「麻薬」の版間の差分

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サイズ変更なし 、 2013年4月7日 (日)
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 一方、[[脳幹]]部から神経線維が脊髄後角に下行し、そこで痛みの伝達を遮断する[[下行性抑制系]]の関与も知られている。下行性疼痛抑制線維として[[ノルアドレナリン]]や[[セロトニン]]を伝達物質とする仮説が一般的であるが、その他にも[[GABA]]や[[ドーパミン]]を伝達物質とする下行性疼痛抑制線維の存在も提案されている。下行性疼痛抑制系は痛みやオピオイド投与だけでなく、精神的興奮、精神的集中、恐怖といった生理応答によっても作動する。  
 一方、[[脳幹]]部から神経線維が脊髄後角に下行し、そこで痛みの伝達を遮断する[[下行性抑制系]]の関与も知られている。下行性疼痛抑制線維として[[ノルアドレナリン]]や[[セロトニン]]を伝達物質とする仮説が一般的であるが、その他にも[[GABA]]や[[ドーパミン]]を伝達物質とする下行性疼痛抑制線維の存在も提案されている。下行性疼痛抑制系は痛みやオピオイド投与だけでなく、精神的興奮、精神的集中、恐怖といった生理応答によっても作動する。  


 こうした生理状態下で中脳や延髄のMORが活性化されることにより、この下行性疼痛抑制系が賦活化する。脊髄後角においては、痛覚伝導路であるAδ、C線維の知覚神経末端と末梢からの痛覚情報を受け取る脊髄後角神経細胞の両者にMORが存在し、Aδ、C線維の末端のシナプス前終末のMORが刺激されると[[電位依存性Ca<sup>2+</sup>チャネル|電位依存性Ca2+チャネル]] (voltage-dependent Ca<sup>2+</sup> channel) が抑制されて[[シナプス前終末]]へのCa<sup>2+</sup>の流入が減少し、グルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の放出が低下する。  
 こうした生理状態下で中脳や延髄のMORが活性化されることにより、この下行性疼痛抑制系が賦活化する。脊髄後角においては、痛覚伝導路であるAδ、C線維の知覚神経末端と末梢からの痛覚情報を受け取る脊髄後角神経細胞の両者にMORが存在し、Aδ、C線維の末端のシナプス前終末のMORが刺激されると[[電位依存性Ca2+チャネル|電位依存性Ca<sup>2+</sup>チャネル]] (voltage-dependent Ca<sup>2+</sup> channel) が抑制されて[[シナプス前終末]]へのCa<sup>2+</sup>の流入が減少し、グルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の放出が低下する。  


 一方、脊髄後角細胞の細胞体や樹状突起に存在するMORが刺激されると[[K<sup>+</sup>チャネル|K+チャネル]]が開口し、K<sup>+</sup>の細胞外への流出によって脊髄後角細胞が過分極(抑制)する。こうしたシナプス前終末からのグルタミン酸等の興奮性伝達物質の放出抑制とシナプス後細胞の過分極により、脊髄後角細胞での活動電位発生が抑制され、痛覚情報が脊髄より上位中枢への痛覚伝達が遮断/抑制される。
 一方、脊髄後角細胞の細胞体や樹状突起に存在するMORが刺激されると[[K+チャネル|K<sup>+</sup>チャネル]]が開口し、K<sup>+</sup>の細胞外への流出によって脊髄後角細胞が過分極(抑制)する。こうしたシナプス前終末からのグルタミン酸等の興奮性伝達物質の放出抑制とシナプス後細胞の過分極により、脊髄後角細胞での活動電位発生が抑制され、痛覚情報が脊髄より上位中枢への痛覚伝達が遮断/抑制される。


=== がん性疼痛におけるオピオイド投与の有効性  ===
=== がん性疼痛におけるオピオイド投与の有効性  ===

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