「不安症」の版間の差分

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== 不安障害の下位診断名とその症状  ==
== 不安障害の下位診断名とその症状  ==


 各不安障害の概要をおおよその発症年代順に示す。なお、強迫性障害と外傷後ストレス障害は[[DSM-5]]からは不安障害の範疇から外れ独立した障害として分類されている
 各不安障害の概要をおおよその発症年代順に示す。なお、強迫性障害と外傷後ストレス障害は[[DSM-5]]からは不安障害の範疇から外れ独立した障害として分類される見込みである。


=== 分離不安  ===
=== 分離不安  ===
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=== パニック障害  ===
=== パニック障害  ===


 不意に心悸亢進、呼吸困難、死の恐怖などを主徴とするパニック発作がしばしば襲い、その発作の再発を心配する予期不安のため生活上の障害が出る。 次に述べる2障害の好発年齢はさまざまである。
 不意に心悸亢進、呼吸困難、死の恐怖などを主徴とするパニック発作がしばしば襲い、その発作の再発を心配する予期不安のため生活上の障害が出る。


 ''詳細は[[パニック障害]]の項目参照''  
 ''詳細は[[パニック障害]]の項目参照''  
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[[image:不安障害2.png|thumb|300px|'''図2.不安障害の遺伝的環境的危険因子 双生児研究の結果'''<ref name=ref100><pubmed>15699295</pubmed></ref> ]]
[[image:不安障害2.png|thumb|300px|'''図2.不安障害の遺伝的環境的危険因子 双生児研究の結果'''<ref name=ref100><pubmed>15699295</pubmed></ref> ]]


 不安障害のようなcommon diseases では、病理性の比較的小さい責任遺伝子の集積により発病する(多因子遺伝)。発症には遺伝子間の相互作用(epistasis)や環境との相互作用が重要な要素となる。不安障害の遺伝性(遺伝子による発症危険率)は20~40%と言われている<ref><pubmed> 19885930</pubmed></ref>。不安障害の第一等親では一般人口に比しその発症危険率は4~6倍高い。[[wikipedia:ja:双生児|双生児]]研究での不安障害の発症一致率は、[[wikipedia:ja:一卵性双生児|一卵性双生児]]では12~26%、[[wikipedia:ja:二卵性双生児|二卵性双生児]]では4~15%である。  
 不安障害のようなcommon diseases では、病理性の比較的小さい責任遺伝子の集積により発病する(多因子遺伝)。発症には遺伝子間の相互作用(epistasis)や環境との相互作用が重要な要素となる。不安障害の遺伝性(遺伝子による発症危険率)は20~40%と言われている<ref><pubmed> 19885930</pubmed></ref>。不安障害の第一度近親では一般人口に比しその発症危険率は4~6倍高い。[[wikipedia:ja:双生児|双生児]]研究での不安障害の発症一致率は、[[wikipedia:ja:一卵性双生児|一卵性双生児]]では12~26%、[[wikipedia:ja:二卵性双生児|二卵性双生児]]では4~15%である。  


 不安障害の双生児研究で、 パニック障害、広場恐怖、全般性不安障害に関与する因子と特定の恐怖症に関与する因子が二分されており、社交不安障害はこれら二つの因子の影響は少ない<ref name=ref100 />。この研究によれば環境的危険因子は遺伝的のそれよりも数倍高い(図2)。不安障害と関係のある[[病前性格]]が確認されている。[[内向性]]と神経質は遺伝性の傾向が強く、全般性不安障害や広場恐怖との関連性が指摘されている<ref><pubmed> 17435917</pubmed></ref>。
 不安障害の双生児研究で、 パニック障害、広場恐怖、全般性不安障害に関与する因子と特定の恐怖症に関与する因子が二分されており、社交不安障害はこれら二つの因子の影響は少ない<ref name=ref100 />。この研究によれば環境的危険因子は遺伝的のそれよりも数倍高い(図2)。不安障害と関係のある[[病前性格]]が確認されている。[[内向性]]と神経質は遺伝性の傾向が強く、全般性不安障害や広場恐怖との関連性が指摘されている<ref><pubmed> 17435917</pubmed></ref>。
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===薬物療法===
===薬物療法===
 薬物療法は原因療法ではなく、対症療法である。
 薬物療法は原因療法ではなく、対症療法である。
 
 不安全般に効果があるのは[[ベンゾジアゼピン]](BZD)系などの抗不安薬と、[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]]([[SSRI]])などの抗うつ薬である。これらは各々、[[GABA]]系、および[[セロトニン]]系の神経伝達を促進する薬物である。BZDは、作用発現が早いので初期短期間は使用する価値があるが、依存のリスクに注意が必要である。血中半減期の短いBZDは反跳性不眠などが生じやすく、依存のリスクがあるため、長期使用の場合は、血中半減期の長いBZDを用いる場合が多い。不安障害の基本薬は、むしろ[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]]([[SSRI]])である。本邦で上市されている4種類のSSRI([[フルボキサミン]]、[[パロキセチン]]、[[サートラリン]]、[[エスシタロプラム]])は、保険適用には違いはあるものの、効果には大きな違いはないことから、作用時間や副作用及び薬物相互作用の違いを考慮して処方される場合が多い。また、パニック障害の急性治療におけるプラシボに対するエフェクト・サイズはSSRIも一般の抗うつ薬も0.55で差はない<ref><pubmed> 11729014</pubmed></ref>。SSRIが[[三環系抗うつ薬]]に勝るのは副作用がやや少ないことのみである。  
 不安全般に効果があるのは[[GABA]]系と[[セロトニン]]系の神経伝達を活発にする薬物である。GABA系のエンハンサーである[[ベンゾジアゼピン]][[抗不安薬]](BZD)は作用発現が早いので初期短期間は使用する価値がある。ただし、血中半減期の長いBZDは依存の恐れはほとんどなく、長期使用に耐える。[[選択的セロトニン再取り込み阻害薬]]([[SSRI]])は不安障害の基本薬である。本邦で上市されている4種類のSSRI([[フルボキサミン]]、[[パロキセチン]]、[[サートラリン]]、[[エスシタロプラム]])は適応する疾病にも効果にも大きな違いはないので、作用時間や副作用及び薬物相互作用の違いを考慮して処方される。また、パニック障害の急性治療におけるプラシボに対するエフェクト・サイズはSSRIも一般の抗うつ薬も0.55で差はない<ref><pubmed> 11729014</pubmed></ref>。SSRIが[[三環系抗うつ薬]]に勝るのは副作用がやや少ないことのみである。  


 強迫性障害をはじめとする不安障害に、エビデンスは乏しいが、抗精神病薬が用いられる場合もある。
 強迫性障害をはじめとする不安障害に、エビデンスは乏しいが、抗精神病薬が用いられる場合もある。

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