「カルモジュリン」の版間の差分

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|colspan="2"|[[熱ショックタンパク質70/90]]||<ref><pubmed> 3782106 </pubmed></ref><ref><pubmed>2154682 </pubmed></ref>
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 こうした様々なタンパク質と結合し、その活性や機能を制御することがカルモジュリンの機能であり、脳や神経細胞においては、神経突起形成<ref><pubmed> 12873385 </pubmed></ref><ref><pubmed>17553424  </pubmed></ref>、軸索伸展<ref><pubmed>15363394 </pubmed></ref><ref><pubmed>19864584 </pubmed></ref><ref><pubmed>24849351  </pubmed></ref>、シナプスの形成<ref><pubmed> 18184567 </pubmed></ref>、シナプス可塑性<ref><pubmed> 2847049</pubmed></ref><ref><pubmed>2549423 </pubmed></ref><ref><pubmed>1378648 </pubmed></ref><ref><pubmed> 7515479 </pubmed></ref><ref><pubmed>10200317 </pubmed></ref>とその誘導に関わる細胞内シグナルの伝達<ref><pubmed>  8980227</pubmed></ref><ref><pubmed>  10731148</pubmed></ref><ref><pubmed> 19295602</pubmed></ref><ref><pubmed> 23602566 </pubmed></ref><ref><pubmed> 26139370 </pubmed></ref>、記憶・学習<ref><pubmed> 25277455 </pubmed></ref>をはじめ、様々な機能の中心的役割を果たす。また、[[リン酸化]]<ref><pubmed>6621532</pubmed></ref>や[[糖化]]<ref><pubmed>2541779</pubmed></ref>、[[メチル化]]<ref name=ref10 />など[[翻訳後修飾]]を受け、機能を調節することが知られている<ref><pubmed>1314563</pubmed></ref><ref><pubmed>9572870</pubmed></ref>。
 こうした様々なタンパク質と結合し、その活性や機能を制御することがカルモジュリンの機能であり、脳や神経細胞においては、神経突起形成<ref><pubmed> 12873385 </pubmed></ref><ref><pubmed>17553424  </pubmed></ref>、軸索伸展<ref><pubmed>15363394 </pubmed></ref><ref><pubmed>19864584 </pubmed></ref><ref><pubmed>24849351  </pubmed></ref>、シナプスの形成<ref><pubmed> 18184567 </pubmed></ref>、シナプス可塑性<ref><pubmed> 2847049</pubmed></ref><ref><pubmed>2549423 </pubmed></ref><ref><pubmed>1378648 </pubmed></ref><ref><pubmed> 7515479 </pubmed></ref><ref><pubmed>10200317 </pubmed></ref><ref><pubmed>15190253 </pubmed></ref>とその誘導に関わる細胞内シグナルの伝達<ref><pubmed>  8980227</pubmed></ref><ref><pubmed>  10731148</pubmed></ref><ref><pubmed> 19295602</pubmed></ref><ref><pubmed> 23602566 </pubmed></ref><ref><pubmed> 26139370 </pubmed></ref>、記憶・学習<ref><pubmed> 1321493</pubmed></ref><ref><pubmed>10482244</pubmed></ref><ref><pubmed>9452388 </pubmed></ref><ref><pubmed>11733061 </pubmed></ref><ref><pubmed> 25277455 </pubmed></ref>をはじめ、様々な機能の中心的役割を果たす。また、[[リン酸化]]<ref><pubmed>6621532</pubmed></ref>や[[糖化]]<ref><pubmed>2541779</pubmed></ref>、[[メチル化]]<ref name=ref10 />など[[翻訳後修飾]]を受け、機能を調節することが知られている<ref><pubmed>1314563</pubmed></ref><ref><pubmed>9572870</pubmed></ref>。


カルモジュリンは、そのターゲットとなるCaMKII、カルシニューリン、アデニル酸シクラーゼなどの下流のエフェクター酵素の制御を通してのシナプス可塑性や記憶・学習に対する機能が指摘されてきた。また、ターゲットは多数あるが、神経入力のパターンに応じて異なる酵素を活性化し、状況に応じて適切な神経細胞機能を発現していると考えられている。例えば、海馬CA1領域における長期増強はNMDA受容体の活性化によりCa<sup>2+</sup>が流入し、カルモジュリンと結合することで下流の酵素を活性化して引き起こされる。CaMKIIαのノックアウトマウスにおいては、海馬のシェーファー側枝からCA1錐体細胞への長期増強が減弱することが報告されており<ref><pubmed>1378648 </pubmed></ref>、また海馬依存的な空間学習に異常がみられることが報告されている<ref><pubmed> 1321493</pubmed></ref>。同様にカルモジュリンによって活性化されるアデニル酸シクラーゼ1、8やカルシニューリンもシナプス可塑性や記憶・学習に関与することが遺伝子改変動物などの研究によって報告されている<ref><pubmed>10482244</pubmed></ref><ref><pubmed>11733061 </pubmed></ref>。また、最近ではCa<sup>2+</sup>流入に伴うスパインの構造的可塑性の誘導に関わることや<ref><pubmed>15190253 </pubmed></ref>、この過程における種々の酵素の活性化が報告されている。
カルモジュリンは、そのターゲットとなるCaMKII、カルシニューリン、アデニル酸シクラーゼなどの下流のエフェクター酵素の制御を通してのシナプス可塑性や記憶・学習に対する機能が指摘されてきた。また、ターゲットは多数あるが、神経入力のパターンに応じて異なる酵素を活性化し、状況に応じて適切な神経細胞機能を発現していると考えられている。例えば、海馬CA1領域における長期増強はNMDA受容体の活性化によりCa<sup>2+</sup>が流入し、カルモジュリンと結合することで下流の酵素を活性化して引き起こされる。CaMKIIαのノックアウトマウスにおいては、海馬のシェーファー側枝からCA1錐体細胞への長期増強が減弱することが報告されており<ref><pubmed>1378648 </pubmed></ref>、また海馬依存的な空間学習に異常がみられることが報告されている<ref><pubmed> 1321493</pubmed></ref>。また、最近ではCa<sup>2+</sup>流入に伴うスパインの構造的可塑性の誘導に関わることや、この過程における種々の酵素の活性化が報告されている。また、同様にカルモジュリンによって活性化されるアデニル酸シクラーゼ1、8やカルシニューリンもシナプス可塑性や記憶・学習に関与することが遺伝子改変動物などの研究によって報告されている。


