16,040
回編集
細 (→エネルギー供給機構) |
細 (→グリア伝達物質の遊離) |
||
100行目: | 100行目: | ||
アストロサイトが[[モノアミン]]刺激によってGABAやグルタミン酸を遊離できることは、カルシウム濃度上昇の発見以前に報告されていた<ref><pubmed>3005511</pubmed></ref> <ref><pubmed>2575232</pubmed></ref>。このような神経伝達物質遊離がカルシウムの上昇によって引き起されるか、またそれによって周辺のニューロンに影響を与えることができるのかの証拠があれば、ニューロンからアストロサイトへの情報伝達ばかりではなく、アストロサイトからニューロンへの[[逆行性情報伝達]]が証明できる。この点も比較的簡単にクリアされた。アストロサイトにおけるカルシウム濃度上昇がグルタミン酸 、ATP、[[D-セリン]]などの分子を遊離できること、これらの分子が直接的にも間接的にもニューロンの活性に影響を与えることが証明されている(図7)<ref><pubmed>12927771</pubmed></ref>。 | アストロサイトが[[モノアミン]]刺激によってGABAやグルタミン酸を遊離できることは、カルシウム濃度上昇の発見以前に報告されていた<ref><pubmed>3005511</pubmed></ref> <ref><pubmed>2575232</pubmed></ref>。このような神経伝達物質遊離がカルシウムの上昇によって引き起されるか、またそれによって周辺のニューロンに影響を与えることができるのかの証拠があれば、ニューロンからアストロサイトへの情報伝達ばかりではなく、アストロサイトからニューロンへの[[逆行性情報伝達]]が証明できる。この点も比較的簡単にクリアされた。アストロサイトにおけるカルシウム濃度上昇がグルタミン酸 、ATP、[[D-セリン]]などの分子を遊離できること、これらの分子が直接的にも間接的にもニューロンの活性に影響を与えることが証明されている(図7)<ref><pubmed>12927771</pubmed></ref>。 | ||
グルタミン酸は脳内のシナプスの70%で興奮性伝達物質として使われている分子である。従って、これを遊離できることはアストロサイトから周辺のシナプスに情報を伝達できることを意味する。 | |||
もう一つ重要な分子がATPである。アストロサイトがATPを遊離できることはアストロサイト特異的培養系で、ATP測定をすることによって証明される。ATPはそのものが神経伝達物質の一つして認められており、ニューロンには7種の[[イオンチャンネル型]]の[[P2X受容体]]と8種のG-タンパク質共役型の[[P2Y受容体]]が分布していることが認められている。一方、アストロサイトにはイオンチャンネル型[[P2X受容体]]とG-タンパク質共役型の[[P2Y1]]、[[P2Y2]]、[[P2Y4]]を発現しているので、ATPに対する感受性が高く、カルシウムイメージング法でその効果を容易に確かめることができる<ref><pubmed>12420311</pubmed></ref>。 | |||
さらに、もう一つ重要な物質の遊離がある。D-セリンである。D-セリンはL-セリンから[[ | さらに、もう一つ重要な物質の遊離がある。D-セリンである。D-セリンはL-セリンから[[セリンラセミ化酵素]]によって合成され、グルタミン酸受容体のサブタイプの一つである[[NMDA型グルタミン酸受容体]]の[[コアゴニスト]]として機能する。このNMDA型グルタミン酸受容体は細胞内にカルシウム流入を引き起こし、シナプス可塑性で重要な役割を果たしている。アストロサイトはセリンラセミ化酵素を発現し、D-セリンを遊離する<ref><pubmed>9892700</pubmed></ref>。最近はニューロンもD-セリンを産生することができると報告されており、この機能がアストロサイトの特異的機能であることには疑問があるが<ref><pubmed>17663143</pubmed></ref>、グリア細胞から遊離されたD-セリンがニューロンのNMDA型グルタミン酸受容体に促進的作用を受けもっていることは確からしい。このような分子は[[グリオトランスミッター]]と呼ばれている<ref><pubmed>17006901</pubmed></ref>。 | ||
====トライパータイトシナプス==== | ====トライパータイトシナプス==== |