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=== ドナーとアクセプターの蛍光強度比を測定する方法  ===
=== ドナーとアクセプターの蛍光強度比を測定する方法  ===
ドナーおよびアクセプターの蛍光を取得後、ドナーとアクセプターの蛍光強度比が計算される。FRETが起きると、ドナーの蛍光強度が減少し、アクセプターの蛍光強度が増加する。現在、最も広く使用されている手法である。データを取得、解釈する際に注意しなければいけないポイントがある。
ドナーおよびアクセプターの蛍光を取得後、ドナーとアクセプターの蛍光強度比が計算される。FRETが起きると、ドナーの蛍光強度が減少し、アクセプターの蛍光強度が増加する。現在、最も広く使用されている手法である。データを取得、解釈する際に注意しなければいけないポイントがある。
まず、ドナーの蛍光のアクセプターチャンネルへの漏れ込みであり、SN比の減少の原因となる。改善点としては漏れ込みを極力抑える適切なバンドパスフィルターを用いることである。次に、ドナーおよびアクセプターのバックグラウンドが、FRET変化に影響を与える。サブトラクションすることで、より正しいFRET効率が得られる。次に、2分子間FRETで起きることであるが、ドナーとアクセプターの局在の違いは疑似FRETを生じる。リンカーで連結し1分子にすること、局在しているアクセプターの蛍光強度を計算することで修正することが可能である。現在、多数の遺伝子工学的に作製されたタンパク質FRETプローブにおいて、CFPとYFPのFRETペアが広範に用いられている。近年、CloverとmRuby2が開発され、より良いFRETペアであると報告されている<ref><pubmed>22961245</pubmed></ref>。
まず、ドナーの蛍光のアクセプターチャンネルへの漏れ込みであり、SN比の減少の原因となる。改善点としては漏れ込みを極力抑える適切なバンドパスフィルターを用いることである。また、ドナーおよびアクセプターのバックグラウンドが、FRET変化に影響を与える。サブトラクションすることで、より正しいFRET効率が得られる。次に、2分子間FRETで起きることであるが、ドナーとアクセプターの局在の違いは疑似FRETを生じる。リンカーで連結し1分子にすること、局在しているアクセプターの蛍光強度を計算することで修正することが可能である。現在、多数の遺伝子工学的に作製されたタンパク質FRETプローブにおいて、GFPの色彩変異体、シアン色蛍光タンパク質CFPと黄色蛍光タンパク質YFPのFRETペアが広範に用いられている。近年、CloverとmRuby2が開発され、より良いFRETペアであると報告されている<ref><pubmed>22961245</pubmed></ref>。


=== アクセプターブリーチング法 ===
=== アクセプターブリーチング法 ===
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=== ドナーの蛍光寿命を測定する方法  ===
=== ドナーの蛍光寿命を測定する方法  ===
蛍光体が励起されると、図2に示すような減衰曲線に従って蛍光を発する。蛍光寿命は、蛍光の減衰曲線の速度定数<math>k \ </math>と逆数の関係にある。 蛍光寿命は、GFPは2.5nsec、その色彩変異体,黄色蛍光タンパク質YFPでは2.9nsec、mCherryでは1.5nsecの値を取る。FRETが起きるとドナーの蛍光寿命が減少する(図4)。
蛍光体が励起されると、図2に示すような減衰曲線に従って蛍光を発する。蛍光寿命は、蛍光の減衰曲線の速度定数<math>k \ </math>と逆数の関係にある。 蛍光寿命は、GFPは2.5nsec、YFPでは2.9nsec、mCherryでは1.5nsecの値を取る。FRETが起きるとドナーの蛍光寿命が減少する(図4)。
