「心身症」の版間の差分

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==心身症とは==
==心身症とは==
{| class="wikitable" style="float:right"
|+表2.心身症に相当する DSM-IV-TR の記載心身症に相当する DSM-IV-TR の記載
| 一般身体疾患に影響を与えている心理的要因 psychological factors affecting medical condition<br> ・・・[一般身体疾患を示すこと] ・・・に影響を与えている[特定の心理的要因]<br>
 ・・・[Specified Psychological Factor] Affecting<br>
 ・・・[Indicate the General Medical Condition]<br>
A. 一般身体疾患(第III軸にコード番号をつけて記録されている)が存在している。<br>
B. 心理的要因が、以下のうち1つの形で一般身体疾患に好ましくない影響を与えている。<br>
 (1)その要因が一般身体疾患の経過に影響を与えており、その心理的要因と一般身体疾患の発現、態化、<br>    または回復の遅れとの間に密接な時間的関連があることで示されている。<br>
 (2)その要因が一般身体疾患の治療を妨げている。<br>
 (3)その要因が、その人の健康にさらに危険を生じさせている。<br>
 (4)ストレス関連性の生理学的反応が、一般身体疾患の症状を誘発したり悪化させたりしている。<br><br>
▶心理的要因の内容に基づいて名称を選ぶこと(2つ以上の要因が存在している場合には、最も顕著なものを示すこと)<br>
 ・・・[一般身体疾患を示すこと]・・・に影響を与えている精神疾患<br>
<br>  (例:心筋梗塞からの回復を遅らせている大うつ病性障害のようなI軸障害)
 ・・・[一般身体疾患を示すこと]・・・に影響を与えている心理的症状<br>
<br>  (例:手術からの回復を遅らせている抑うつ症状、喘息を悪化させている不安)
 ・・・[一般身体疾患を示すこと]・・・に影響を与えているパーソナリティ蛍光または対処様式<br>
<br>  (例:手術の必要性に対する癌患者んの病的否認:心血管系疾患に関与している敵対的、心迫的行動)
 ・・・[一般身体疾患を示すこと]・・・に影響を与えている不適切な保健行動<br>
<br>  (例:食べすぎ、運動不足、危険な性行為)
 ・・・[一般身体疾患を示すこと]・・・に影響を与えているストレス関連生理学反応<br>
<br>  (例:潰瘍、高血圧、不整脈、または緊張性頭痛のストレスによる悪化)
 ・・・[一般身体疾患を示すこと]・・・に影響を与えている、他のまたは特定不能の心理的要因<br>
<br>  (例:対人関係的、文化的、または宗教的要因)
-
|}


{| class="wikitable"
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|}
|}


 心身症(psychosomatic disorder)とは、「身体症状・身体疾患において、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的・機能的障害が認められる病態」である<ref>'''日本心身医学会教育研修委員会編'''<br>心身医学の新しい診療指針<br>''心身医学, 1991. 31: p. 537-576'':1991</ref>。心身症は独立した疾患単位ではなく、病態名であり、特定の疾患、特定の診療科にしばられるものではない。この心身症の枠組みに入る疾患としては、表1<ref>'''日本線維筋痛症学会「線維筋痛症診療ガイドライン」作成委員会'''<br>線維筋痛症診療ガイドライン2013<br>''日本医事新報社'':2013</ref>にあげられるようなものがあり、病名を記載するに当たっては、例えば高血圧(心身症),十二指腸潰瘍(心身症),気管支喘息(心身症)と記載される。多軸評定を用いていた[[DSM-IV-TR]]においては、心身症は第1軸にpsychological factors affecting medical condition (身体疾患に影響を与えている心理的要因)を、第3軸には身体疾患や身体症状を記載することになっており、身体疾患に影響を与える心理的要因について詳細に述べられていた(表2)[[Image:Yoshiyamoriguchi_fig_2.png|thumb|300px|'''表2.心身症に相当する DSM-IV-TR の記載'''<br>]]。2013年に発表されたDSM-5では、多軸診断は廃止されたが、引き続き心身症はpsychological factors affecting other medical conditionsと位置づけられている。[[ICD-10]]では、F5 (”behavioural syndromes associated with physiological disturbances and physical factors 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群)”の中に、[[摂食障害]](F50)、[[wj:性機能不全|性機能不全]](F52)、他に分類される障害あるいは疾患に関連した心理的および行動的要因(F54)などであり、F54の例として、[[wj:喘息|喘息]]、[[wj:皮膚炎|皮膚炎]]と[[wj:湿疹|湿疹]]、[[wj:胃潰瘍|胃潰瘍]]、[[wj:粘液性大腸炎|粘液性大腸炎]]、[[wj:潰瘍性大腸炎|潰瘍性大腸炎]]、[[wj:じんましん|じんましん]]などがあげられているが、もちろんこの操作的定義にしばられるものではない。
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|+表2.心身症に相当する DSM-IV-TR の記載心身症に相当する DSM-IV-TR の記載
| 一般身体疾患に影響を与えている心理的要因 psychological factors affecting medical condition<br> ・・・[一般身体疾患を示すこと] ・・・に影響を与えている[特定の心理的要因]<br>
 ・・・[Specified Psychological Factor] Affecting<br>
 ・・・[Indicate the General Medical Condition]<br>
A. 一般身体疾患(第III軸にコード番号をつけて記録されている)が存在している。<br>
B. 心理的要因が、以下のうち1つの形で一般身体疾患に好ましくない影響を与えている。<br>
 (1)その要因が一般身体疾患の経過に影響を与えており、その心理的要因と一般身体疾患の発現、態化、<br>    または回復の遅れとの間に密接な時間的関連があることで示されている。<br>
 (2)その要因が一般身体疾患の治療を妨げている。<br>
 (3)その要因が、その人の健康にさらに危険を生じさせている。<br>
 (4)ストレス関連性の生理学的反応が、一般身体疾患の症状を誘発したり悪化させたりしている。<br>
 
