「シナプシン」の版間の差分

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== リン酸化とその影響 ==
== リン酸化とその影響 ==
[[ファイル:Yokoyamagata Fig 2.jpg|サムネイル|右|図2:シナプシンIの主なリン酸化部位とそれぞれに対応するプロテインキナーゼ、フォスファターゼ。site 1はシナプシン各アイソフォームに共通、site 2-7はシナプシンIに特異的。CaMKI,Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼI;CaMKII,Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII;[[cdk5]],サイクリン依存性キナーゼ5;MAPK,ERK1/2-MAPキナーゼ;PKA,プロテインキナーゼーA,cAMP依存性プロテインキナーゼ;PrP2A,プロテインフォスファターゼ2A;PrP2B,プロテインフォスファターゼ2B,カルシニューリン。(Yamagata, 2003より許可を得て改変引用)]]
[[ファイル:Yokoyamagata Fig 2.jpg|サムネイル|右|400px|'''図2:シナプシンIの主なリン酸化部位とそれぞれに対応するプロテインキナーゼ、フォスファターゼ'''<br>Site 1はシナプシン各アイソフォームに共通、site 2-7はシナプシンIに特異的。CaMKI,Ca<sup>2+</sup>/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼI;CaMKII,Ca<sup>2+</sup>/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII;[[cdk5]],サイクリン依存性キナーゼ5;MAPK,ERK1/2-MAPキナーゼ;PKA,プロテインキナーゼーA,cAMP依存性プロテインキナーゼ;PrP2A,プロテインフォスファターゼ2A;PrP2B,プロテインフォスファターゼ2B,カルシニューリン。(Yamagata, 2003より許可を得て改変引用)]]
 各アイソフォームに共通のPKA/CaMKIによるsite 1のリン酸化は、シナプシンのシナプス小胞膜への結合を阻害し、シナプス小胞から離れやすくする(Greengard, 1993; Hilfiker, 1999; Gitler, 2009; Cesca, 2010)。
 各アイソフォームに共通のPKA/CaMKIによるsite 1のリン酸化は、シナプシンのシナプス小胞膜への結合を阻害し、シナプス小胞から離れやすくする(Greengard, 1993; Hilfiker, 1999; Gitler, 2009; Cesca, 2010)。


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== 機能 ==
== 機能 ==
[[ファイル:Yokoyamagata Fig 3.jpg|サムネイル|右|図3:神経終末におけるシナプシンの役割。左は野生型(WT)、右はシナプシンI/II/IIIトリプルノックアウトマウス(TKO)のシナプス前終末の模式図。シナプシン(橙色)はシナプス小胞に2価性に結合し、小胞の可動性を制限し安定化することにより、集合体としての予備のプールの形成に必須であると考えられる(左図)。シナプシンI/II/III TKOでは、予備のプールのシナプス小胞の可動性が高まり、集合体としての構造が崩れてしまう(右図)。予備のプールの維持・安定化は、連続刺激の際に放出可能なシナプス小胞を動員するために重要な役割を果たすと考えられる。但し、シナプシン以外にも、シナプス小胞の可動性を制限し、固定化に貢献する分子が存在する可能性がある(青色)。]]
[[ファイル:Yokoyamagata Fig 3.jpg|サムネイル|右|400px|'''図3:神経終末におけるシナプシンの役割'''<br>左は野生型(WT)、右はシナプシンI/II/IIIトリプルノックアウトマウス(TKO)のシナプス前終末の模式図。シナプシン(橙色)はシナプス小胞に2価性に結合し、小胞の可動性を制限し安定化することにより、集合体としての予備のプールの形成に必須であると考えられる(左図)。シナプシンI/II/III TKOでは、予備のプールのシナプス小胞の可動性が高まり、集合体としての構造が崩れてしまう(右図)。予備のプールの維持・安定化は、連続刺激の際に放出可能なシナプス小胞を動員するために重要な役割を果たすと考えられる。但し、シナプシン以外にも、シナプス小胞の可動性を制限し、固定化に貢献する分子が存在する可能性がある(青色)。]]
=== シナプス小胞の予備のプールの維持・安定化 ===
=== シナプス小胞の予備のプールの維持・安定化 ===
 シナプシンI、II、IIIの単体、ダブル、トリプルノックアウトマウス(KO、DKO、TKO)が作製されたが、それらの脳の構造や形態には大きな異常が認められないことから、シナプシンは正常な脳の発達には必ずしも必要ではないと考えられる(Gitler, 2009;Khvotchev, 2009)。
 シナプシンI、II、IIIの単体、ダブル、トリプルノックアウトマウス(KO、DKO、TKO)が作製されたが、それらの脳の構造や形態には大きな異常が認められないことから、シナプシンは正常な脳の発達には必ずしも必要ではないと考えられる(Gitler, 2009;Khvotchev, 2009)。