ニューロピル

提供:脳科学辞典
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渡辺 雅彦
北海道大学大学院医学研究科解剖学講座
DOI:10.14931/bsd.3950 原稿受付日:2013年6月14日 原稿完成日:2013年10月16日
担当編集委員:林 康紀(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)

英語名:neuropil 独:Neuropil 仏:neuropile

同義語:神経網

 脳の灰白質を、ニッスル染色やヘマトキシリン・エオジン染色すると、ニューロンやグリアの細胞体や核が染色されるが、その間に淡明な網状組織が観察され、これをニューロピルとよぶ。樹状突起や軸索、シナプスが密に存在し、さらにこれを取囲む星状膠細胞や、髄鞘を形成する希突起膠細胞などのグリア突起が存在する。

図1.ニューロピル
ニッスル染色で濃染するニューロン細胞体の間の領域は淡明で、ニューロピルとよばれる。
図2.ニューロピルの電子顕微鏡写真(小脳)
神経終末(矢頭)と樹状突起棘(星印)が接着してシナプスを形成し、それを星状膠細胞の突起(As)が取り囲んでいる。このように、ニューロピルでは神経情報伝達が活発に行われている。

 灰白質を、ニッスル染色ヘマトキシリン・エオジン染色などで染めて光学顕微鏡で観察すると、ニューロングリア細胞体が染色される。一方、これら染色される構造体の間の領域は淡明な網状組織として観察され、これをニューロピルとよぶ(図1)。

 ニューロピルを電子顕微鏡で観察すると、そこには樹状突起軸索終末部が密に存在し、莫大な数のシナプスが形成されている(図2)。さらに、シナプスなどのニューロン要素と関連しこれを取囲む星状膠細胞や、髄鞘を形成する希突起膠細胞などのグリア突起も錯綜する。このため、シナプスやグリア突起に選択的な分子を免疫組織化学で検出すると、一般染色では淡明にしか捉えられなかったニューロピルに、これらの構成要素が密に存在している様子が一目瞭然となる。さらに、中枢神経系組織は神経管という神経外胚葉に由来するため、中胚葉由来の結合組織を備えた組織間隙は血管周囲に限られている。このため、ニューロンやグリアの細胞膜は相互に直接接し、ニューロピルは緻密な組織構築として観察される。

関連項目

参考文献

  1. 渡辺雅彦
    「脳・神経科学入門講座」
    羊土社、2008年
  2. Eric Kandel, James Schwartz, Thomas Jessel, Steven Sieqelbaum, AJ Hudspeth
    Principles of Neural Science, 5th edition
    McGraw-Hill, 2012, ISBN 978-0071390118