「Depolarization-induced suppression of inhibition」の版間の差分

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==生理的役割==
==生理的役割==
DSI/DSEはネガティブフィードバックとして働き局所回路においてシナプス伝達を制御すると考えられる。短期のシナプス可塑性であるDSIは神経回路の計算論的観点からも注目されている<ref><pubmed> 15483601 </pubmed></ref>。またDSIがメタ可塑性に関わることが示唆されている。海馬CA1において閾値以下のテタヌス刺激では長期増強(LTP)を引き起こさないような場合でもテタヌス刺激に先行してDSIを誘導させると次に来る閾値以下であった刺激でもLTPが誘導されることが報告されている<ref><pubmed> 12080342 </pubmed></ref>。DSIによる脱抑制が原因であると考えられる。
DSI/DSEはネガティブフィードバックとして働き局所回路においてシナプス伝達を制御すると考えられる。短期のシナプス可塑性であるDSIは神経回路の計算論的観点からも注目されている<ref><pubmed> 15483601 </pubmed></ref>。またDSIがメタ可塑性に関わることが示唆されている。海馬CA1において閾値以下のテタヌス刺激では長期増強(LTP)を引き起こさないような場合でもテタヌス刺激に先行してDSIを誘導させると次に来る閾値以下であった刺激でもLTPが誘導されることが報告されている<ref><pubmed> 12080342 </pubmed></ref>。DSIによる脱抑制が原因であると考えられる。
    DSIおよびDSEを誘導するには細胞内のカルシウム濃度がマイクロモーラーレベルにまで達しなければならない。実際に生理的条件下でそのように大きなカルシウム濃度上昇を引き起こすほどニューロンが長時間脱分極するかどうかは疑わしい。したがってDSIが生理的な現象であることを疑問視する報告もある<ref><pubmed> 12649318 </pubmed></ref>。しかし一方で、小脳プルキンエ細胞や背側蝸牛神経核にあるCartwheel細胞の持続的な発火によるマイクロモーラー以下のカルシウム濃度上昇でもDSIまたはDSEが起こることからDSI/DSEが生理的現象である可能性も示唆されている<ref><pubmed> 16793891 </pubmed></ref><ref><pubmed> 22049424 </pubmed></ref>。エンドカンナビノイドはDSIのような細胞内カルシウム濃度上昇だけでなく、グループI代謝型グルタミン酸受容体といったGq/11タンパク質共役型受容体の活性化によっても産生・放出される(Maejima et al., 2001)。さらに前述のいわゆる「DSIの促進効果」により弱い脱分極でもGq/11タンパク質共役型受容体の活性化と組合わさると、効率よく逆行性シナプス伝達抑制が引き起こされる。したがって生理的条件下ではDSIが単独で起こるよりもGq/11タンパク質共役型受容体の活性化を伴った神経活動によってエンドカンナビノイドによる逆行性シナプス伝達抑制が引き起こされると考えられる(Hashimotodani et al., 2007a)。生理的役割とは別にDSI/DSEは着目するシナプスにおいて、エンドカンナビノイドによる逆行性シナプス伝達抑制を誘導する能力(シナプス後部にDGLが存在し、シナプス前終末にCB1受容体が存在する)があるかどうかを試すプロトコールとしても用いられる。
    DSIおよびDSEを誘導するには細胞内のカルシウム濃度がマイクロモーラーレベルにまで達しなければならない。実際に生理的条件下でそのように大きなカルシウム濃度上昇を引き起こすほどニューロンが長時間脱分極するかどうかは疑わしい。したがってDSIが生理的な現象であることを疑問視する報告もある<ref><pubmed> 12649318 </pubmed></ref>。しかし一方で、小脳プルキンエ細胞や背側蝸牛神経核にあるCartwheel細胞の持続的な発火によるマイクロモーラー以下のカルシウム濃度上昇でもDSIまたはDSEが起こることからDSI/DSEが生理的現象である可能性も示唆されている<ref><pubmed> 16793891 </pubmed></ref><ref><pubmed> 22049424 </pubmed></ref>。エンドカンナビノイドはDSIのような細胞内カルシウム濃度上昇だけでなく、グループI代謝型グルタミン酸受容体といったGq/11タンパク質共役型受容体の活性化によっても産生・放出される<ref><pubmed> 11516402 </pubmed></ref>。さらに前述のいわゆる「DSIの促進効果」により弱い脱分極でもGq/11タンパク質共役型受容体の活性化と組合わさると、効率よく逆行性シナプス伝達抑制が引き起こされる。したがって生理的条件下ではDSIが単独で起こるよりもGq/11タンパク質共役型受容体の活性化を伴った神経活動によってエンドカンナビノイドによる逆行性シナプス伝達抑制が引き起こされると考えられる<ref><pubmed> 17404373 </pubmed></ref>。生理的役割とは別にDSI/DSEは着目するシナプスにおいて、エンドカンナビノイドによる逆行性シナプス伝達抑制を誘導する能力(シナプス後部にDGLが存在し、シナプス前終末にCB1受容体が存在する)があるかどうかを試すプロトコールとしても用いられる。


==参考文献==
==参考文献==
<references/>
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(執筆者:橋本谷祐輝、狩野方伸 担当編集委員:柚崎通介)
(執筆者:橋本谷祐輝、狩野方伸 担当編集委員:柚崎通介)
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