「血管性認知症」の版間の差分

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 表1は最も汎用されているNINDS-AIREN(National Institute of Neurological Disorders and Stroke and Association Internationale pur la Rechrche et l’Enseignement en Neurosciences)診断基準である。本診断基準は臨床試験に用いることを目的として作成されたものであり、最も厳密な基準である。診断の特異度は高いが、感度が低くなる欠点がある。  
 表1は最も汎用されているNINDS-AIREN(National Institute of Neurological Disorders and Stroke and Association Internationale pur la Rechrche et l’Enseignement en Neurosciences)診断基準である。本診断基準は臨床試験に用いることを目的として作成されたものであり、最も厳密な基準である。診断の特異度は高いが、感度が低くなる欠点がある。  


 
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'''表1:血管性認知症のNINDS-AIREN診断基準'''  
'''表1:血管性認知症のNINDS-AIREN診断基準'''  


<br>  本診断基準では血管性認知症を以下の6型に分類している(表2)。多発梗塞性認知症は血管性認知症の亜型であり、わが国では認知症を伴う脳小血管病が最も多く約半数を占め、多発梗塞性認知症は2-3割を占める。NINDS-AIREN診断基準の作成委員会メンバーのひとりであったErkinjunti Tは血管性認知症の比較的多数を占め、均質な徴候を呈する皮質下血管性認知症に焦点をあて、画像所見を含めた詳細な診断基準を提唱している(表3)。


 本診断基準では血管性認知症を以下の6型に分類している(表2)。多発梗塞性認知症は血管性認知症の亜型であり、わが国では認知症を伴う脳小血管病が最も多く約半数を占め、多発梗塞性認知症は2-3割を占める。NINDS-AIREN診断基準の作成委員会メンバーのひとりであったErkinjunti Tは血管性認知症の比較的多数を占め、均質な徴候を呈する皮質下血管性認知症に焦点をあて、画像所見を含めた詳細な診断基準を提唱している(表3)。
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'''表2:血管性認知症の分類(NINDS-AIREN診断基準)'''  
'''表2:血管性認知症の分類(NINDS-AIREN診断基準)'''  


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'''表3:皮質下血管性認知症の臨床診断基準'''  
'''表3:皮質下血管性認知症の臨床診断基準'''  


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| A. 多彩な認知機能障害の発現.以下の2項目がある
1. 記憶障害(新しい情報を学習したり,以前に学習した情報を想起する能力の障害)
2. 以下の認知機能障害が一つ(またはそれ以上)ある
 (a) 失語(言語の障害)
 (b) 失行(運動機能は障害されていないのに,運動行為が障害される)
 (c) 失認(感覚機能が障害されていないのに,対象を認識または同定できない)


 (d) 実行機能(計画を立てる,組織化する,順序立てる,抽象化する)の障害


{| width="200" cellspacing="1" cellpadding="1" border="1"
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| B. A1およびA2の認知機能障害は,その各々が,社会的または職業的機能の著しい障害を引き起こし,病前の機能水準からの著しい低下を示す
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| C. 局所的神経徴候や症状(例:腱反射の亢進,病的反射,偽性球麻痺,歩行障害,一肢の筋力低下),または臨床検査上その障害に病因的関連があると判断される脳血管障害(CVD)(例:皮質や皮質下白質を含む多発性梗塞)を示す
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| D. 認知機能障害はせん妄の経過中にのみ現れるものではない
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 しかし、アルツハイマー病理の存在を抽出することは臨床的には困難なであり、この問題を回避する意味で脳血管障害が関与する認知機能障害として血管性認知障害(Vascular cognitive impairment; VCI)が提唱されている。血管性認知障害は血管性認知症を中核として、混合型認知症、脳卒中後認知症、血管性軽度認知障害までを包含する概念であり、2011年、その診断基準(案)がアメリカ心臓病・脳卒中協会から発表されている(表5)<ref name="ref4"><pubmed>21778438</pubmed></ref>。  
 しかし、アルツハイマー病理の存在を抽出することは臨床的には困難なであり、この問題を回避する意味で脳血管障害が関与する認知機能障害として血管性認知障害(Vascular cognitive impairment; VCI)が提唱されている。血管性認知障害は血管性認知症を中核として、混合型認知症、脳卒中後認知症、血管性軽度認知障害までを包含する概念であり、2011年、その診断基準(案)がアメリカ心臓病・脳卒中協会から発表されている(表5)<ref name="ref4"><pubmed>21778438</pubmed></ref>。  


表5
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{| cellspacing="1" cellpadding="1" border="1" style="width: 875px; height: 1137px;"
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| 1. VCIの用語は血管性認知症(VaD)から血管障害に起因する軽度認知障害(MCI)など全ての認知機能障害を含む。
2. 以下の基準は薬物やアルコールの乱用、または依存と診断される患者には適応されない。患者は過去3カ月間、上記のいずれの影響にも曝されていないことが必要である。 3.以下の基準はせん妄の患者には適用されない。
 
認知症
 
1. 認知症の診断は、少なくとも2つ以上の認知領域において認知機能の増悪や検査結果の低下が認められ、その結果、患者の日常生活が損なわれていると判断されることが必要である。
 
2. 認知症の診断は、認知機能検査の結果に基づいて判断される。認知に関する少なくとも4領域(実行機能、記憶、言語、視空間認知機能)を検査する。
 
3. 患者の日常生活障害は、血管障害の結果生じる運動麻痺や知覚障害とは無関係である。
 
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| <u>Probable VaD</u>
1. 認知障害と脳血管障害の画像所見が認められ、
 
