラスリンはトリスケリオン (triskelion)と呼ばれるクラスリン重鎖を基本単位として、かご状の構造を形成し、一定の大きさの被覆小胞を構築する。クラスリンによる被覆は、積荷分子の一つである液胞型プロトンポンプ(Vacuolar-type H+ ATPase)の働きを阻害することで、クラスリン被覆小胞の酸性化を一時的に抑制する役割を果たすことが提唱されている[4]

ダイナミン

 ダイナミンは、クラスリン被覆小胞が形質膜から切り離される際に必要なGTP加水分解酵素 (GTPase)であり、GTPの加水分解に伴って生じるエネルギーを用いて膜を切断する。シナプス小胞のエンドサイトーシス過程でダイナミンが重要な役割を果たすことはショウジョウバエのshibire(シビレ)遺伝子変異体を用いて初めて示された[5]。ダイナミン遺伝子欠損マウスを用いた研究では、シナプス小胞のリサイクリングが抑制されるが、ダイナミンがなくてもシナプス伝達は完全に阻害されるわけではない[6]。これらの結果より、シナプス小胞のエンドサイトーシスにおける膜切断は、ダイナミン依存的な機構と非依存的な機構があることを示唆している。

Auxilin・synaptojanin・HSC70

クラスリン被覆小胞が形質膜から切り離されると、クラスリン被覆は素早く除去される。クラスリン被覆と小胞の結合は、APタンパク質複合体のみならず、被覆小胞膜上のPI(4,5)P2の存在にも依存する。ホスファチジルイノシトール脱リン酸化酵素であるsynaptojaninによってPI(4,5)P2が加水分解されると、クラスリン被覆の除去(uncoating)が起きる。また、HSC70およびauxilinは、それぞれ分子シャペロンおよび補助シャペロンとして機能し、ATP依存的にクラスリン被覆を取り除く働きを担う。

クラスリン非依存的エンドサイトーシスに関与するタンパク質

 クラスリン非依存的エンドサイトーシスに関与するタンパク質は、クラスリン依存的エンドサイトーシスで働くタンパク質と一部異なっている。以下に、クラスリン非依存的エンドサイトーシスにおいて中心的な役割を果たすタンパク質群を挙げる。

Caveolin

「カベオラ」と呼ばれるフラスコ状の膜陥入構造を介して、クラスリン被覆を伴わないエンドサイトーシスが起こる。この過程には、膜内在タンパク質であるカベオリン (caveolin)が関与しており、カベオリンがオリゴマー化することによって細胞膜ドメインが形成され、そこでエンドサイトーシスが起こる。

アクチン・CDC42・フォルミン

 クラスリン非依存的エンドサイトーシスでは、細胞膜を裏打ちするアクチン (Actin)の重合が形質膜の陥入および小胞の形成を促進する。シナプス小胞のエンドサイトーシスにおいても、アクチン重合の重要性が指摘されている[7][8]。CDC42 (Cell Division Cycle 42)は、Rhoファミリーに属する低分子量GTP結合タンパク質 (Rho GTPase)であり、クラスリン非依存的エンドサイトーシスにおけるアクチン重合の重要な制御因子である。フォルミンはRho GTPaseのエフェクターとして機能する

AP-3

 クラスリン非依存的エンドサイトーシスで作られた小胞に含まれる積荷分子の選択を制御している。ヘルマンスキー・パドラック症候群(Hermansky-Pudlak syndrome)や、その病態モデルであるmochaマウスでは、AP-3のδサブユニットの欠失により、細胞内小胞輸送が障害される。特に中枢神経系では、シナプス小胞タンパク質のソーティング異常によるドーパミン放出の低下などに起因する神経機能障害が報告されている[9][10]

ダイナミン

ダイナミンは、クラスリン依存的エンドサイトーシスに加え、クラスリン非依存的エンドサイトーシスの過程においても、形質膜からできる小胞膜の切断に必要とされる[11]

 このように、エンドサイトーシスの進行・完結には、細胞質のタンパク質が各過程で集積・分散を繰り返す。この過程では、膜構造を介さずに可溶性タンパク質が集積する現象である液―液相分離(Liquid-liquid phase separation: LLPS)が関与していると考えられている[12][13][14]。また、シナプス終末においては、エンドサイトーシス関連タンパク質がシナプス小胞クラスター内にLLPSを介して集積しており、活動依存的に起こるシナプス小胞の補償性エンドサイトーシスの際に、クラスターから放出されている[15]

