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さらに、適応に関する記憶が脳のどの部位に保持されていることが、神経組織の活動を薬物([[局所麻酔剤]])により遮断する方法で調べられている<ref name="ref5" /> <ref name="ref6" />。もし神経活動が遮断された脳部位に[[記憶の痕跡]]が存在するならば、遮断により記憶が消され、適応によって生じたゲインの変化は直ちに消去されるはずである。VORの適応の記憶の部位については、ネコとアカゲザルで調べられており、1~2時間のトレーニングにより生じた適応の記憶は片葉に保持されているが、それ以前のトレーニングによって生じた長期の適応の記憶は前庭核に保持されていることが示唆されている(図3C)。この現象は適応の記憶痕跡の[[シナプス]]間移動と呼ばれているが、前庭神経核に適応の長期の記憶が保持されるメカニズムは現在のところよく知られていない。 | さらに、適応に関する記憶が脳のどの部位に保持されていることが、神経組織の活動を薬物([[局所麻酔剤]])により遮断する方法で調べられている<ref name="ref5" /> <ref name="ref6" />。もし神経活動が遮断された脳部位に[[記憶の痕跡]]が存在するならば、遮断により記憶が消され、適応によって生じたゲインの変化は直ちに消去されるはずである。VORの適応の記憶の部位については、ネコとアカゲザルで調べられており、1~2時間のトレーニングにより生じた適応の記憶は片葉に保持されているが、それ以前のトレーニングによって生じた長期の適応の記憶は前庭核に保持されていることが示唆されている(図3C)。この現象は適応の記憶痕跡の[[シナプス]]間移動と呼ばれているが、前庭神経核に適応の長期の記憶が保持されるメカニズムは現在のところよく知られていない。 | ||
[[Image:図4VOR.jpg|thumb|300px|<b>図4.温度刺激で誘発される前庭眼振とその発現の神経機構</b><br />(頭を60度後屈させ、右の外耳道に温水を注入したときに生じる水平半規管のリンパ流と、それにより生じる水平性VOR。図は頭の後部より中耳を眺めたもの。水平半器管は、この頭位では垂直に位置する。誘発される眼振の緩徐相(VOR)と急速相を右下に示す。]] | |||
== VORとカロリックテスト == | == VORとカロリックテスト == | ||
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この[[温度眼振]]は1914年に[[ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した[[バラニー]](Robert Bàràny, 1876-1936)によって発見されて以来、末梢の[[前庭機能]]の検査の方法として臨床的に用いられている。1983年に[[wikipedia:ja:NASA|NASA]]の[[wikipedia:ja:スペースシャトル|スペースシャトル]]内で、無重力状態でも、地上と同様な温度眼振が誘発されることが実験的に示された。重力のないところでは対流は生じにくいので、それ以外のメカニズムも関与するようであるが、それについてはよくわかってはいない。前庭性眼振には、カロリックテストで誘発されるような生理的眼振と、[[wikipedia:ja:メニエル病|メニエル病]]のような前庭障害によって生じるような病的眼振がある。カロリックテストを含む[[眼振]]の検査はめまいの診断に用いられる。 | この[[温度眼振]]は1914年に[[ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した[[バラニー]](Robert Bàràny, 1876-1936)によって発見されて以来、末梢の[[前庭機能]]の検査の方法として臨床的に用いられている。1983年に[[wikipedia:ja:NASA|NASA]]の[[wikipedia:ja:スペースシャトル|スペースシャトル]]内で、無重力状態でも、地上と同様な温度眼振が誘発されることが実験的に示された。重力のないところでは対流は生じにくいので、それ以外のメカニズムも関与するようであるが、それについてはよくわかってはいない。前庭性眼振には、カロリックテストで誘発されるような生理的眼振と、[[wikipedia:ja:メニエル病|メニエル病]]のような前庭障害によって生じるような病的眼振がある。カロリックテストを含む[[眼振]]の検査はめまいの診断に用いられる。 | ||
小脳片葉によるVORのゲイン調節機構は小脳による運動学習の実験モデルとして、詳細に研究されている。それについては小脳プラットフォーム<ref>http://cerebellum.neuroinf.jp</ref>を参照されたい。 | 小脳片葉によるVORのゲイン調節機構は小脳による運動学習の実験モデルとして、詳細に研究されている。それについては小脳プラットフォーム<ref>http://cerebellum.neuroinf.jp</ref>を参照されたい。 |