==サブファミリー==
==サブファミリー==
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==カルモジュリンを用いたCa<sup>2+</sup>インディケーター==
==カルモジュリンを用いたCa<sup>2+</sup>インディケーター==
 カルモジュリンがCa<sup>2+</sup>依存的にターゲットペプチドと相互作用することを用いて、様々な[[Genetically-encoded Ca2+ indicator|Genetically-encoded Ca<sup>2+</sup> indicator]]が開発されている。大まかには、2色の異なる色の[[蛍光タンパク質]]間の[[蛍光共鳴エネルギー移動]]を用いてその2色の蛍光強度の比をレシオメトリック測定することが可能な[[FRET]]センサー([[Cameleon]]など)と<ref><pubmed> 9148946 </pubmed></ref><ref><pubmed> 9278050 </pubmed></ref>、[[円順列変異]][[GFP]]を用いてその蛍光強度からCa<sup>2+</sup>濃度を測定する緑色蛍光プローブ([[G-CaMP]]など)がある<ref><pubmed> 11175727 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11248055 </pubmed></ref>。
 カルモジュリンがCa<sup>2+</sup>依存的にターゲットペプチドと相互作用することを用いて、様々な[[Genetically-encoded Ca2+ indicator|Genetically-encoded Ca<sup>2+</sup> indicator]]が開発されている。大まかには、2色の異なる色の[[蛍光タンパク質]]間の[[蛍光共鳴エネルギー移動]]を用いてその2色の蛍光強度の比をレシオメトリック測定することが可能な[[FRET]]センサー([[Cameleon]]など)と<ref><pubmed> 9148946 </pubmed></ref><ref><pubmed> 9278050 </pubmed></ref>、[[円順列変異]][[GFP]]を用いてその蛍光強度からCa<sup>2+</sup>濃度を測定する緑色蛍光プローブ([[G-CaMP]]など)がある<ref><pubmed> 11175727 </pubmed></ref><ref><pubmed> 11248055 </pubmed></ref>。[[Cameleon]]の場合、Ca2+と結合したカルモジュリンがそのターゲットのM13ペプチドと結合することでコンフォメーションが変化し、2色の蛍光タンパク質の間での[[蛍光共鳴エネルギー移動]]の効率が変わることを利用している。一方で、[[G-CaMP]]の場合には、カルモジュリンとM13ペプチドの結合によるコンフォメーション変化が発色団周囲の環境を変化させることにより、蛍光強度が変化することを利用している。


 2000年代以降、これらの改良が進んでおり、変化率を大きくしたものや単一活動電位を記録できる高感度のもの、キネティクスが速いもの、さまざまな色のインディケーターなどが開発され、生きた動物個体の中での神経細胞やシナプスの活動を長期間観察するのに用いられている<ref><pubmed>15247428 </pubmed></ref><ref><pubmed>16720273 </pubmed></ref><ref><pubmed>19160514 </pubmed></ref><ref><pubmed>19160515 </pubmed></ref><ref><pubmed>19898485 </pubmed></ref><ref><pubmed>21903779 </pubmed></ref><ref><pubmed>23868258 </pubmed></ref><ref><pubmed>24390440 </pubmed></ref><ref><pubmed>25419959</pubmed></ref><ref><pubmed>25678659</pubmed></ref>。
 2000年代以降、これらの改良が進んでおり、変化率を大きくしたものや単一活動電位を記録できる高感度のもの、キネティクスが速いもの、さまざまな色のインディケーターなどが開発され、生きた動物個体の中での神経細胞やシナプスの活動を長期間観察するのに用いられている<ref><pubmed>15247428 </pubmed></ref><ref><pubmed>16720273 </pubmed></ref><ref><pubmed>19160514 </pubmed></ref><ref><pubmed>19160515 </pubmed></ref><ref><pubmed>19898485 </pubmed></ref><ref><pubmed>21903779 </pubmed></ref><ref><pubmed>23868258 </pubmed></ref><ref><pubmed>24390440 </pubmed></ref><ref><pubmed>25419959</pubmed></ref><ref><pubmed>25678659</pubmed></ref>。
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