「脳磁法」の版間の差分

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==超伝導量子干渉計==
==超伝導量子干渉計==
 通常脳の神経活動に伴う磁界変化は非常に微弱であるため、[[wikipedia:ja:超伝導量子干渉計|超伝導量子干渉計]]([[wikipedia:SQUIDs|SQUIDs]])を利用した高感度磁気センサーを用いる。記録の対象であるヒト脳磁場信号の大きさが10<sup>-14</sup> T(テスラ)から10<sup>-12</sup> T程度であるのに対して、例えば[[wikipedia:ja:地磁気|地磁気]]は10<sup>-5</sup> Tの大きさを有しているため外部環境磁場ノイズを軽減することが重要である('''図2''')。そのため、脳磁計は[[wikipedia:ja:透磁率|透磁率]]の大きい[[wikipedia:ja:合金|合金]]([[wikipedia:ja:パーマロイ|パーマロイ]])等で出来た磁気シールドルーム内に設置される。超伝導量子干渉計は常に[[wikipedia:ja:液体ヘリウム|液体ヘリウム]]で冷却する必要があるため、高性能の断熱容器(デュワー)内に格納されている。
 通常脳の神経活動に伴う磁界変化は非常に微弱であるため、[[wikipedia:ja:超伝導量子干渉計|超伝導量子干渉計]]([[wikipedia:SQUIDs|SQUIDs]])を利用した高感度磁気センサーを用いる。記録の対象であるヒト脳磁場信号の大きさが<math>10^{-14} \mathrm{T}</math>(テスラ)から<math>10^{-12} \mathrm{T}</math>程度であるのに対して、例えば[[wikipedia:ja:地磁気|地磁気]]<math>10^{-5} \mathrm{T}</math>の大きさを有しているため外部環境磁場ノイズを軽減することが重要である('''図2''')。そのため、脳磁計は[[wikipedia:ja:透磁率|透磁率]]の大きい[[wikipedia:ja:合金|合金]]([[wikipedia:ja:パーマロイ|パーマロイ]])等で出来た磁気シールドルーム内に設置される。超伝導量子干渉計は常に[[wikipedia:ja:液体ヘリウム|液体ヘリウム]]で冷却する必要があるため、高性能の断熱容器(デュワー)内に格納されている。


 脳磁場を検出コイルにはその形状から大きく分けてマグネトメーターとグラジオメーターがある('''図3''')。グラジオメーターに関しては軸方向型と平面方向型に大別できる。
 脳磁場を検出コイルにはその形状から大きく分けてマグネトメーターとグラジオメーターがある('''図3''')。グラジオメーターに関しては軸方向型と平面方向型に大別できる。
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==脳波との比較==
==脳波との比較==
 ヒトの脳機能を非侵襲的に計測する他の方法として、頭皮上に装着された頭皮上電極から記録される「[[脳波]](electroencephalography: EEG)」がある。脳波は脳磁法と同じように非常に高い時間分解能で脳活動を計測することができるが、神経活動を導電率の異なる[[脳]]、[[脊髄液]]、[[骨]]、[[皮膚]]などを通して観察することになる。この信号源と記録電極の間にある[[sp:Volume_conduction|容積導体]](volume conduction)は不均一であり、脳波の空間分解能には限界がある。
 ヒトの脳機能を非侵襲的に計測する他の方法として、頭皮上に装着された頭皮上電極から記録される「[[脳波]](electroencephalography: EEG)」がある。脳波は脳磁法と同じように非常に高い時間分解能で脳活動を計測することができるが、神経活動を導電率の異なる[[脳脊髄液]]、[[骨]]、[[皮膚]]などを通して観察することになる。この信号源と記録電極の間にある[[sp:Volume_conduction|容積導体]](volume conduction)は不均一であり、脳波の空間分解能には限界がある。


