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英語名:Phospholipase C 英語略名:PLC | 英語名:Phospholipase C 英語略名:PLC | ||
フォスフォリパーゼ C(phospholipase C、PLC)は、[[wikipedia:ja:生体膜|生体膜]]の主要成分である[[wikipedia:ja:リン脂質|リン脂質]]を[[wikipedia:ja:加水分解|加水分解]]する[[wikipedia:ja:酵素|酵素]]群(phospholipase)の中の、[[wikipedia:ja: | フォスフォリパーゼ C(phospholipase C、PLC)は、[[wikipedia:ja:生体膜|生体膜]]の主要成分である[[wikipedia:ja:リン脂質|リン脂質]]を[[wikipedia:ja:加水分解|加水分解]]する[[wikipedia:ja:酵素|酵素]]群(phospholipase)の中の、[[wikipedia:ja:グリセロール|グリセロール]]と[[wikipedia:ja:リン酸|リン酸]]の間の[[wikipedia:ja:エステル|エステル]]エステル結合を加水分解する酵素の総称である。 | ||
==活性== | ==活性== | ||
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== 分子構造による分類 == | == 分子構造による分類 == | ||
PLCは構造的にβ、γ、δ、ε、ζ、ηの6つのタイプに分類され、[[wikipedia:ja: | PLCは構造的にβ、γ、δ、ε、ζ、ηの6つのタイプに分類され、[[wikipedia:ja:哺乳動物|哺乳動物]]ではβ1-4、γ1-2、δ1,3-4、ε、ζ、η1-2の合わせて13種類のサブタイプが同定されている。また、いくつかのサブタイプについてはsplicing variantが報告されている。splicing variantの一部を除くと、すべてのPLCは酵素活性を司るXドメインとYドメインの他に、さまざまなシグナル関連物質と相互作用するPHドメイン(ζ型を除く)、Ca<sup>2+</sup>結合能を有する[[wikipedia:ja:EFハンド|EFハンド]]EFハンドモチーフおよび[[wikipedia:ja:C2ドメイン|C2ドメイン]]を共通に有する(図2)。これらの基本的なドメイン構造に加え、PLCγではSrc相同ドメインの[[wikipedia:ja:SH2ドメイン|SH2ドメイン]]および[[wikipedia:ja:SH3ドメイン|SH3ドメイン]], PLCεでは[[wikipedia:Guanine nucleotide exchange factor|RasGEF]](Ras guanine nucleotide exchange factor)様ドメインおよびRA(Ras association)ドメインなど、各タイプに特徴的なドメイン構造がみられる。 | ||
<br>[[Image:PLC-2.jpg|400px]] <br> | <br>[[Image:PLC-2.jpg|400px]] <br> | ||
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=== PLCδ === | === PLCδ === | ||
主な活性化因子は細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度上昇(1-10μM)であると考えられている。Ca<sup>2+</sup>イオンはPLCδのPHドメインとPIP<sub>2</sub>との結合を促進させるなどの作用によりPLCδを膜に移動させ酵素活性を高める。細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度上昇はPLCの下流シグナルでもあることから、膜の受容体を介して他のタイプのPLCが活性化されCa<sup>2+</sup> | 主な活性化因子は細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度上昇(1-10μM)であると考えられている。Ca<sup>2+</sup>イオンはPLCδのPHドメインとPIP<sub>2</sub>との結合を促進させるなどの作用によりPLCδを膜に移動させ酵素活性を高める。細胞内Ca<sup>2+</sup>濃度上昇はPLCの下流シグナルでもあることから、膜の受容体を介して他のタイプのPLCが活性化されCa<sup>2+</sup>濃度上昇が起こると、さらにPLCδが活性化されシグナルが増幅される、という可能性が示唆されている。また、PLCδ1については、[[トランスグルタミナーゼ]]活性を有するGTP結合蛋白質の1種[[Gh]]による活性調節が報告されている。 | ||
=== PLCε === | === PLCε === | ||
PLCεの活性化経路は多様であり、様々な[[低分子量G蛋白質]]やG蛋白質共役型受容体を介する経路が報告されている。RasファミリーのRasや[[Rap]]は[[wikipedia:ja:GTP|GTP]]依存的にPLCεのRAドメインに結合し、[[Rhoファミリー]]のRhoA、RhoB、RhoCはYドメインのPLCε固有のアミノ酸配列に結合し、それぞれPLCεを活性化する。また、β2[[アドレナリン受容体]]や[[プロスタグランジン]]E1受容体などのGs共役型受容体を介してcAMPが産生されると、[[cAMP依存性グアニンヌクレオチド交換反応促進因子]]を介してRap2Bが活性化され、それがPLCεのRAドメインに結合しPLCεを活性化する。また、PLCεは三量体G蛋白質のGα12やGβγサブユニットによっても活性化されることが報告されている。 | |||
=== PLCη === | === PLCη === | ||
2005年に発見された最も新しいタイプのPLCであり、その活性化経路については不明の点が多い。PLCη1、PLCη2ともにCa<sup>2+</sup> | 2005年に発見された最も新しいタイプのPLCであり、その活性化経路については不明の点が多い。PLCη1、PLCη2ともにCa<sup>2+</sup>に対する感受性が高く、また、PLCβ2やPLCβ3と同様に三量体G蛋白質のβγサブユニットにより活性化されることからG蛋白質共役型受容体を介する経路が示唆されている。しかし、Gβγの作用が直接的なのか間接的なのかは明らかではない。 | ||
== PLC下流シグナルの働き == | == PLC下流シグナルの働き == | ||
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=== PIP<sub>2</sub> === | === PIP<sub>2</sub> === | ||
多くの蛋白質は特定のイノシトールリン脂質(PIP<sub>2</sub>を含む)を認識するドメインを有しており、よってPIP<sub>2</sub>の濃度変化はそれらの蛋白質の機能に影響をおよぼしうる<ref><pubmed>15922587</pubmed></ref>。PIP<sub>2</sub> | 多くの蛋白質は特定のイノシトールリン脂質(PIP<sub>2</sub>を含む)を認識するドメインを有しており、よってPIP<sub>2</sub>の濃度変化はそれらの蛋白質の機能に影響をおよぼしうる<ref><pubmed>15922587</pubmed></ref>。PIP<sub>2</sub>により活性が高められることが報告されているチャネルには、[[内向き整流K<sup>+</sup>チャネル]](Kir1, Kir2, Kir3, Kir6)、N型[[電位依存性Ca<sup>2+</sup>チャネル]]、[[M電流]]を担うK<sup>+</sup>チャネル([[Mチャネル]]、KCNQ/Kv7)、[[TRP]](transient receptor potential)ファミリー(TRPV1, TRPM5, TRPM7, TRPM8)、[[リアノジン受容体]]、などがある。M1[[ムスカリン性アセチルコリン受容体]]刺激によるMチャネルの抑制は、PIP<sub>2</sub>減少によると考えられている。 | ||
=== IP<sub>3</sub> === | === IP<sub>3</sub> === |