「骨形成因子」の版間の差分

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==骨形成因子とは==
==骨形成因子とは==
 骨形成因子という名が示す通り、もともとは骨組織や軟骨の分化を誘導、促進する分子として同定された一群のタンパク質である。当初同定された8種類の蛋白質のうち、TGF-βスーパーファミリーに属するものが大部分であったが、BMP1は[[メタロプロテアーゼ]]で、BMP3も同じファミリーには属していない。本稿で扱うのはTGF-βスーパーファミリーに属するBMPで、BMP2/4グループ(BMP2、BMP4)、OP-1グループ(BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b)、BMP9グループ(BMP9、BMP10)、GDF5グループ(GDF5、GDF6、GDF7)に分けられる。両生類等を用いた実験から、胚の背腹軸の決定に関与していることが示され、その後も発生期の組織や器官の誘導、パターン形成、細胞死の誘導、細胞分化の制御など、発生過程の様々な場面で重要な役割をしていることが明らかとなっている。
 骨形成因子という名が示す通り、もともとは骨組織や軟骨の分化を誘導、促進する分子として同定された一群のタンパク質である。当初同定された8種類の蛋白質のうち、TGF-βスーパーファミリーに属するものが大部分であったが、BMP1は[[wikipedia:ja:マトリックスメタロプロテアーゼ|メタロプロテアーゼ]]で、BMP3も同じファミリーには属していない。本稿で扱うのはTGF-βスーパーファミリーに属するBMPで、BMP2/4グループ(BMP2、BMP4)、OP-1グループ(BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b)、BMP9グループ(BMP9、BMP10)、GDF5グループ(GDF5、GDF6、GDF7)に分けられる。両生類等を用いた実験から、胚の背腹軸の決定に関与していることが示され、その後も発生期の組織や器官の誘導、パターン形成、細胞死の誘導、細胞分化の制御など、発生過程の様々な場面で重要な役割をしていることが明らかとなっている。


==シグナル伝達==
==シグナル伝達==


 BMPを含むTGF−βスーパーファミリータンパク質はホモもしくはヘテロ二量体として[[リガンド]]活性を持ち、2本の[[wikipedia:ja:ペプチド鎖|ペプチド鎖]]は[[wikipedia:ja:ジスルフィド結合|ジスルフィド結合]]によって結合している。膜貫通型の[[セリン/スレオニンリン酸化酵素]][[受容体]]であるI型、II型BMP受容体のヘテロ二量体に結合して、シグナルが細胞内に伝達される<ref><pubmed> 21565618</pubmed></ref>。BMPと受容体の結合特異性は主にI型受容体によって決められており、BMP2/4はBMPR1AやBMPR1Bに、BMP6/7はALK2に強く結合し、BMPR1Bにも弱く結合する。GDF5はBMPR1Bに結合する。[[TAK1]]/[[TAB1/2]]を介した経路や[[PKA]]を介した経路等も知られているが、主要なシグナル伝達経路は[[SMAD]]タンパク質を介した経路である。リガンドの結合によって活性化された受容体が[[SMAD1]]/[[SMAD5|5]]/[[SMAD8|8]]の[[wikipedia:ja:セリン|セリン]]/[[wikipedia:ja:スレオニン|スレオニン]]残基を[[リン酸化]]すると、リン酸化SMAD1/5/8は細胞質にある[[SMAD4]]と結合して[[wikipedia:ja:核|核]]に移行する。そこでターゲット遺伝子の[[cis制御領域]]に結合し、その[[wikipedia:ja:転写 (生物学)|転写]]を活性化する。一義的にはBMPを産生する細胞からの濃度勾配がパターンを形成するために重要であるが、細胞外では[[ノギン]](Noggin) や[[コーディン]](Chordin)などのようなBMPに結合する分泌性タンパク質によって細胞外で活性を抑制されるし、細胞内ではSMAD1/5/8に結合する抑制性[[SMAD6]]/[[SMAD7|7]]によってもBMPシグナルの調節がおこなわれる。一般には、SMAD1/5/8のリン酸化部位に対する抗体を用いた検出で、BMPシグナルの活性化分布を検出することができる。
 BMPを含むTGF−βスーパーファミリータンパク質はホモもしくはヘテロ二量体として[[リガンド]]活性を持ち、2本の[[wikipedia:ja:ペプチド鎖|ペプチド鎖]]は[[wikipedia:ja:ジスルフィド結合|ジスルフィド結合]]によって結合している。膜貫通型の[[セリン/スレオニンリン酸化酵素]][[受容体]]であるI型、II型BMP受容体のヘテロ二量体に結合して、シグナルが細胞内に伝達される<ref><pubmed> 21565618</pubmed></ref>。BMPと受容体の結合特異性は主にI型受容体によって決められており、BMP2/4は[[wikipedia:BMPR1A]]やBMPR1Bに、BMP6/7はALK2に強く結合し、BMPR1Bにも弱く結合する。GDF5はBMPR1Bに結合する。[[TAK1]]/[[TAB1/2]]を介した経路や[[PKA]]を介した経路等も知られているが、主要なシグナル伝達経路は[[SMAD]]タンパク質を介した経路である。リガンドの結合によって活性化された受容体が[[SMAD1]]/[[SMAD5|5]]/[[SMAD8|8]]の[[wikipedia:ja:セリン|セリン]]/[[wikipedia:ja:スレオニン|スレオニン]]残基を[[リン酸化]]すると、リン酸化SMAD1/5/8は細胞質にある[[SMAD4]]と結合して[[wikipedia:ja:核|核]]に移行する。そこでターゲット遺伝子の[[cis制御領域]]に結合し、その[[wikipedia:ja:転写 (生物学)|転写]]を活性化する。一義的にはBMPを産生する細胞からの濃度勾配がパターンを形成するために重要であるが、細胞外では[[ノギン]](Noggin) や[[コーディン]](Chordin)などのようなBMPに結合する分泌性タンパク質によって細胞外で活性を抑制されるし、細胞内ではSMAD1/5/8に結合する抑制性[[SMAD6]]/[[SMAD7|7]]によってもBMPシグナルの調節がおこなわれる。一般には、SMAD1/5/8のリン酸化部位に対する抗体を用いた検出で、BMPシグナルの活性化分布を検出することができる。


==神経発生における機能と活性==
==神経発生における機能と活性==
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