FRETが起きると、蛍光寿命が減少する。蛍光寿命の変化を測定する方法は2つある。Time domainおよびfrequency domainである。Time domainについては、近年、データ処理速度の向上により、メガヘルツオーダーのパルス励起光によって励起された一つ一つの光子を、迅速に検出する時間相関単一光子計数法が発展してきた。励起光によって発生した一つ一つの光子が検出器まで届くまでの時間(数nsec)の確率分布が減衰曲線を形成するため、時間を横軸としてヒストグラムを作製することができる。Double exponetial fittingによって、FRETの起きている割合が算出できる。Time domainは、フーリエ変換によってfrequency domainに変換可能である。蛍光寿命プローブとして、ドナーとしてmGFP、アクセプターとしてmRFPもしくはmCherryが用いられる。FLIMの場合、アクセプターの蛍光は必要ないため、FRETのアクセプターとなるが、蛍光を発しないREACh, dark Venus, super REAChなども用いられる。蛍光寿命は、蛍光強度比測定法に比べて、蛍光の漏れ込み、アクセプターとの局在の違いなどによって生じる疑似FRETを回避できる。取得した蛍光を理論上全てデータに反映させることができるが、実際には、time domainにおいて、光子取得後、再び光子を取得する状態に戻るハードウェアのリセット時間(dead time)などがあり全ての光子を取得するには、改善の余地がある。また、秒単位の経時変化を追うためには、64by64ピクセルで画像取得されているのが現状で有り、多数のピクセルから蛍光寿命を取得するためには、処理速度の速いハードウェアが必要となる。さらに、短時間で画像を取得するためには、明るいサンプルであったほうがよい。
FRETが起きると、蛍光寿命が減少する。蛍光寿命の変化を測定する方法は2つある。Time domainおよびfrequency domainである。Time domainについては、近年、データ処理速度の向上により、メガヘルツオーダーのパルス励起光によって励起された一つ一つの光子を、迅速に検出する時間相関単一光子計数法が発展してきた。励起光によって発生した一つ一つの光子が検出器まで届くまでの時間(数nsec)の確率分布が減衰曲線を形成するため、時間を横軸としてヒストグラムを作製することができる。Double exponetial fittingによって、FRETの起きている割合が算出できる。Time domainは、フーリエ変換によってfrequency domainに変換可能である。蛍光寿命プローブとして、ドナーとしてmGFP、アクセプターとしてmRFPもしくはmCherryが用いられる。アクセプターの蛍光は必要ないため、FRETのアクセプターとなるが蛍光を発しないREACh, dark Venus, super REAChなども用いられる。蛍光寿命は、蛍光強度比測定法に比べて、蛍光の漏れ込み、アクセプターとの局在の違いなどによって生じる疑似FRETを回避できる。取得した蛍光を理論上全てデータに反映させることができるが、実際には、time domainにおいて、光子取得後、再び光子を取得する状態に戻るハードウェアのリセット時間(dead time)などがあり全ての光子を取得するには、改善の余地がある。また、秒単位の経時変化を追うためには、64by64ピクセルで画像取得されているのが現状で有り、多数のピクセルから蛍光寿命を取得するためには、処理速度の速いハードウェアが必要となる。さらに、短時間で画像を取得するためには、明るいサンプルであったほうがよい。
[[Image:FRET-図4.jpg|thumb|right|300px|<b>図4:海馬スライスCA1錐体細胞に発現させたGFPのFLIMイメージおよび減衰曲線(横軸は時間、縦軸は光子数)をBecker&Hickl社software、SPC imageにて取得した。実際には、20秒で数千個オーダーの光子を取得する。これらの光子の発生確率分布が減衰曲線を形成し、近似曲線をフィッティングさせることで蛍光寿命を取得する。</b>]]  
[[Image:FRET-図4.jpg|thumb|right|300px|<b>図4:海馬スライスCA1錐体細胞に発現させたGFPのFLIMイメージおよび減衰曲線(横軸は時間、縦軸は光子数)をBecker&Hickl社software、SPC imageにて取得した。実際には、20秒で数千個オーダーの光子を取得する。これらの光子の発生確率分布が減衰曲線を形成し、近似曲線をフィッティングさせることで蛍光寿命を取得する。</b>]]  


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