 しかしながら、脳磁場信号は神経細胞内電流を直接的に反映し、容積導体の影響をほとんど受けないため、脳波に比べて高い空間分解能を有しておりmm単位の正確度で信号源を推測することも可能である<ref name=ref3><pubmed>6190632</pubmed></ref>。すなわち頭蓋骨や表皮、脳脊髄液など[[wikipedia:ja:電気伝導率|電気伝導率]]が大きく異なる組成の影響を脳波のように受けないことが脳磁法の大きなメリットである<ref name=ref4><pubmed>9741752</pubmed></ref>。また脳波では、何らかの基準点([[wikipedia:ja:耳朶|耳朶]]電位基準や平均電位基準など)が必要となるが、脳磁法では基準点が必要ないこともメリットとなる。また脳波では記録電極と頭皮との接触が良くないと信号にノイズが混入してしまう。
 しかしながら、脳磁場信号は神経細胞内電流を直接的に反映し、容積導体の影響をほとんど受けないため、脳波に比べて高い空間分解能を有しておりmm単位の正確度で信号源を推測することも可能である<ref name=ref3><pubmed>6190632</pubmed></ref>。すなわち頭蓋骨や表皮、脳脊髄液など[[wikipedia:ja:電気伝導率|電気伝導率]]が大きく異なる組成の影響を脳波のように受けないことが脳磁法の大きなメリットである<ref name=ref4><pubmed>9741752</pubmed></ref>。また脳波では、何らかの基準点([[wikipedia:ja:耳朶|耳朶]]電位基準や平均電位基準など)が必要となるが、脳磁法では基準点が必要ないこともメリットとなる。また脳波では記録電極と頭皮との接触が良くないと信号にノイズが混入してしまう。
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==その他のNeuroimaging法との比較==
==その他のNeuroimaging法との比較==
 脳磁法の長所としては、[[positron emission tomography]]([[PET]])、[[Single Photon Emission Computed Tomography]]([[SPECT]])、[[functional Magnetic Resonance Imaging]]([[fMRI]])、[[Near Infra-Red Spectroscopy]][[NIRS]])が血流や代謝などを指標に脳神経活動を間接的に計測しているのに対して、神経電気活動を非常に高い時間分解能で直接計測している点があげられる。また、脳磁法は生体への干渉を行わず観察するのみなので、他のNeuroimaging法とくらべても全くの非侵襲的計測法であるといえる。
 脳磁法の長所としては、[[positron emission tomography]]([[PET]])、[[Single Photon Emission Computed Tomography]]([[SPECT]])、[[functional Magnetic Resonance Imaging]]([[fMRI]])、[[近赤外線スペクトロスコピー]] ([[Near Infra-Red Spectroscopy]], [[NIRS]])が血流や代謝などを指標に脳神経活動を間接的に計測しているのに対して、神経電気活動を非常に高い時間分解能で直接計測している点があげられる。また、脳磁法は生体への干渉を行わず観察するのみなので、他のNeuroimaging法とくらべても全くの非侵襲的計測法であるといえる。


 短所としては脳磁法で神経活動の信号源を知るためには[[wikipedia:ja:逆問題|逆問題]]を解く必要があるが解が唯一ではない非適切な問題であるため、脳活動に関する前提的な知識を含んだモデルを用いて制限することで解を導き出す必要がある。PET、SPECT、fMRI、NIRSでは逆問題を解く必要はない。また脳磁法、NIRSは脳の深部の活動をうまく計測できないがPET、SPECT、fMRIでは可能である。
 短所としては脳磁法で神経活動の信号源を知るためには[[wikipedia:ja:逆問題|逆問題]]を解く必要があるが解が唯一ではない非適切な問題であるため、脳活動に関する前提的な知識を含んだモデルを用いて制限することで解を導き出す必要がある。PET、SPECT、fMRI、NIRSでは逆問題を解く必要はない。また脳磁法、NIRSは脳の深部の活動をうまく計測できないがPET、SPECT、fMRIでは可能である。
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*[[Single Photon Emission Computed Tomography]]
*[[Single Photon Emission Computed Tomography]]
*[[functional Magnetic Resonance Imaging]]
*[[functional Magnetic Resonance Imaging]]
*[[Near Infra-Red Spectroscopy]]
*[[近赤外線スペクトロスコピー]]


==参考文献==
==参考文献==
<references />
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