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刺激等価性

1,361 バイト追加, 2016年2月5日 (金) 09:35
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(藤永保監修『最新 心理学事典』(平凡社、2013年12月発行)の項目「刺激等価性」に基づく転載)
{{box|text= 刺激等価性とは、任意の事物・刺激間に成立した、機能的な交換可能性を指す。成立した関係に焦点を置いて等価関係とも呼ばれる。代表的にはことばの学習に例証され、子どもが母親から「ウサギさんはどれ?」と尋ねられてウサギのぬいぐるみを選んだり、「ウサギ」という音声とウサギのぬいぐるみの間に刺激等価性が成立したという。訓練刺激が等価な刺激クラスとなるばかりでなく、派生的・創発的に刺激間関係の拡張が示されることを要件とする。}} 刺激等価性とは、任意の事物・刺激間に成立した、機能的な交換可能性を指す。成立した関係に焦点を置いて等価関係(equivalence relations)とも呼ばれる。オペラント条件づけを用いた逆転学習を通して機能的に等価な刺激カテゴリーを作る機能的等価性(functional equivalence)や、パブロフ型(古典的)条件づけにより刺激-強化関係を共有することで共通の機能を持つに至る獲得性等価性(acquired equivalence)も刺激等価性と呼ばれることがあるが、本稿では、訓練刺激が等価な刺激クラスとなるばかりでなく、派生的・創発的に刺激間関係の拡張が示されることを要件とする、シドマンSidman, M.の枠組みによる刺激等価性について述べる。}}(<u>編集部コメント:抄録では一段落程度で項目の内容全体がわかる理解できるようにお願いいたします。編集部で一部作成いたしましたので、適宜続けていただければと思います。</u>)
==例==
 刺激等価性の成立は、代表的にはことばの学習に例証される。
 子どもが母親から「ウサギさんはどれ?」と尋ねられてウサギのぬいぐるみを選んだり、ウサギのぬいぐるみを見て 子どもが母親から「[[ウサギ]]さんはどれ?」と尋ねられてウサギのぬいぐるみを選んだり、ウサギのぬいぐるみを見て[うさぎ]の文字カードを選んだりできたとき、その子は「ウサギ」という母親の発声がどの事物を指し、どのような記号に対応するかについて、何らかの理解をしたと考えられる。この後、子どもは特に教えられなくても、ぬいぐるみを見て「ウ・サ・ギ」と発声したり、文字カードを見てウサギのぬいぐるみを指差したり、「ウサギ」と聞いて[うさぎ]の文字カードを選んだり、文字カードを見て「ウ・サ・ギ」と読めたりする。これらが観察されたとき、「ウサギ」という音声、ウサギのぬいぐるみ、[うさぎ]の文字カードの間に刺激等価性が成立したという。
 このような現象は日常の[[語彙]]の獲得場面では当然のこととして知られていたが、背景にある行動原理は明らかでなかった。「ウサギ」の音声は[[聴覚]]刺激、写真と文字は[[視覚]]刺激だがそれぞれの間に物理的な連続性・類似性がないため、刺激般化による説明は難しい。すべての関係が明示的に訓練(強化)されていたわけではないため、[[オペラント条件づけ]]の[[反応-強化随伴性]]や、[[古典的条件づけ]]の[[刺激-刺激連合]]のみによる説明にも困難がある。
 そこで、このような現象を実証的分析の対象とするため、研究の枠組みを作ったのがアメリカの心理学者[[wikipedia:Murray Sidman|シドマン]]である。彼は、1970年代から[[小頭症]]や[[ダウン症]]と診断された[[知的発達障害]]者において、音声反応、図形刺激、つづり単語の間にある関係の一部を訓練し獲得させることにより、直接訓練されていなかった関係が創発したことを報告した<ref name=ref1>'''Sidman, M.'''<br>Equivalence relations and behavior: A research story.<br> ''Boston: Authors Cooperative''. 1994</ref>。また、1982年には[[アカゲザル]]、[[wikipedia:ja:アヌビスヒヒ|アヌビスヒヒ]]、[[ヒト]]の幼児を対象とした実験を行い<ref name=ref2><pubmed> 7057127</pubmed></ref>、刺激等価性が[[ヒト]]に固有であり、[[言語]]的能力との深い関係が示唆されることを指摘し、初めて刺激等価性の概念の整理と研究の定式化を行った<ref name=ref3><pubmed>7057129</pubmed></ref>。
 