▶心理的要因の内容に基づいて名称を選ぶこと(2つ以上の要因が存在している場合には、最も顕著なものを示すこと)<br>
 ・・・[一般身体疾患を示すこと]・・・に影響を与えている精神疾患<br>
  (例:心筋梗塞からの回復を遅らせている大うつ病性障害のようなI軸障害)<br>
 ・・・[一般身体疾患を示すこと]・・・に影響を与えている心理的症状<br>
  (例:手術からの回復を遅らせている抑うつ症状、喘息を悪化させている不安)<br>
 ・・・[一般身体疾患を示すこと]・・・に影響を与えているパーソナリティ蛍光または対処様式<br>
  (例:手術の必要性に対する癌患者んの病的否認:心血管系疾患に関与している敵対的、心迫的行動)<br>
 ・・・[一般身体疾患を示すこと]・・・に影響を与えている不適切な保健行動<br>
  (例:食べすぎ、運動不足、危険な性行為)<br>
 ・・・[一般身体疾患を示すこと]・・・に影響を与えているストレス関連生理学反応<br>
  (例:潰瘍、高血圧、不整脈、または緊張性頭痛のストレスによる悪化)<br>
 ・・・[一般身体疾患を示すこと]・・・に影響を与えている、他のまたは特定不能の心理的要因<br>
  (例:対人関係的、文化的、または宗教的要因)
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 心身症(psychosomatic disorder)とは、「身体症状・身体疾患において、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的・機能的障害が認められる病態」である<ref>'''日本心身医学会教育研修委員会編'''<br>心身医学の新しい診療指針<br>''心身医学, 1991. 31: p. 537-576'':1991</ref>。心身症は独立した疾患単位ではなく、病態名であり、特定の疾患、特定の診療科にしばられるものではない。この心身症の枠組みに入る疾患としては、表1<ref>'''日本線維筋痛症学会「線維筋痛症診療ガイドライン」作成委員会'''<br>線維筋痛症診療ガイドライン2013<br>''日本医事新報社'':2013</ref>にあげられるようなものがあり、病名を記載するに当たっては、例えば高血圧(心身症),十二指腸潰瘍(心身症),気管支喘息(心身症)と記載される。多軸評定を用いていた[[DSM-IV-TR]]においては、心身症は第1軸にpsychological factors affecting medical condition (身体疾患に影響を与えている心理的要因)を、第3軸には身体疾患や身体症状を記載することになっており、身体疾患に影響を与える心理的要因について詳細に述べられていた(表2)。2013年に発表されたDSM-5では、多軸診断は廃止されたが、引き続き心身症はpsychological factors affecting other medical conditionsと位置づけられている。[[ICD-10]]では、F5 (”behavioural syndromes associated with physiological disturbances and physical factors 生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群)”の中に、[[摂食障害]](F50)、[[wj:性機能不全|性機能不全]](F52)、他に分類される障害あるいは疾患に関連した心理的および行動的要因(F54)などであり、F54の例として、[[wj:喘息|喘息]]、[[wj:皮膚炎|皮膚炎]]と[[wj:湿疹|湿疹]]、[[wj:胃潰瘍|胃潰瘍]]、[[wj:粘液性大腸炎|粘液性大腸炎]]、[[wj:潰瘍性大腸炎|潰瘍性大腸炎]]、[[wj:じんましん|じんましん]]などがあげられているが、もちろんこの操作的定義にしばられるものではない。


 心身症について、日本心身医学会による定義(1991年)では、冒頭の定義に加え、「[[神経症]]や[[うつ病]]など他の[[精神障害]]にともなう身体症状は除外する。」という文章があるが、実際の臨床では[[神経症]]・[[うつ]]・[[不安障害]]・[[人格障害]]などの精神障害が、身体症状の背景にある例は極めて多く、これを除くのは一般臨床では非現実的で、批判も多い。この「他の精神障害に伴う身体症状を除外」したものは極めて狭義の心身症であり、現実的な心身症は、冒頭の定義にあるように、心理社会的な問題を背景にして出現する身体症状として広くとらえられている。特定のカテゴリ化した診断名をそこに当てはめるのは誤りである。
 心身症について、日本心身医学会による定義(1991年)では、冒頭の定義に加え、「[[神経症]]や[[うつ病]]など他の[[精神障害]]にともなう身体症状は除外する。」という文章があるが、実際の臨床では[[神経症]]・[[うつ]]・[[不安障害]]・[[人格障害]]などの精神障害が、身体症状の背景にある例は極めて多く、これを除くのは一般臨床では非現実的で、批判も多い。この「他の精神障害に伴う身体症状を除外」したものは極めて狭義の心身症であり、現実的な心身症は、冒頭の定義にあるように、心理社会的な問題を背景にして出現する身体症状として広くとらえられている。特定のカテゴリ化した診断名をそこに当てはめるのは誤りである。

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