「テタヌス毒素」の版間の差分

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[[Image:yoshikatsuaikawa_fig_2.jpg|thumb|300px|'''図3. クロストリジウム属毒素の基質一覧'''<br>クロストリジウム属毒素であるテタヌス毒素とボツリヌス毒素について示してある]]  
[[Image:yoshikatsuaikawa_fig_2.jpg|thumb|300px|'''図3. クロストリジウム属毒素の基質一覧'''<br>クロストリジウム属毒素であるテタヌス毒素とボツリヌス毒素について示してある]]  
[[Image:yoshikatsuaikawa_fig_3.jpg|thumb|300px|'''図4. シナプトブレビンアイソフォーム内での基質特異性'''<br>]]
[[Image:yoshikatsuaikawa_fig_3.jpg|thumb|300px|'''図4. シナプトブレビンアイソフォーム内での基質特異性'''<br>]]
[[ファイル:1YVG.pdb|thumb|250px|'''図5. テタヌス毒素軽鎖の結晶構造'''<br>二量体を形成している。]]
[[ファイル:1YVG.pdb|thumb|250px|'''図5. テタヌス毒素軽鎖の結晶構造'''<br>二量体を形成している。<ref name=ref15904688 />より。]]
[[ファイル:Tetanus toxin catalytic core.png|thumb|200px|'''図6. テタヌス毒素活性中心の構造'''<br><ref name=ref15895988 />をもとに編集部作成。PyMolによるレンダリング。]]
[[ファイル:Tetanus toxin catalytic core.png|thumb|200px|'''図6. テタヌス毒素活性中心の構造'''<br><ref name=ref15895988 />をもとに編集部作成。PyMolによるレンダリング。]]
[[ファイル:1FV3.pdb|thumb|250px|'''図5. テタヌス毒素H<small>C</small>鎖の結晶構造'''<br><ref name=ref10722735 />より。]]
[[ファイル:1FV3.pdb|thumb|250px|'''図7. テタヌス毒素H<small>C</small>鎖の結晶構造'''<br><ref name=ref10722735 />より。]]
[[Image:tetanus toxin 図4.jpg|thumb|300px'''図8. テタヌス毒素の作用機序'''<br>テタヌス毒素は神経筋結合部から取り込まれ、[[逆行性輸送]]により脊髄に達し、さらにそこにシナプスを形成するシナプス前終末に移行し、そこで[[抑制性伝達物質]]の放出を抑制する。この結果[[運動ニューロン]]の[[過興奮]]を引き起こす。]]  


==テタヌス毒素とは==
==テタヌス毒素とは==
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#標的タンパク質であるVAMPの分解
#標的タンパク質であるVAMPの分解


といった4段階を介して作用する(図7)<ref><pubmed> 13678859 </pubmed></ref>。
といった4段階を介して作用する(図8)<ref><pubmed> 13678859 </pubmed></ref>。


 現在もなおテタヌス毒素の受容体については不明であるが、テタヌス毒素のHcCドメインには、2つのガングリオシド結合部位がこれまでに同定され、ポリシアロ[[wikipedia:ja:ガングリオシド|ガングリオシド]]分子と糖タンパク質にそれぞれ結合することが考えられている。実際にテタヌス毒素は[[wikipedia:ja:GPI|GPI]]-アンカー型糖タンパク質と[[wikipedia:ja:脂質ラフト|脂質ラフト]]に結合する。図4に示したように、運動神経終末での[[形質膜]]上に発現する受容体を介した[[wikipedia:ja:エンドサイトーシス|エンドサイトーシス]]により取り込まれる[[wikipedia:ja:ボツリヌストキシン|ボツリヌストキシン]]とは異なり、テタヌス毒素は[[wikipedia:ja:脂質ラフト|脂質ラフト]]や[[wikipedia:ja:ガングリオシド|ガングリオシド]]であるGD1bを含む脂質タンパク質受容体複合体に結合する[[wikipedia:ja:クラスリン|クラスリン]]依存的なエンドサイトーシスにより内部に入る。[[wikipedia:ja:クラスリン|クラスリン]]被覆小胞によりいったん取り込まれたテタヌス毒素は、神経中枢の神経細胞体へ逆行性に運ばれ、さらに[[wikipedia:ja:シナプス|シナプス]]を越えて高次神経細胞の[[wikipedia:ja:シナプス|シナプス]]前部に到達する過程(Transcytosis)にHcが関与している。標識されたHcは取り込まれた後も中性を保ったコンパートメントで細胞体へと逆行性に運搬され、運動神経の[[wikipedia:ja:樹状突起|樹状突起]]に集積される。BDNFや[[GDNF]]などの[[wikipedia:ja:神経栄養因子|神経栄養因子]]と比較すると、運搬速度や[[wikipedia:ja:樹状突起|樹状突起]]への集積速度は同じ(1 μm/sec)であるが、[[wikipedia:ja:シナプス|シナプス]]を越えて次の[[wikipedia:ja:シナプス|シナプス]]前部への移行はHcの方がほぼ倍の速度で行われることが明らかにされた。[[Image:tetanus toxin 図4.jpg|thumb|300px]]
 現在もなおテタヌス毒素の受容体については不明であるが、テタヌス毒素のHcCドメインには、2つのガングリオシド結合部位がこれまでに同定され、ポリシアロ[[wikipedia:ja:ガングリオシド|ガングリオシド]]分子と糖タンパク質にそれぞれ結合することが考えられている。実際にテタヌス毒素は[[wikipedia:ja:GPI|GPI]]-アンカー型糖タンパク質と[[wikipedia:ja:脂質ラフト|脂質ラフト]]に結合する。図4に示したように、運動神経終末での[[形質膜]]上に発現する受容体を介した[[wikipedia:ja:エンドサイトーシス|エンドサイトーシス]]により取り込まれる[[wikipedia:ja:ボツリヌストキシン|ボツリヌストキシン]]とは異なり、テタヌス毒素は[[wikipedia:ja:脂質ラフト|脂質ラフト]]や[[wikipedia:ja:ガングリオシド|ガングリオシド]]であるGD1bを含む脂質タンパク質受容体複合体に結合する[[wikipedia:ja:クラスリン|クラスリン]]依存的なエンドサイトーシスにより内部に入る。[[wikipedia:ja:クラスリン|クラスリン]]被覆小胞によりいったん取り込まれたテタヌス毒素は、神経中枢の神経細胞体へ逆行性に運ばれ、さらに[[wikipedia:ja:シナプス|シナプス]]を越えて高次神経細胞の[[wikipedia:ja:シナプス|シナプス]]前部に到達する過程(Transcytosis)にHcが関与している。標識されたHcは取り込まれた後も中性を保ったコンパートメントで細胞体へと逆行性に運搬され、運動神経の[[wikipedia:ja:樹状突起|樹状突起]]に集積される。BDNFや[[GDNF]]などの[[wikipedia:ja:神経栄養因子|神経栄養因子]]と比較すると、運搬速度や[[wikipedia:ja:樹状突起|樹状突起]]への集積速度は同じ(1 μm/sec)であるが、[[wikipedia:ja:シナプス|シナプス]]を越えて次の[[wikipedia:ja:シナプス|シナプス]]前部への移行はHcの方がほぼ倍の速度で行われることが明らかにされた。


==関連項目  ==
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