「病識」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
1,514 バイト追加 、 2014年10月12日 (日)
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
10行目: 10行目:
同義語: 疾病認識、障害認識、病覚、attitudes about illness、awareness of illness
同義語: 疾病認識、障害認識、病覚、attitudes about illness、awareness of illness


{{box|text=
{{box|text= クレペリンが早発性痴呆について記載したときにすでに、疾患の重症度について自覚されないことが典型的であると指摘していた。WHOによると[[統合失調症]]と診断された者のうち病識の欠如が97% に認められたとされる。池淵は、「精神障害によってもたらされる何らかの変化の[[気づき]]」つまり主観的な変化の体験の自覚をひろく障害認識と呼び、障害認識についてそれが医学的に妥当であるかどうかを客観的評価したものを病識と呼んだ。障害認識や病識と専門家の認知に乖離が生ずる時に病識不十分、もしくは病識欠如と評価される。また器質的障害でも、主に[[左半身麻痺]]の人において、「[[麻痺]]があたかもないように振るまったり、麻痺の存在に関心を示さない」現象が観察されている。病識欠如の成因として[[認知機能障害]]を想定することが近年行われるようになっている。治療に伴い、ほかの精神症状が改善してもしばしば病識が一緒に改善しないことがあるなど、病識欠如は治療抵抗性であり、予後の悪さとも関連性が高い。病識は多要因であり、成因も複数であることが考えられるため、個々の症例での丁寧なアセスメントにそって治療的アプローチを組み立てていくことが必要でる。}}
 
==病識とは==
 病識の定義としては、[[wikipedia:JA:ヤスパース|Jaspers]]<ref name=ref1>'''Jaspers,K.(内村祐之、西丸四方、島崎敏樹、岡田敬蔵訳)'''<br>精神病理学総論<br>''岩波書店''、東京、1953</ref>の定義「人が(疾病についての)自己の体験に対し、観察し判断しながら立ち向かうことを疾病意識とし、そのうちの”正しい構えの理想的なもの”が病識とされる」(筆者による要約)や、Lewis<ref>'''Lewis, A.'''<br>The psychopathology of insight<br>''J Medical Phychology:'' 1934, 14:332-348</ref>の定義「自己の中におこった疾病による変化への正確な態度であり、直接知覚できるもの(変化が起こっている)と、二次的なデータに基づくもの(変化があるに違いない)がある」などがよく知られている。林<ref>'''林直樹'''<br>疾病認識の評価<br>''精リハ誌:'' 2001, 5:102-105</ref>はJaspersの定義にそって、患者一般の側から見た疾病認識がまずあり、その一部として病識(精神医学の立場から見た評価)があることを指摘した。Markovaら<ref><pubmed>1617369</pubmed></ref>は、病識はself-knowledge(自己に影響を与える事柄についての知識)の一部であるので、単に精神障害についての知識や罹患したことに関わる事実の知識があるだけでは不十分で、外界および内界からの情報によって自己全体に与える影響が組み立てられるとしている。
 病識の定義としては、[[wikipedia:JA:ヤスパース|Jaspers]]<ref name=ref1>'''Jaspers,K.(内村祐之、西丸四方、島崎敏樹、岡田敬蔵訳)'''<br>精神病理学総論<br>''岩波書店''、東京、1953</ref>の定義「人が(疾病についての)自己の体験に対し、観察し判断しながら立ち向かうことを疾病意識とし、そのうちの”正しい構えの理想的なもの”が病識とされる」(筆者による要約)や、Lewis<ref>'''Lewis, A.'''<br>The psychopathology of insight<br>''J Medical Phychology:'' 1934, 14:332-348</ref>の定義「自己の中におこった疾病による変化への正確な態度であり、直接知覚できるもの(変化が起こっている)と、二次的なデータに基づくもの(変化があるに違いない)がある」などがよく知られている。林<ref>'''林直樹'''<br>疾病認識の評価<br>''精リハ誌:'' 2001, 5:102-105</ref>はJaspersの定義にそって、患者一般の側から見た疾病認識がまずあり、その一部として病識(精神医学の立場から見た評価)があることを指摘した。Markovaら<ref><pubmed>1617369</pubmed></ref>は、病識はself-knowledge(自己に影響を与える事柄についての知識)の一部であるので、単に精神障害についての知識や罹患したことに関わる事実の知識があるだけでは不十分で、外界および内界からの情報によって自己全体に与える影響が組み立てられるとしている。


24行目: 26行目:


 池淵ら<ref>'''池淵恵美、安西信雄、米田衆介ほか'''<br>精神分裂病の病識に影響を与える要員について<br>''日本社会精神医学雑誌:'' 2000, 9:153-162</ref>は、[[ICD-10]]によって統合失調症と診断された31例(社会復帰病棟に入院中の慢性例)を対象に、複数の尺度による評価を試み、3因子(治療遵守と疾病の認識因子、服薬理由の因子、精神症状認識の因子)を抽出した。
 池淵ら<ref>'''池淵恵美、安西信雄、米田衆介ほか'''<br>精神分裂病の病識に影響を与える要員について<br>''日本社会精神医学雑誌:'' 2000, 9:153-162</ref>は、[[ICD-10]]によって統合失調症と診断された31例(社会復帰病棟に入院中の慢性例)を対象に、複数の尺度による評価を試み、3因子(治療遵守と疾病の認識因子、服薬理由の因子、精神症状認識の因子)を抽出した。
}}


== 歴史的背景 ==
== 歴史的背景 ==

案内メニュー