&nbsp;&nbsp; a. 血管障害(例えば卒中発作)と認知障害の発症の間に明確な時間的関連が存在すること、または
 
&nbsp;&nbsp; b. 認知障害と程度やタイプと、び慢性または皮質下性の脳血管病理(例えばCADASIL)の間に明確な関連性が認められること。
 
2. 卒中発作の前後で、非血管性の神経変性疾患を示唆する緩徐進行性の認知記障害の病歴が存在しない。
 
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| <u>Possible VaD</u>
認知障害と脳血管障害の画像所見が認められるが、
 
1. 血管障害(例えば無症候性脳梗塞や皮質下の小血管病変)と認知障害の間に明確な時間、重症度やタイプの整合性が存在しない場合。
 
2. VaDの診断に関する十分な情報が得られない場合(例えば、臨床症状から血管障害が疑われるが、CT/MRI検査結果が得られない、など)。
 
3. 重度の失語のために正確な認知機能の評価が困難である場合。ただし、失語の原因となった卒中発作の以前は認知機能正常の記録がある患者(例えば例年実施される認知機能検査など)についてはprobable VaDと診断しうる。
 
4. 認知機能に影響しうる脳血管疾患に加え、以下のような他の神経変性疾患や病態を疑う根拠が存在する場合。
 
&nbsp;&nbsp; a. 神経変性疾患の病歴がある(例えば、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症)、または、
 
&nbsp;&nbsp; b. バイオマーカー(例えばPET、髄液でのアミロイド変化)や遺伝子検査(例えばPS1変異)からアルツハイマー病理の存在が示される、または、
 
&nbsp;&nbsp; c. 認知機能に影響しうる活動性のがん、精神疾患、代謝性疾患の病歴がある。
 
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| <u>VaMCI(血管性軽度認知障害) </u>
1. VaMCIはMCIの4亜型、すなわち健忘型(amnestic type)、他の認知領域障害を伴う健忘型、非健忘型の単一認知領域の障害、非健忘型の多認知領域の障害、を含む。
 
2. VaMCIの分類は認知機能検査に基づいて行うこととし、少なくとも4つの認知領域、すなわち実行機能/注意、記憶、言語、視空間認知を評価する。分類は以前の水準からの低下で認知機能の低下を判断し、少なくとも1つの認知領域が障害されているものとする。
 
3. 運動、知覚障害の程度に関わらず、手段的日常生活動作(IADL)は正常あるいは軽度の障害がありうる。
 
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| <u>Probable VaMCI</u>
1. 認知障害と脳血管障害の画像所見が認められ、
 
&nbsp;&nbsp; a. 血管障害(例えば卒中発作)と認知障害の発症の間に明確な時間的関連が存在すること、または
 
&nbsp;&nbsp; b. 認知障害と程度やタイプと、び慢性または皮質下性の脳血管病理(例えばCADASIL)の間に明確な関連性が認められること。
 
2. 卒中発作の前後で、非血管性の神経変性疾患を示唆する緩徐進行性の認知記障害の病歴が存在しない。
 
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| <u>Possible VaMCI </u>
認知障害と脳血管障害の画像所見が認められるが、
 
1. 血管障害(例えば無症候性脳梗塞や皮質下小血管病変)と認知障害の間に明確な時間、重症度やタイプの整合性が存在しない場合。
 
2. VaMCIの診断に関する十分な情報が得られない場合(例えば、臨床症状から血管障害が疑われるが、CT/MRI検査結果が得られない、など)。
 
3. 重度の失語のために正確な認知機能の評価が困難である場合。ただし、失語の原因となった卒中発作の以前は認知機能正常の記録がある患者(例えば例年実施される認知機能検査など)についてはprobable VaMCIと診断しうる。
 
4. 認知機能に影響しうる脳血管疾患に加え、以下のような他の神経変性疾患や病態を疑う根拠が存在する場合。
 
&nbsp;&nbsp; a. 神経変性疾患の病歴がある(例えば、パーキンソン病、進行性核上性麻痺、レビー小体型認知症)、または、
 
&nbsp;&nbsp; b. バイオマーカー(例えばPET、髄液でのアミロイド変化)や遺伝子検査(例えばPS1変異)からアルツハイマー病理の存在が示される、または、
 
&nbsp;&nbsp; c. 認知機能に影響しうる活動性のがん、精神疾患、代謝性疾患の病歴がある。
 
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| <u>Unstable VaMCI </u>
probable VaMCI またはpossible VaMCIと診断され正常に復した患者はunstable VaMCIと分類する。
 
|}
 
'''表5:血管性認知障害(Vascular cognitive impairment;VCI)の診断基準(案)'''


VCI, vascular cognitive impairment; VaD, vascular dementia; MCI, mild cognitive impairment; CADASIL, cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy; CT/MRI, computed tomography/magnetic resonance imaging; PET, positron emission tomography; CSF, cerebrospinal fluid; VaMCI, vascular mild cognitive impairment.  
VCI, vascular cognitive impairment; VaD, vascular dementia; MCI, mild cognitive impairment; CADASIL, cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy; CT/MRI, computed tomography/magnetic resonance imaging; PET, positron emission tomography; CSF, cerebrospinal fluid; VaMCI, vascular mild cognitive impairment.  

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