「統合失調症関連遺伝子」の版間の差分

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== 候補遺伝子関連解析からゲノムワイド関連解析へ ==
== 候補遺伝子関連解析からゲノムワイド関連解析へ ==


 このように、連鎖解析の主要精神疾患への適応が行き詰まりを見せる中、統合失調症関連遺伝子を同定するための方法論は、1)[[wikipedia:ja:ヒトゲノム計画|ヒトゲノム計画]]により遺伝子配列の概要が判明したこと、また2)民族ごとのhaplotype mappingを目指した[[wikipedia:ja:国際HapMap計画|国際HapMap計画]]が開始されたことで状況が一変する。特に、機能的な関連を想定した“候補”遺伝子と、統合失調症との関連性を、症例対照研究で検討する「候補遺伝子関連解析」が主流となる。その“候補”として、積極的に検討されてきた遺伝子は、[[ドーパミン]]系、[[セロトニン]]系などの[[神経伝達物質]]に関わる遺伝子群や、[[神経発達障害]]仮説に関与する遺伝子群であった[http://www.szgene.org/ SchizophreniaGene]
 このように、連鎖解析の主要精神疾患への適応が行き詰まりを見せる中、統合失調症関連遺伝子を同定するための方法論は、1)[[wikipedia:ja:ヒトゲノム計画|ヒトゲノム計画]]により遺伝子配列の概要が判明したこと、また2)民族ごとのhaplotype mappingを目指した[[wikipedia:ja:国際HapMap計画|国際HapMap計画]]が開始されたことで状況が一変する。特に、機能的な関連を想定した“候補”遺伝子と、統合失調症との関連性を、症例対照研究で検討する「候補遺伝子関連解析」が主流となる。その“候補”として、積極的に検討されてきた遺伝子は、[[ドーパミン]]系、[[セロトニン]]系などの[[神経伝達物質]]に関わる遺伝子群や、[[神経発達障害]]仮説に関与する遺伝子群であった([http://www.szgene.org/ SchizophreniaGene])。


 しかし、それでも「確定的」といえる統合失調症感受性遺伝子の同定には至らず、方法論は次のステップである「[[ゲノムワイド関連解析]](GWAS)」へとさらにシフトする。
 しかし、それでも「確定的」といえる統合失調症感受性遺伝子の同定には至らず、方法論は次のステップである「[[ゲノムワイド関連解析]](GWAS)」へとさらにシフトする。
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 GWASは、既知の候補遺伝子に関連を見いださない一方、思いもよらないリスク遺伝子の同定に成功している。2008年、O'Donovanらは、Wellcome Trust Case-Control Consortium(WTCCC)のサンプルを利用し、ZNF804Aに位置するSNPがgenome-wide significance(有意水準のベンチマーク:P<5X10<sup>-8</sup>)を示したことを報告した<ref><pubmed> 18677311 </pubmed></ref>。この遺伝子の機能は現在まで明確ではないが、その後サンプル数を拡大した解析でP=10<sup>-11</sup>レベルで関連性を報告している<ref><pubmed> 20368704 </pubmed></ref>。
 GWASは、既知の候補遺伝子に関連を見いださない一方、思いもよらないリスク遺伝子の同定に成功している。2008年、O'Donovanらは、Wellcome Trust Case-Control Consortium(WTCCC)のサンプルを利用し、ZNF804Aに位置するSNPがgenome-wide significance(有意水準のベンチマーク:P<5X10<sup>-8</sup>)を示したことを報告した<ref><pubmed> 18677311 </pubmed></ref>。この遺伝子の機能は現在まで明確ではないが、その後サンプル数を拡大した解析でP=10<sup>-11</sup>レベルで関連性を報告している<ref><pubmed> 20368704 </pubmed></ref>。


 以後10個以上のGWASが報告されたが、その中でもISC<ref><pubmed> 19571811 </pubmed></ref>、MGS <ref><pubmed> 19571809 </pubmed></ref>、S-GENE<ref><pubmed> 19571808 </pubmed></ref>が行った3報の論文は、2009年にNature誌に掲載され、大きなインパクトを与えた。特に、ISCは、Polygenic Component analysisという新しい方法論を提唱し、一つのデータセットから定義された緩い基準(P<0.5など)の「リスクアレル」が、独立したデータセットの統合失調症で有意に重複していることを示した。さらに、[[双極性障害]]でもその「リスク」は重複していることも報告し、統合失調症と双極性障害の遺伝学的共通性を示唆する証左として着目される<ref><pubmed> 20118450 </pubmed></ref>。
 以後10個以上のGWASが報告されたが、その中でもISC(編集コメント:略号を御定義ください)<ref><pubmed> 19571811 </pubmed></ref>、MGS (編集コメント:略号を御定義ください)<ref><pubmed> 19571809 </pubmed></ref>、S-GENE(編集コメント:略号を御定義ください)<ref><pubmed> 19571808 </pubmed></ref>が行った3報の論文は、2009年にNature誌に掲載され、大きなインパクトを与えた。特に、ISCは、Polygenic Component analysisという新しい方法論を提唱し、一つのデータセットから定義された緩い基準(P<0.5など)の「リスクアレル」が、独立したデータセットの統合失調症で有意に重複していることを示した。さらに、[[双極性障害]]でもその「リスク」は重複していることも報告し、統合失調症と双極性障害の遺伝学的共通性を示唆する証左として着目される<ref><pubmed> 20118450 </pubmed></ref>。


 2011年に入り、多くのグループが共同して設立されたPsychiatric GWAS Consortium (PGC)は、メガ解析を行い、7個の領域でgenome-wide significanceを超える統合失調症関連遺伝子を報告している<ref><pubmed> 21926974 </pubmed></ref>。[[major histocompatibility complex]] ([[MHC]])領域は、リスクとして代表的な領域であるが、この領域が高い[[wikipedia:ja:連鎖不平衡|連鎖不平衡]]を示すという特性から、リスク遺伝子を絞り込むことは困難である。一方、PGCの結果でトップに位置づけられた新規遺伝子は、[[miR137]]をコードする領域であり、P=1.6x10<sup>-11</sup>であった。miR137は、発現を制御する[[micro RNA]]であり、特に、神経発達や成熟に関与する遺伝子の調整因子であることが判明している。
 2011年に入り、多くのグループが共同して設立されたPsychiatric GWAS Consortium (PGC)は、メガ解析を行い、7個の領域でgenome-wide significanceを超える統合失調症関連遺伝子を報告している<ref><pubmed> 21926974 </pubmed></ref>。[[主要組織適合遺伝子複合体]] ([[major histocompatibility complex]], [[MHC]])領域は、リスクとして代表的な領域であるが、この領域が高い[[wikipedia:ja:連鎖不平衡|連鎖不平衡]]を示すという特性から、リスク遺伝子を絞り込むことは困難である。一方、PGCの結果でトップに位置づけられた新規遺伝子は、[[miR137]]をコードする領域であり、P=1.6x10<sup>-11</sup>であった。miR137は、発現を制御する[[micro RNA]]であり、特に、神経発達や成熟に関与する遺伝子の調整因子であることが判明している。


== CNV(Copy Number Variation)の関与 ==
== CNV(Copy Number Variation)の関与 ==

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