関与する脂質

 エンドサイトーシス過程においては、上記に挙げた細胞質タンパク質だけでなく、脂質の代謝、とりわけPI(4,5)P2の代謝によっても厳密に制御されている。特に、クラスリン依存的エンドサイトーシスにおけるPI(4,5)P2の役割はよく知られている。膜上に一過的に合成されたPI(4,5)P2はそれと高い親和性をもつ多くのBARドメインタンパク質の形質膜への集積を誘導し、そこでエンドサイトーシスを惹起する。形質膜で合成されたPI(4,5)P2は、その後クラスリン被覆小胞に移行し、ホスファチジルイノシトール脱リン酸化酵素 (SacIやsynaptojaninなど)によって分解されることで、クラスリンの脱被覆が生じ、エンドサイトーシスが完了する。特に神経細胞のシナプス前終末においては、PI(4,5)P2の生合成にはphosphatidylinositol phosphate kinase type Iγ (PIPKIγ)、分解にはsynaptojaninが主に関与している。これら遺伝子の欠損マウス由来の神経細胞では、シナプス小胞のエンドサイトーシスが顕著に遅延する[16][17]。これらの実験結果は、エンドサイトーシスには、細胞質タンパク質に加えて、シナプス局所での脂質代謝が重要な役割をはたしている。

シナプス前終末

 持続的なシナプス伝達には、シナプス小胞 (Synaptic Vesicle)がエクソサイトーシスにより神経伝達物質を放出した後に、すみやかに脂質膜およびシナプス小胞タンパク質がエンドサイトーシスによって回収される必要である。補償性エンドサイトーシスの一例である。エンドサイトーシスによってシナプス前終末に再合成されたシナプス小胞には、プロトン駆動型神経伝達物質輸送体 (vesicular neurotransmitter transporter)を介して再び神経伝達物質が充填され、次の伝達に備える。シナプス小胞のエンドサイトーシスには複数の経路が存在し、クラスリン依存的エンドサイトーシスのほか、活動依存的バルクエンドサイトーシス、超高速エンドサイトーシスといったクラスリン非依存的経路の存在も報告されている[18](図1)。これらの異なるエンドサイトーシスの様式は、刺激の強度や温度によって起こる確率が変動する。

クラスリン依存的エンドサイトーシス

 定常時の自発的放出あるいは比較的弱い刺激によって放出されたシナプス小胞は、クラスリン被覆を伴った小胞によって時定数15-20秒程度で回収される。詳細な分子機構については、上記および脳科学辞典「シナプス小胞」の項を参照されたい。Heuser & Reeseの先駆的な電子顕微鏡観察から、シナプス前終末におけるエンドサイトーシスは主にクラスリン依存的エンドサイトーシスによって行われると長年信じられてきたが、近年の研究からそれに疑義を唱えるモデルが提唱され、議論の的になっている(以下参照)。

活動依存的バルクエンドサイトーシス

 強い刺激によって放出されたシナプス小胞の膜成分は、1-2秒以内に直径約150 nmのエンドソーム様液胞 (endosome-like vacuoles: ELVs)として一括回収される。この過程はクラスリンに依存せず、Formin依存的なアクチン重合によって駆動される[8]。その後、AP-2、クラスリン、ダイナミンなどの働きで、ELVからシナプス小胞が再生される。

 かつては、このクラスリン非依存的なエンドサイトーシスにおいては、小胞膜タンパク質の回収と選別にAP-2が不要であると考えられていたが[3]、この様式においてもアダプタータンパク質が必要であることが示されている。この際の形質膜上での小胞タンパク質の選別は、積荷タンパク質の種類によって異なるアダプタータンパク質が必要であり、VGLUT1, VGAT, Synaptophysin, Synaptobrevin 2はAP-2依存的であり、Synaptotagmin 1やSV2はSGIPに依存する可能性が示唆されている[19][20]

超高速エンドサイトーシス

 刺激から50~100ミリ秒以内にシナプス小胞の回収が完了する超高速エンドサイトーシスの存在が、線虫の神経筋接合部やラットの海馬神経初代培養細胞で報告された[21][22]。このエンドサイトーシスはクラスリン非依存的であり、F-アクチンなどが駆動因子として関与する[22]。弱い刺激かつ生理学的温度下(34-37°C)で放出されるシナプス小胞のほとんどがこのエンドサイトーシス機構によって回収されるといった報告もある[8]。超高速エンドサイトーシスによって回収された小胞膜は、数秒後シナプス終末内のエンドソームに融合し、その後、活動依存的バルクエンドサイトーシスによって生み出されるELVと同様に、クラスリン依存的エンドサイトーシスに関わるタンパク質群の働きによって、エンドソームからシナプス小胞が再生される[23]

シナプス小胞以外のエンドサイトーシス

 持続的な神経伝達物質の放出には、活動依存的な解糖系の活性化によるエネルギー合成が不可欠である。シナプス前終末では、シナプス小胞とは異なる小胞に乗ったグルコース輸送体(GLUT4)が活動依存的に形質膜へと輸送され、細胞外から細胞内へのグルコースの取り込みを促進する。その結果、解糖系によるATP産生が活性化され、神経活動によるATPの枯渇を防ぐフィードバック機構として働く。その後、役目を終えたGLUT4はエンドサイトーシスによって、シナプス前終末内に回収される[24]

