「ホスファチジルイノシトール」の版間の差分

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== '''ポリホスホイノシチド結合ドメイン'''  ==
== '''ポリホスホイノシチド結合ドメイン'''  ==


 ポリホスホイノシチド結合分子は現在300以上の分子で見つかっており、ポリホスホイノシチド結合ドメインとしてPHドメインや[[wikipedia:BAR domain|BARドメイン]]などが同定されている(表1)<ref name="ref15"><pubmed>16754321</pubmed></ref>[[Image:Inositide Table1.jpg|thumb|right|250px]]。
 ポリホスホイノシチド結合分子は現在300以上の分子で見つかっており、ポリホスホイノシチド結合ドメインとしてPHドメインや[[wikipedia:BAR domain|BARドメイン]]などが同定されている(表)。
 
{|| style="float: left;" border="1" cellspacing="1" cellpadding="1"
|+ '''表 主なポリホスホイノシチド結合ドメイン'''
|-
| 結合ポリホスホイノシタイド
| 結合ドメイン
| 分子
|-
| rowspan="5" | PI(3)P
| rowspan="4" | FYVE
| Fab1p
|-
| Hrs
|-
| Pikfyve
|-
| EEA1
|-
| PX
| p40phox
|-
| PI(3)P,PI(3,5)P2
| PX
| SNX1
|-
| rowspan="3" | PI(4)P
| rowspan="3" |PH
| FAPP1
|-
| CERT
|-
| AP-1
|-
| PI(5)P
| PHD finger
| ING2
|-
| rowspan="3" |PI(3,4)P<sub>2</sub>
| rowspan="3" |PH
| TAPP1,2
|-
| Akt
|-
| PDK1
|-
| PI(3,4)P<sub>2</sub>,PI(3,5)P<sub>2</sub>
| ENTH/ANTH
| Hip1
|-
| PI(3,4)P<sub>2</sub>
| PX
| p47phox
|-
| rowspan="2" |PI(3,5)P<sub>2</sub>  
|
| Vps24p
|-
|
| Ent3p
|-
| rowspan="4" |PI(4,5)P<sub>2</sub>  
| ENTH/ANTH
| epsin1
|-
| rowspan="2" |PH
| Dynamin2
|-
| PLCδ1
|-
|
| α-actinin
|-
| rowspan="3" |PI(4,5)P<sub>2</sub>, PI(3,4,5)P<sub>3</sub>
| I-BAR
| IRSp53
|-
| EFC/F-BAR
| FBP17, CIP4
|-
| BAR
| Amphyphysin1
|-
| PI(3,4)P<sub>2</sub>, PI(3,4,5)P<sub>3</sub>
| PH
| GRP1
|-
| PI(3,4,5)P<sub>3</sub>
| PH
| Btk
|-
| rowspan="2" |PI(3,4)P<sub>2</sub>, PI(3,4,5)P<sub>3</sub>
| rowspan="2" |PH
| Akt
|-
| PDK1
|}


 これらの分子がポリホスホイノシチドと結合する様式は、静電的結合および脂質結合ドメインと脂質の特異的結合の二つに分類される。  
 これらの分子がポリホスホイノシチドと結合する様式は、静電的結合および脂質結合ドメインと脂質の特異的結合の二つに分類される。  
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 静電的結合はポリホスホイノシチドが持つ負の電荷と[[wikipedia:ja:アルギニン|アルギニン]]、[[wikipedia:ja:リジン|リジン]]などの塩基性アミノ酸が持つ正の電荷との静電気的な相互作用によるものである。例えばBARドメインは両親媒性ヘリックス構造をとり、片側に塩基性アミノ酸がかたよって配向しているが、この部分に負の電荷を持ったポリホスホイノシタイドが結合することが明らかとなっている。このBARドメインは膜の曲率を認識していることから、細胞膜のある特定の部分にのみ局在できることも明らかになっている。また、細胞骨格制御分子である[[アクチニン]]とPI(4,5)P<sub>2</sub>との相互作用などもこれにあてはまる。  
 静電的結合はポリホスホイノシチドが持つ負の電荷と[[wikipedia:ja:アルギニン|アルギニン]]、[[wikipedia:ja:リジン|リジン]]などの塩基性アミノ酸が持つ正の電荷との静電気的な相互作用によるものである。例えばBARドメインは両親媒性ヘリックス構造をとり、片側に塩基性アミノ酸がかたよって配向しているが、この部分に負の電荷を持ったポリホスホイノシタイドが結合することが明らかとなっている。このBARドメインは膜の曲率を認識していることから、細胞膜のある特定の部分にのみ局在できることも明らかになっている。また、細胞骨格制御分子である[[アクチニン]]とPI(4,5)P<sub>2</sub>との相互作用などもこれにあてはまる。  


 一方、ポリホスホイノシチドに特異的に結合するドメインはPHドメインで最初に同定され、現在では100種類以上の分子がなんらかの脂質特異的結合ドメインを持つことが明らかとなっている。しかし、同じPHドメインファミリーでもポリホスホイノシチドに対する特異性は異なる場合も多い。例えば[[wikipedia:Autophagy-related protein 101|GRP1]]のPHドメインはPI(3,4,5)P<sub>3</sub>に特異的に結合するが、一方[[wikipedia:Oxysterol binding protein|OSBP1]]のPHドメインはPI(4)Pにのみ結合する。ドメイン内のわずかなアミノ酸の違いがこのような結合特異性の違いを産むことが分かっている。そのドメイン内には塩基性のアミノ酸が並んでいる部分があり、そこで特定のポリホスホイノシチドと結合していることが多い。ドメイン全体として脂肪酸部分を含むポリホスホイノシチドがちょうど入り込むポケットのような構造をとっている。この構造がドメインを介した結合が静電的結合より特異的な原因である。  
 一方、ポリホスホイノシチドに特異的に結合するドメインはPHドメインで最初に同定され、現在では100種類以上の分子がなんらかの脂質特異的結合ドメインを持つことが明らかとなっている。しかし、同じPHドメインファミリーでもポリホスホイノシチドに対する特異性は異なる場合も多い。例えば[[wikipedia:Autophagy-related protein 101|GRP1]]のPHドメインはPI(3,4,5)P<sub>3</sub>に特異的に結合するが、一方[[wikipedia:Oxysterol binding protein|OSBP1]]のPHドメインはPI(4)Pにのみ結合する。ドメイン内のわずかなアミノ酸の違いがこのような結合特異性の違いを産むことが分かっている。そのドメイン内には塩基性のアミノ酸が並んでいる部分があり、そこで特定のポリホスホイノシチドと結合していることが多い。ドメイン全体として脂肪酸部分を含むポリホスホイノシチドがちょうど入り込むポケットのような構造をとっている。この構造がドメインを介した結合が静電的結合より特異的な原因である。
 


== '''ホスファチジルイノシトールキナーゼ'''  ==
== '''ホスファチジルイノシトールキナーゼ'''  ==

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