 [[オペラント条件づけ]]を用いた逆転学習を通して機能的に等価な刺激カテゴリーを作る機能的等価性(functional equivalence)や、[[パブロフ型条件づけ|パブロフ型(古典的)条件づけ]]により刺激-強化関係を共有することで共通の機能を持つに至る[[獲得性等価性]](acquired equivalence)も刺激等価性と呼ばれることがあるが、本稿では、訓練刺激が等価な刺激クラスとなるばかりでなく、派生的・創発的に刺激間関係の拡張が示されることを要件とする、シドマンSidman, M.の枠組みによる刺激等価性について述べる。(<u>編集部コメント:抄録から移しました。用語の用い方の詳細は抄録ではなく、イントロに記述するようにお願いしています。</u>)
==構成==
 刺激等価性は[[ラベル獲得]]や語彙の拡張を促進し、刺激様相による制約を受けずにコミュニケーションを可能にさせることから、その研究の開始当初から言語の恣意性や象徴的・指示的機能との関わりの可能性が指摘されてきた。これに加え、ヒト以外の[[動物]]で成立が非常に困難であることがわかったため、刺激等価性がある程度の言語能力を前提とするか、ネーミング(命名反応)のような言語行動を媒介としているのではないかという説が出された。
 しかし、命名反応のみならず機能的な発声すら困難な重度発達障害者や[[wikipedia:jawj:カリフォルニアアシカ|カリフォルニアアシカ]]で、刺激等価性が成立するという結果が得られたため<ref name=ref6>'''Schusterman, R. J. & Kastak, D.'''<br> A California sea lion (Zalophus californianus) is capable of forming equivalence relations. <br>''The Psychological Record'', 43, 823-839. 1993</ref>、成立には特定の言語能力を必要としないことが明らかになった<ref name=ref7><pubmed>13677612</pubmed></ref>。むしろ、刺激等価性は、対象物と記号との間の、恣意的関係の成立を可能にすることから、ヒトの言語・表象機能の発現に不可欠な能力として背景にあると考えられている。
 刺激等価性と言語発達との関係を考える上で注目すべきは、ヒト以外で等価関係を示したアシカと[[wikipedia:ja:チンパンジー|チンパンジー]]がどちらも[[排他律]]exclusion(排他による選択)を示したことである<ref name=ref8><pubmed>12507014</pubmed></ref> <ref name=ref9><pubmed>8433065</pubmed></ref>。排他律とは、「AならばB」の条件性弁別獲得の後に「AでないならばBでない」の反応が示されることに対応する。前述の例を使えば、ウサギは分かるが[[wikipedia:ja:タヌキ|タヌキ]]がどのようなものか知らない子どもが、未知の見本刺激「タヌキ」という音声に対し、比較刺激として既知のウサギのぬいぐるみと未知のタヌキのぬいぐるみが提示されたとき、タヌキのぬいぐるみを選ぶことによって示される。これは、AとBの既知関係が排他的な1対1対応を持つものとして捉えられ、未知関係を導いたといえる。
 排他律は言語発達研究では[[wikipedia:ja:相互排他性|相互排他性]](mutual exclusivity)として知られ、1つの事物に1つの名称を対応させる傾向であり、特に言語習得中の子どもに観察される。相互排他性は新たなラベル獲得にとって重要な特性であり、これに加えてラベルと、ラベルに指示されるものとの双方向性、すなわち対称性が付随することにより、迅速な語彙獲得が可能になると考えられる。発達的に排他律よりも対称性の方が早く現れるという報告もあるが、研究例が少なく定かではない。排他律は非論理的推論であるが、対称性「BならばA」は排他律の対偶に相当し、いずれか一方が成立していれば、他方の成立は論理的導出となる。
 刺激等価性はヒトの言語の運用上必要不可欠な行動特性であるばかりでなく、論理学的な真偽はともかく迅速な判断が求められるヒトの推論の背後にあるメカニズムとしても捉えられる。このように、ヒトにとって刺激等価性は、ヒトの認知能力を特色付けるような要素に関わっていると考えられる一方、ヒト以外の動物における刺激等価性成立の証拠は大変少ない。
 シドマンの定式化以後、様々なヒト以外の動物を対象として刺激等価性の成立がテストされてきた。[[哺乳類]]ではアヌビスヒヒ、[[アカゲザル]]、[[カニクイザル]]、[[wikipedia:ja:フサオマキザル|フサオマキザル]]、[[wikipedia:ja:チンパンジー|チンパンジー]]、、チンパンジー、[[wikipedia:ja:シロイルカ|シロイルカ]]、カリフォルニアアシカ、[[wikipedia:ja:ラット|ラット]]、[[鳥類]]ではデンショバト、ではデンショバト(<u>編集部コメント:生物学的な名称ではないので種名でお願いいたします。おそらくカワラバト''Columba livia''かと思いますがご確認下さい。