「大脳皮質の局所神経回路」の版間の差分

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 大脳皮質の局所神経回路の[[興奮性シナプス]]結合の中では、錐体細胞間のシナプス結合と、視床からの求心性神経線維から錐体細胞へのシナプス結合の性質が比較的良く知られている。  
 大脳皮質の局所神経回路の[[興奮性シナプス]]結合の中では、錐体細胞間のシナプス結合と、視床からの求心性神経線維から錐体細胞へのシナプス結合の性質が比較的良く知られている。  


 皮質の興奮性細胞間のシナプス結合様式は、近年、ペア電気生理記録法により詳細に検討され報告されている<ref name="ref10"><pubmed>12466210</pubmed></ref>。それによると、図2に示されたようなサルの皮質視覚野の層間での結合様式と同様に、4層から2/3層へシナプス結合がある。また、4層の細胞は他の4層の細胞とも結合が強い。さらに6層にも少ないながら結合している。2/3層の錐体細胞は、同じ層の中でシナプス結合を示す。さらに、5層の錐体細胞に最も強いシナプス結合で信号を送る。5層の錐体細胞は同じ層の錐体細胞と結合し、6層の錐体細胞にも信号を送る。6層の錐体細胞は、4層5層6層の錐体細胞に出力している事が報告されている。5層の錐体細胞間の結合特性はさらに解析が進んでいる。5層錐体細胞は、対側皮質へ投射するもの投射するもの(commissural cell; COM細胞)と橋核へ行くもの(corticopontine cell; CPn細胞)に分かれる。前頭皮質のCOM細胞には、対側[[線条体]]にも投射するもの(crossed-corticostriatal cell; CCS細胞)がある。5層錐体細胞投射サブタイプの間で、樹状突起形態や生理的性質が[[分化]]している(図4)。そしてこれらサブタイプの組み合わせで、それらの結合方向性、相互結合頻度、短期可塑性が異なっている。<ref name="ref11"><pubmed>16624959</pubmed></ref> <ref name="ref12"><pubmed>21753015</pubmed></ref> <ref name=ref013><pubmed>21389241</pubmed></ref> <ref name="ref13">'''川口 泰雄'''<br>大脳皮質内興奮性回路の機能分化<br>“ブレインサイエンス・レビュー 2009”(伊藤正男・川合述史編集)クバプロ、東京</ref>。  
 皮質の興奮性細胞間のシナプス結合様式は、近年、ペア電気生理記録法により詳細に検討され報告されている<ref name="ref10"><pubmed>12466210</pubmed></ref>。それによると、図2はサルの第一次視覚野で明らかにされた層間での結合様式を示す。と同様に、4層から2/3層へシナプス結合がある。また、4層の細胞は他の4層の細胞とも結合が強い。さらに6層にも少ないながら結合している。2/3層の錐体細胞は、同じ層の中でシナプス結合を示す。さらに、5層の錐体細胞に最も強いシナプス結合で信号を送る。5層の錐体細胞は同じ層の錐体細胞と結合し、6層の錐体細胞にも信号を送る。6層の錐体細胞は、4層5層6層の錐体細胞に出力している事が報告されている。5層の錐体細胞間の結合特性はさらに解析が進んでいる。5層錐体細胞は、対側皮質へ投射するもの投射するもの(commissural cell; COM細胞)と橋核へ行くもの(corticopontine cell; CPn細胞)に分かれる。前頭皮質のCOM細胞には、対側[[線条体]]にも投射するもの(crossed-corticostriatal cell; CCS細胞)がある。5層錐体細胞投射サブタイプの間で、樹状突起形態や生理的性質が[[分化]]している(図4)。そしてこれらサブタイプの組み合わせで、それらの結合方向性、相互結合頻度、短期可塑性が異なっている。<ref name="ref11"><pubmed>16624959</pubmed></ref> <ref name="ref12"><pubmed>21753015</pubmed></ref> <ref name=ref013><pubmed>21389241</pubmed></ref> <ref name="ref13">'''川口 泰雄'''<br>大脳皮質内興奮性回路の機能分化<br>“ブレインサイエンス・レビュー 2009”(伊藤正男・川合述史編集)クバプロ、東京</ref>。  


 一方、視床からの興奮性神経線維の結合解析に、[[視床皮質神経線維]]を選択的に発現する[[小胞型グルタミン酸トランスポーター]] Type 2 (VGLUT2)をマーカーとして使うことで、皮質内の視床由来神経線維入力分布が明らかとなった<ref name="ref14"><pubmed>12949784</pubmed></ref>。前頭皮質では、1層上部、4層、5層下部(5b層)に、より多くの視床皮質線維が分布している(図5)。その[[神経終末]]の大半は錐体細胞の[[棘突起]]に入力し、その棘突起の1割には[[抑制性シナプス]]が同時に入力し、視床からの興奮性信号を選択的に抑制すると考えられている<ref name=ref7 /> <ref><pubmed>23661763</pubmed></ref>。
 一方、視床からの興奮性神経線維の結合解析に、[[視床皮質神経線維]]を選択的に発現する[[小胞型グルタミン酸トランスポーター]] Type 2 (VGLUT2)をマーカーとして使うことで、皮質内の視床由来神経線維入力分布が明らかとなった<ref name="ref14"><pubmed>12949784</pubmed></ref>。前頭皮質では、1層上部、4層、5層下部(5b層)に、より多くの視床皮質線維が分布している(図5)。その[[神経終末]]の大半は錐体細胞の[[棘突起]]に入力し、その棘突起の1割には[[抑制性シナプス]]が同時に入力し、視床からの興奮性信号を選択的に抑制すると考えられている<ref name=ref7 /> <ref><pubmed>23661763</pubmed></ref>。
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