シナプス後部

 AMPA型グルタミン酸受容体は神経活動の変化に応じて、シナプス後部の形質膜上の量が動的に調整されている。AMPA型受容体を含む小胞(リサイクリングエンドソーム)がエキソサイトーシスされると、シナプス後部の形質膜のAMPA受容体の表面量が増加し、逆にエンドサイトーシスされるとAMAP型受容体の表面量が減少することで、シナプス伝達強度が変化する[25]。このAMPA型受容体のエキソサイトーシスとエンドサイトーシスのバランスの調整は、LTPやLTDなどシナプス可塑性を制御する重要な分子基盤である[26][27]

 AMPA型受容体のエンドサイトーシスは、NMDA型グルタミン酸受容体の活性化に伴うカルシウム濃度の上昇によって喚起される。シナプス後部のカルシウム濃度が上昇すると、カルシニューリン(calcineurin)が活性化し、AMPA型受容体のクラスリン依存的エンドサイトーシスが促進する(図2)。このエンドサイトーシスにおいても、シナプス前終末のシナプス小胞のエンドサイトーシスに関わるタンパク質や脂質が重要な働きをする。AMPA型受容体のエンドサイトーシスはシナプス後肥厚近傍にあるPI(4,5)P2が豊富な領域で起こる。AP-2はそこに集積し、直接、あるいはBARドメインタンパク質であるPICK1を介してAMPA型受容体と結合する。そこにEps15, PACSINといった足場タンパク質が初期に集積し、その後Endophilin/ダイナミンが誘導されて、小胞膜が切断されることでエンドサイトーシスが完了する。アクチンやアクチン関連タンパク質であるArp2/3複合体、モータータンパク質であるミオシンVIはシナプス後部に豊富に存在し、AMPA型受容体のエンドサイトーシスの誘導を促進する働きを担う[28][29]。これらに加えて、シナプス後部に豊富に存在するカルシウムセンサータンパク質であるシナプトタグミン3がCa2+依存性のAMPA型受容体エンドサイトーシスの重要な因子として知られているが、上記の様々なエンドサイトーシス関連因子との関係は明らかになっていない[26]

 AMPA型グルタミン酸受容体のエンドサイトーシスは、小脳の平行線維―プルキンエ細胞シナプスにおける長期抑圧 (long-term depression: LTD)の分子基盤であり、眼球運動の適応現象の制御に関与していると考えられている[30]。また、海馬シナプスにおいてもLTPからの回復やLTDの成立に関与し、記憶の形成や学習などの高次脳機能の分子基盤であると考えられている[26][27]

 これに加えてシナプス後部においても、クラスリン非依存的エンドサイトーシスの存在も知られている。その例として、AMPA型グルタミン酸の構成的なエンドサイトーシス、アミロイド前駆タンパク質のエンドサイトーシスなどが挙げられる[31][32]

細胞体およびその近傍

 神経細胞の細胞体近傍には軸索起始部 (axon initial segment: AIS)と呼ばれる領域が存在し、軸索と樹状突起の細胞極性の維持において重要な構造体である。このAIS領域付近では、トランスフェリン受容体 (transferrin receptor: TfR)や、ロイシンリッチリピート膜タンパク質であるDMA-1といった膜貫通タンパク質が、クラスリン依存的エンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれる。AISにおけるこれら受容体の選択的エンドサイトーシスが、軸索局在タンパク質と樹状突起局在タンパク質の区画化の維持に重要であることが示されている[33]

成長円錐

 成長円錐では、クラスリン依存的エンドサイトーシスとクラスリン非依存的エンドサイトーシスが異なるサブ領域でおこっており、それぞれ軸索を伸長させるために必要な分子機構として知られている。

 成長円錐におけるクラスリン依存的エンドサイトーシスは、成長円錐の先端から離れた場所で頻繁に観察され、成長円錐の反発性旋回や成長円錐の前進運動に必要とされる接着分子のリサイクリングを担う[34][35]

 一方、クラスリン非依存的エンドサイトーシスは、成長円錐の先端で主に観察され、このエンドサイトーシスで取り込まれる小胞にはシナプス小胞タンパク質であるSynaptophysinが存在し、Endophilinに依存する。また、Endophilinの遺伝子ノックダウンによって破綻させると、軸索伸長が著しく阻害されることから、クラリン非依存的エンドサイトーシスも成長円錐の生理機能にとって不可欠であると考えられている[36]

グリア細胞

 グリア細胞の一種であるミクログリアは、傷害を受けた神経細胞や死細胞を食作用によって脳内から除去する役割を担っている。この他にも、グリア細胞の食作用は脳内に侵入してきた病原体の排除や老廃物の除去も行う[37][38][39]

関連項目

参考文献

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