</u>)、[[wikipedia:ja:セキセイインコ|セキセイインコ]]、[[wikipedia:ja:ハシブトガラス|ハシブトガラス]]などが挙げられる<ref name=ref5 />。この中で、刺激等価性の成立が確認されたのはカリフォルニアアシカとチンパンジーであった。中でも、成立した等価クラスの数、関連する認知機能の検査を加えての追試により、個体内で繰り返し等価関係の成立を確認できたのは、。この中で、刺激等価性の成立が確認されたのはカリフォルニアアシカとチンパンジーであった。中でも、成立した等価クラスの数、関連する認知機能の検査を加えての追試により、個体内で繰り返し等価関係(<u>編集部コメント:刺激等価性でしょうか?</u>)の成立を確認できたのは、シュスターマン(R. Schusterman)らの被験体であるカリフォルニアアシカのみである<ref name=ref6 />。  等価性(<u>編集部コメント:刺激等価性でしょうか?</u>)の構成要素の中で成立・不成立の結果を概観すると、対称性が鍵となっていることがわかる。反射性、推移性を示す動物は決して少なくないが、対称性を示す動物は稀である。シドマンは、刺激等価性は強化随伴性の中にビルトインされたもので、ヒトは等価性を成立させるように作られていると論じている。事実、ヒトにおける等価性成立の頑健さは様々な認知的障害にも影響を受けない。言語使用能力と刺激等価性成立との関係を文献調査したところ、知的障害、[[wikipedia:ja:シュスターマン|シュスターマン自閉的傾向]](R. Schusterman)らの被験体であるカリフォルニアアシカのみであるなどの特定の障害と等価性の成立/不成立との間には明瞭な関係が存在しないことが指摘されている<ref name=ref7 />。不成立の場合でも、ヒトとヒト以外の動物の成績は明瞭に異なる。ヒトは刺激等価性が成立しなかった場合は、前提となる条件性弁別課題がある基準以上の成績に達しなかったことが原因であると考えられる一方、ヒト以外の動物では訓練された条件性弁別試行の成績が十分に高いのに、テストセッションの途中で挿入される刺激等価性テスト試行の成績が訓練済み試行に比べて有意に低いか、チャンスレベルとなっている<ref name=ref6 ref11><pubmed>10682337</pubmed></ref>。
 等価性の構成要素の中で成立・不成立の結果を概観すると、対称性が鍵となっていることがわかる。反射性、推移性を示す動物は決して少なくないが、対称性を示す動物は稀である。シドマンは、刺激等価性は強化随伴性の中にビルトインされたもので、ヒトは等価性を成立させるように作られていると論じている。事実、ヒトにおける等価性成立の頑健さは様々な認知的障害にも影響を受けない。言語使用能力と刺激等価性成立との関係を文献調査したところ、知的障害、[[自閉的傾向]]などの特定の障害と等価性の成立/不成立との間には明瞭な関係が存在しないことが指摘されている<ref name=ref7 />。不成立の場合でも、ヒトとヒト以外の動物の成績は明瞭に異なる。ヒトは刺激等価性が成立しなかった場合は、前提となる条件性弁別課題がある基準以上の成績に達しなかったことが原因であると考えられる一方、ヒト以外の動物では訓練された条件性弁別試行の成績が十分に高いのに、テストセッションの途中で挿入される刺激等価性テスト試行の成績が訓練済み試行に比べて有意に低いか、チャンスレベルとなっている<ref name=ref11><pubmed>10682337</pubmedu>編集部コメント:「刺激等価性」、「等価関係」とその構成要素の4.の「等価性」は区別するものなのでしょうか?素人にはどちらかよくわからない部分がございますのでご確認下さい。</refu>
 このようにヒトとヒト以外の動物との間に大きな溝があることから、刺激等価性の成立の背景に系統発生上の諸要因を考える必要が出てくる。まず第1に生態学的要因が考えられる。刺激等価性を示したカリフォルニアアシカは、生後まもなくから、母親を[[嗅覚]]、視覚、聴覚の多様相刺激により同定しなければならない必要に迫られており、これが刺激間関係の柔軟な組み合わせに寄与しているとする説がある<ref name=ref12>'''Schusterman, R. J., Reichmuth, C. J., & Kastak, D.'''<br>How animals classify friends and foes.<br>''Current Directions in Psychological Science'', 9, 1-6. 2000</ref>。これに加えて、アシカは集団間の闘争が頻繁であるため、集団内・集団間に階層的なカテゴリーが存在していることも、より抽象的な記号操作を可能にする基盤となっていると考えられている。このような生態的特徴は、ヒトがそれぞれの言語共同体の中で生まれ、恣意的な記号のやりとりに常に囲まれながら成長していくことに相当する。

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