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英:slow postsynaptic potential | 英:slow postsynaptic potential | ||
同義語:遅いシナプス電位、緩徐シナプス(後)電位 | |||
類義語:遅いシナプス電流 (slow synaptic current)、遅いシナプス後電流 (slow postsynaptic current)、遅いシナプス伝達 (slow synaptic transmission)、遅いEPSP (slow EPSP)、遅いIPSP (slow IPSP) | 類義語:遅いシナプス電流 (slow synaptic current)、遅いシナプス後電流 (slow postsynaptic current)、遅いシナプス伝達 (slow synaptic transmission)、遅いEPSP (slow EPSP)、遅いIPSP (slow IPSP) | ||
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Gタンパク質シグナリングによって影響を受けるイオンチャンネルは数多いが、その中でシナプス電位として観察される電位変化をもたらすイオンチャンネルは、Gタンパク質共役型[[内向き整流性カリウムチャネル]]([[内向き整流性カリウムチャネル|GIRK channel]])([[Kir3]]により構成される)<ref name="ref3"><pubmed>20389305</pubmed></ref>、[[カリウムチャネル#遅延整流性カリウム電流|KCNQチャンネル]]([[KvLQT]]や[[M channel]]とも呼ばれ、[[Kv7]]により構成される)<ref name="ref4"><pubmed>19298256</pubmed></ref>、および[[TRPチャンネル]](Transient receptor potentialchannel)<ref name="ref5"><pubmed>15194117</pubmed></ref><ref name="ref6"><pubmed>18701065</pubmed></ref>等である。 | Gタンパク質シグナリングによって影響を受けるイオンチャンネルは数多いが、その中でシナプス電位として観察される電位変化をもたらすイオンチャンネルは、Gタンパク質共役型[[内向き整流性カリウムチャネル]]([[内向き整流性カリウムチャネル|GIRK channel]])([[Kir3]]により構成される)<ref name="ref3"><pubmed>20389305</pubmed></ref>、[[カリウムチャネル#遅延整流性カリウム電流|KCNQチャンネル]]([[KvLQT]]や[[M channel]]とも呼ばれ、[[Kv7]]により構成される)<ref name="ref4"><pubmed>19298256</pubmed></ref>、および[[TRPチャンネル]](Transient receptor potentialchannel)<ref name="ref5"><pubmed>15194117</pubmed></ref><ref name="ref6"><pubmed>18701065</pubmed></ref>等である。 | ||
GIRKチャンネルやKCNQチャンネルのようにカリウムイオンを選択的に透過するチャンネルの場合は、開口により膜電位はカリウムの平衡電位である-80 mV付近に近づくため、静止膜電位から過分極する。逆に、閉口する場合には膜電位は脱分極する。TRPチャンネルのような非選択的陽イオンチャンネルの場合は、0 mV付近が平衡電位であるため、開口により膜電位は脱分極し、閉口により過分極する方向に向かう。 また、いずれのチャンネルの場合も、開口の場合には、電流が膜を通り易くなるため、膜抵抗が減少する。逆に、閉口の場合には膜抵抗は増加する。 | |||
GIRKチャンネルはGタンパク質共役受容体の[[Gβγサブユニット|G<sub>βγ</sub> サブユニット]]により活性化されるのに加え、[[cAMP依存性蛋白質リン酸化酵素]](protein kinase A, PKA)依存的[[リン酸化]]によって活性化され、[[カルシウム/リン脂質依存性蛋白質リン酸化酵素]](protein kinase C, PKC)依存的リン酸化で阻害される。また、[[ホスホリパーゼC]] (PLC)の活性化により細胞膜の[[ホスファチジルイノシトール#PI.284.2C5.29P2|ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスリン酸]] (phosphatidylinositol-4,5-bisphosphate, PI(4,5)P<sub>2</sub>)が枯渇するとGIRKチャンネルおよびKCNQチャンネルは阻害される<ref name="ref3" /><ref name="ref4" />。TRPチャンネルの活性化もPLCの活性化により誘導される<ref name="ref11"><pubmed>16133266</pubmed></ref>。 | |||
== 受容体の局在と伝達様式 == | == 受容体の局在と伝達様式 == | ||
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== 生理的意義 == | == 生理的意義 == | ||
一般的に遅いシナプス電位の振幅は小さく、興奮性伝達の場合においても、それ自体で閾値に達して活動電位の発火を引き起こすことは殆どない。むしろ、速いシナプス伝達による発火のしやすさを調節したり、[[自発発火]](spontaneous firing)に影響を与えたりするなど、修飾的な役割が主であると考えられる。例えば、興奮性の遅いシナプス後電位は、数mVの脱分極をもたらすことで膜電位を閾値に近づけるため、そこに速いシナプス伝達等による脱分極が加わった場合には、比較的容易に閾値に達して活動電位を発火する。逆に、抑制性の遅いシナプス後電位が発生している最中は、その細胞は発火しにくい傾向になる。 | |||
また、遅いシナプス伝達は膜抵抗にも影響を与える。その意義を理解する為には、膜電位変化ΔVがΔV = R(膜抵抗)×I(膜電流)で決まることを思い出すと良い。例えば、カリウムチャンネルの閉口を伴う遅いシナプス後電位の場合は、膜抵抗(R)が増加する。その状態で、もし早い興奮性シナプス電流(I)が発生した場合には、シナプス電位はより振幅の大きな脱分極(ΔV)として生じる。このため、閾値への到達がより容易になり、活動電位が発生しやすくなる。 | |||
なお、代謝型受容体の活性化により引き起こされるのは膜電位の変化(遅いシナプス電位)だけではなく、これと平行して、[[細胞内貯蔵Ca2+|細胞内貯蔵Ca<sup>2+</sup>]]の放出等の様々な細胞内シグナル伝達系が活性化されて、細胞内タンパク質の[[リン酸化]]や[[wikipedia:ja遺伝子発現|遺伝子発現]]が引き起こされ、膜電位変化の持続時間以上の長期的な影響を与え得ることに注意すべきである。また、[[カルシウム]]透過性のあるTRPチャンネルが開口すれば、直接的に細胞内カルシウム濃度の上昇を引き起こし、細胞内カルシウムシグナリングに影響をあたえることも重要である。 | |||
さらに、遅いシナプス後電位が生じる状況においては、周辺の細胞にも伝達物質が到達し、その影響が生じる可能性がある。これは、上述の「総量的伝達」や「神経修飾」と呼ぶべき状態に相当する。この場合、[[シナプス前終末]]においては、[[シナプス前抑制]]や促通が起こり、シナプス伝達物質の放出効率に変化を来すこともある。また、[[グリア細胞]]も影響を受けるなど、比較的広範囲の影響が生じ得ることに注意すべきである。 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |
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