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== | == 構造と機能 == | ||
チロシンキナーゼは、構造的に膜貫通領域を持つ受容体型および非受容体型(以下に記載)に大別される。ヒトには58種の[[受容体型チロシンキナーゼ]]と32種の非受容体型チロシンキナーゼが存在する。チロシンフォスファターゼは、構造的に膜貫通領域を持つ受容体型および非受容体型に大別される。チロシンキナーゼ、チロシンフォスファターゼ共に、受容体型は細胞膜上に、非受容体型は細胞質に存在する。 | チロシンキナーゼは、構造的に膜貫通領域を持つ受容体型および非受容体型(以下に記載)に大別される。ヒトには58種の[[受容体型チロシンキナーゼ]]と32種の非受容体型チロシンキナーゼが存在する。チロシンフォスファターゼは、構造的に膜貫通領域を持つ受容体型および非受容体型に大別される。チロシンキナーゼ、チロシンフォスファターゼ共に、受容体型は細胞膜上に、非受容体型は細胞質に存在する。 | ||
1979年Tony Hunterにより、癌遺伝子産物v-Srcおよび癌原遺伝子産物c-Srcがチロシンリン酸化活性を持つことが発見された。これが最初のチロシンキナーゼの報告例であり、以後多くのチロシンキナーゼが同定された。Srcを含む非受容体型チロシンキナーゼは、構造的に、細胞外領域をもたず、細胞内領域にチロシンキナーゼドメインをもつ。チロシンキナーゼドメイン中には自己リン酸化部位を含み、自己リン酸化によりキナーゼ活性を調節している。非受容体型チロシンキナーゼは、神経系においても様々な細胞膜受容体と会合して、膜受容体から細胞内への情報伝達を担う。 | 1979年Tony Hunterにより、癌遺伝子産物v-Srcおよび癌原遺伝子産物c-Srcがチロシンリン酸化活性を持つことが発見された。これが最初のチロシンキナーゼの報告例であり、以後多くのチロシンキナーゼが同定された。Srcを含む非受容体型チロシンキナーゼは、構造的に、細胞外領域をもたず、細胞内領域にチロシンキナーゼドメインをもつ。チロシンキナーゼドメイン中には自己リン酸化部位を含み、自己リン酸化によりキナーゼ活性を調節している。非受容体型チロシンキナーゼは、神経系においても様々な細胞膜受容体と会合して、膜受容体から細胞内への情報伝達を担う。 | ||
多くの非受容体型チロシンキナーゼには、SH(Src Homology)2ドメインおよびSH3ドメインとよばれるドメイン構造が存在する。SH2ドメインはリン酸化チロシン残基を、SH3はプロリンリッチ領域(X-Pro-X-X-Pro)を認識して結合することで、細胞内情報伝達系におけるタンパク質-タンパク質結合を制御する。これらのドメインは構造的に保存されたアミノ酸配列を持ち、Srcファミリーチロシンキナーゼ(Src、Yes、Fyn、Fgr、Lyn、Lck、Hck、Blk、Frk(脳では、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lckが発現))において最初に見出された。Abl、Fes、Syk/Zap70、Tec、Ack、Csk、Srm、Rak等の非受容体型チロシンキナーゼや、PI3K(phosphatidylinositol-3 kinase)、PLC(phospholipase C)-gamma等のセリン・スレオニンキナーゼ、またGrb2、Nck等のアダプタータンパク質もこれらのドメイン構造を持つ。SH2ドメインは、約100アミノ酸残基の領域であり、2つのアルファヘリックスと7つのベータシートから構成される。SH3ドメインは、約60アミノ酸残基の領域であり、5つないし6つのベータシートからなる典型的なベータバレル構造をもつ。 | 多くの非受容体型チロシンキナーゼには、SH(Src Homology)2ドメインおよびSH3ドメインとよばれるドメイン構造が存在する。SH2ドメインはリン酸化チロシン残基を、SH3はプロリンリッチ領域(X-Pro-X-X-Pro)を認識して結合することで、細胞内情報伝達系におけるタンパク質-タンパク質結合を制御する。これらのドメインは構造的に保存されたアミノ酸配列を持ち、Srcファミリーチロシンキナーゼ(Src、Yes、Fyn、Fgr、Lyn、Lck、Hck、Blk、Frk(脳では、Src、Yes、Fyn、Lyn、Lckが発現))において最初に見出された。Abl、Fes、Syk/Zap70、Tec、Ack、Csk、Srm、Rak等の非受容体型チロシンキナーゼや、PI3K(phosphatidylinositol-3 kinase)、PLC(phospholipase C)-gamma等のセリン・スレオニンキナーゼ、またGrb2、Nck等のアダプタータンパク質もこれらのドメイン構造を持つ。SH2ドメインは、約100アミノ酸残基の領域であり、2つのアルファヘリックスと7つのベータシートから構成される。SH3ドメインは、約60アミノ酸残基の領域であり、5つないし6つのベータシートからなる典型的なベータバレル構造をもつ。 | ||
チロシンフォスファターゼは、保存されたモチーフ-(Ile/Val)-His-Cys-X-Ala-Gly-X-X-Arg-(Ser/Thr)-Gly-を活性中心にもつ。システイン残基のある酵素活性中心が、リン酸化チロシンを認識する。 | チロシンフォスファターゼは、保存されたモチーフ-(Ile/Val)-His-Cys-X-Ala-Gly-X-X-Arg-(Ser/Thr)-Gly-を活性中心にもつ。システイン残基のある酵素活性中心が、リン酸化チロシンを認識する。 | ||
チロシンリン酸化の神経可塑性における役割としては、イオンチャンネルのコンダクタンスや開口確率の調節、シナプスでの局在と輸送の制御が知られている。また、神経発生において、神経筋接合部やミエリンの形成、軸索伸長を制御する。 | |||
(執筆者:林 崇、担当編集委員: ) | (執筆者:林 崇、担当編集委員: ) |
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