16,040
回編集
細編集の要約なし |
|||
6行目: | 6行目: | ||
</div> | </div> | ||
英語名:paraphilia 独:Paraphilie 仏:paraphilie | |||
(医学会医学用語辞典によるとparaphilliaの標準訳として性倒錯となっておりましたので、項目名を性倒錯と致しました。その他性倒錯症、性的偏移、性的倒錯、性的異常もあがっています。) | |||
{{box|text= 性倒錯とは[[wikipedia:ja:性嗜好|性嗜好]]に偏りがある状態である。[[露出障害]](Exhibitionistic Disorder)、[[フェティシズム障害]](Fetishistic Disorder)、[[窃触障害(Frotteuristic Disorder)、[[小児性愛障害]](Pedophilic Disorder)、[[性的マゾヒズム障害]](Sexual Masochism Disorder)、[[性的サディズム障害]](Sexual Sadism Disorder)、[[異性装障害]](Transvestic Disorder)、[[窃視障害]](Voyeuristic Disorder)などがある。}} | |||
(抄録をご完成ください) | |||
==性倒錯とは== | |||
性倒錯とは[[wikipedia:ja:性嗜好|性嗜好]]に偏りがある状態である。性嗜好とは[[wikipedia:ja:性的興奮|性的興奮]]を得るために、どのような好みを有しているかということである。英語名パラフィリアは、英語では、para(偏倚)、philos(愛)、ila(名詞を作る接尾語)を組み合わせてできたものである。[[精神疾患]]名としては従来、paraphilia が用いられてきたが、[[wikipedia:ja:米国精神医学会|米国精神医学会]]による[[DSM-5]]では「[[paraphilic disorder]]」となった。これは、性嗜好が一般的でないものを総称して「paraphilia」と呼び、さらにその中で、[[精神医学]]的関与を必要とするものを「paraphilic disorder」と呼ぶ、という考えである。 | |||
具体的病名としては、[[露出障害]](Exhibitionistic Disorder)、[[フェティシズム障害]](Fetishistic Disorder)、[[窃触障害(Frotteuristic Disorder)、[[小児性愛障害]](Pedophilic Disorder)、[[性的マゾヒズム障害]](Sexual Masochism Disorder)、[[性的サディズム障害]](Sexual Sadism Disorder)、[[異性装障害]](Transvestic Disorder)、[[窃視障害]](Voyeuristic Disorder)などがある。 | 具体的病名としては、[[露出障害]](Exhibitionistic Disorder)、[[フェティシズム障害]](Fetishistic Disorder)、[[窃触障害(Frotteuristic Disorder)、[[小児性愛障害]](Pedophilic Disorder)、[[性的マゾヒズム障害]](Sexual Masochism Disorder)、[[性的サディズム障害]](Sexual Sadism Disorder)、[[異性装障害]](Transvestic Disorder)、[[窃視障害]](Voyeuristic Disorder)などがある。 | ||
32行目: | 37行目: | ||
基準B:行動、性的衝動、または空想は、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域の機能における障害を引き起こしている。 | 基準B:行動、性的衝動、または空想は、臨床的に著しい苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域の機能における障害を引き起こしている。 | ||
つまり、従来とほぼ同じ異常の概念である基準Aに加えて、基準Bも満たすことで、初めて精神疾患になると規定したのである。(編集コメント:基準Aは「a. 生殖に結びつかない性行動を異常とする」でしょうか?) | |||
しかし、この診断基準は同性愛をめぐる議論と同様に、「本人が苦悩するのは、周りが異常だとレッテル張りをすることへの自然な反応ではないか」という疑問を招いた。また、同時に「性犯罪者の中には、何の苦悩も障害も抱いていないものもいるが、そういうものは除外されるのか」という批判もまた起こった。 | しかし、この診断基準は同性愛をめぐる議論と同様に、「本人が苦悩するのは、周りが異常だとレッテル張りをすることへの自然な反応ではないか」という疑問を招いた。また、同時に「性犯罪者の中には、何の苦悩も障害も抱いていないものもいるが、そういうものは除外されるのか」という批判もまた起こった。 | ||
42行目: | 47行目: | ||
基準B:その人が性的衝動を行動に移している、またはその性的衝動や空想のために、著しい苦痛または対人関係上の困難が生じている。 | 基準B:その人が性的衝動を行動に移している、またはその性的衝動や空想のために、著しい苦痛または対人関係上の困難が生じている。 | ||
と変更された。また、性的サディズムでも、同意していない人に対して性的衝動を行動に移せば基準Bを満たすこととなった。 | |||
