「シナプシン」の版間の差分

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=== リン酸化によるシナプス小胞の動態の制御 ===
=== リン酸化によるシナプス小胞の動態の制御 ===


 従来、脱分極刺激により、シナプシンの大部分がシナプス小胞から離れることが、カエルの神経筋シナプスやラットのシナプトソーム等で観察されていた(Greengard, 1993; Hilfiger, 1999)。さらに、蛍光ラベルしたシナプシンIaを海馬培養神経細胞に発現させた実験系でも、連続刺激によってシナプシンIがシナプス部から拡散するのが観察されている(Chi, 2001)。このシナプシンIの拡散のスピードは、CaMKII(site 2/3)あるいはPKA(site 1)によるリン酸化部位を非リン酸化型に変異させると遅くなり、またこのとき、シナプス小胞の[[開口放出]]のスピードも遅くなった。逆に、シナプシンI/II DKOの海馬培養神経細胞では、連続刺激によるシナプス小胞の開口放出が速くなっており、これらに非リン酸化型のシナプシンIaを発現させると、放出のスピードが遅くなった。これらの結果から、シナプシンは連続刺激の際のシナプス小胞の動態を抑制する調節因子として働き、その機能はリン酸化によってさらに調節されているものと考えられる。
 従来、脱分極刺激により、シナプシンの大部分がシナプス小胞から離れることが、カエルの神経筋シナプスやラットのシナプトソーム等で観察されていた<ref name=ref3 />, <ref name=ref4 />。さらに、蛍光ラベルしたシナプシンIaを海馬培養神経細胞に発現させた実験系でも、連続刺激によってシナプシンIがシナプス部から拡散するのが観察されている<ref name=ref8><pubmed> 11685225 </pubmed ></ref>。このシナプシンIの拡散のスピードは、CaMKII(site 2/3)あるいはPKA(site 1)によるリン酸化部位を非リン酸化型に変異させると遅くなり、またこのとき、シナプス小胞の[[開口放出]]のスピードも遅くなった。逆に、シナプシンI/II DKOの海馬培養神経細胞では、連続刺激によるシナプス小胞の開口放出が速くなっており、これらに非リン酸化型のシナプシンIaを発現させると、放出のスピードが遅くなった。これらの結果から、シナプシンは連続刺激の際のシナプス小胞の動態を抑制する調節因子として働き、その機能はリン酸化によってさらに調節されているものと考えられる。
 site 1、site 2/3以外にも、ERK1/2-MAPK・カルシニューリンによるsite 4/5、6のリン酸化・脱リン酸化がシナプス小胞の動態を調節するとされるなど、実際の生体内では、複数のプロテインキナーゼ・フォスファターゼが、複雑に絡み合って制御を行っていると考えられる。
 site 1、site 2/3以外にも、ERK1/2-MAPK・カルシニューリンによるsite 4/5、6のリン酸化・脱リン酸化がシナプス小胞の動態を調節するとされるなど、実際の生体内では、複数のプロテインキナーゼ・フォスファターゼが、複雑に絡み合って制御を行っていると考えられる。


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