つまり、小児性愛、窃視症、露出症、盗触症、性的サディズム(同意してない相手に対して)では行動に移せば、それぞれ精神疾患として診断が下される。いっぽうで、フェティシズム、性的マゾヒズム、服装倒錯的フェティシズムなどでは、たとえ行動に移しても、本人に苦悩や障害がない限りは精神疾患とはみなされない。この基準はDSM-5にも引き継がれている。 | つまり、小児性愛、窃視症、露出症、盗触症、性的サディズム(同意してない相手に対して)では行動に移せば、それぞれ精神疾患として診断が下される。いっぽうで、フェティシズム、性的マゾヒズム、服装倒錯的フェティシズムなどでは、たとえ行動に移しても、本人に苦悩や障害がない限りは精神疾患とはみなされない。この基準はDSM-5にも引き継がれている。 | ||
63行目: | 68行目: | ||
フェティシズム障害とは、生命のない物体(フェティッシュ fetish)や人体の一部に対してだけ強い性嗜好を有することを意味する。 | フェティシズム障害とは、生命のない物体(フェティッシュ fetish)や人体の一部に対してだけ強い性嗜好を有することを意味する。 | ||
Fetishとは、ポルトガル語のfeticoから来ており、feticoとは超自然の霊を具現し、魔力を有するお守り、魔よけといった意味である。フェティシズムの対象としては、女性のパンティー、ブラジャー、ストッキング、靴、ブーツなどの身につけるものの場合が多い。また、革、ゴム、エナメルなどの素材が対象となることもある。 | |||
フェティシズムの人は、対象物を手に取ったり、体にこすりつけたり、身にまとったり、臭いをかいだりしながらマスターベーションを行う。あるいは性的行為のときに相手にその対象物を身につけるように頼むこともある。 | フェティシズムの人は、対象物を手に取ったり、体にこすりつけたり、身にまとったり、臭いをかいだりしながらマスターベーションを行う。あるいは性的行為のときに相手にその対象物を身につけるように頼むこともある。 | ||
73行目: | 78行目: | ||
狭義の意味においては、[[窃触症]](toucherism)は見知らぬ人物の股間や乳房等の身体に触れることに強い性嗜好を有することを意味し、[[摩擦症]](frotteurism)は見知らぬ人物に性器をこすりつけることに強い性嗜好を有することを意味する。 | 狭義の意味においては、[[窃触症]](toucherism)は見知らぬ人物の股間や乳房等の身体に触れることに強い性嗜好を有することを意味し、[[摩擦症]](frotteurism)は見知らぬ人物に性器をこすりつけることに強い性嗜好を有することを意味する。 | ||
しかし、一般的にはこの両者は特に区別されずに用いられることも多く、[[DSM-5]] | しかし、一般的にはこの両者は特に区別されずに用いられることも多く、[[DSM-5]]においても「窃触障害(frotteuristic disorder)」として、両者を含んだ疾患単位となっている。 | ||
窃触症が実際に行動化される場所には、混雑した電車やバス、映画館、本屋や図書館などがある。混雑していて触りやすい、触っているのが誰だか特定されにくい、被害者の抵抗が困難、逃げやすい、あらかじめターゲットとなる相手を探しやすい、などの理由で上記の場所が好まれる。 | 窃触症が実際に行動化される場所には、混雑した電車やバス、映画館、本屋や図書館などがある。混雑していて触りやすい、触っているのが誰だか特定されにくい、被害者の抵抗が困難、逃げやすい、あらかじめターゲットとなる相手を探しやすい、などの理由で上記の場所が好まれる。 | ||
81行目: | 86行目: | ||
また、近年ではインターネットの痴漢関連のサイトを読み、性的に興奮したり、他の窃触行為のやり方を覚えたり、自己の空想や経験を掲示板に書き込むものもいる。あるいは、インターネットの掲示板や出会い系サイトで知り合った女性と同意の上で痴漢行為を行うものや、知り合った男性複数が集団となり痴漢行為を行い場合もある。 | また、近年ではインターネットの痴漢関連のサイトを読み、性的に興奮したり、他の窃触行為のやり方を覚えたり、自己の空想や経験を掲示板に書き込むものもいる。あるいは、インターネットの掲示板や出会い系サイトで知り合った女性と同意の上で痴漢行為を行うものや、知り合った男性複数が集団となり痴漢行為を行い場合もある。 | ||
窃触障害が他の性倒錯障害を伴うことは、外国の文献では高い率で認められる。しかし、これは日本では異なると筆者は考える。電車内痴漢行為を主訴とするものの場合は、他の性倒錯障害を伴うことは少ないという印象を持つ。いいかえるならば、日本では他のパラフィリア障害は伴わず、もっぱら電車内痴漢行為のみを行うものがいるということである。 | |||
===小児性愛障害=== | ===小児性愛障害=== | ||
119行目: | 124行目: | ||
===その他=== | ===その他=== | ||
その他に、電話をしてみだらなことをいうことに性嗜好を有す「[[電話わいせつ]]」(telephone scatologia)、死体との性交に性嗜好を有す「[[死体愛]]」(necrophilia)、動物との性交に性嗜好を有す「[[獣愛]]」(zoophilia)、糞便に性嗜好を有す「[[糞便愛]]」(coprophilia)、浣腸に性嗜好を有す「[[浣腸愛]]」(klismaphilia)、小便に性嗜好を有す「[[小便愛]]」(urophilia)などがある。 | その他に、電話をしてみだらなことをいうことに性嗜好を有す「[[電話わいせつ]]」(telephone scatologia)、死体との性交に性嗜好を有す「[[死体愛]]」(necrophilia)、動物との性交に性嗜好を有す「[[獣愛]]」(zoophilia)、糞便に性嗜好を有す「[[糞便愛]]」(coprophilia)、浣腸に性嗜好を有す「[[浣腸愛]]」(klismaphilia)、小便に性嗜好を有す「[[小便愛]]」(urophilia)などがある。 | ||
==治療== | |||
==病態== | |||
==疫学== | |||
==関連項目== | |||
==参考文献== |