「てんかん」の版間の差分

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{| class="wikitable"
{| class="wikitable"
|+表3.てんかん発作型国際分類(1981年)
|+表3.発作年齢によるてんかん症候群と関連病態
|-
|-
| style="background-color:#d3d3d3" |部分発作(焦点性、局在性発作)
| style="background-color:#d3d3d3" |新生児期
| style="background-color:#d3d3d3" |全般発作
| style="background-color:#d3d3d3" |青年期
|-
|-
|良性家族性新生児発作<br>早期ミオクロニー脳症<br>大田原症候群
|
|-
|}
===診断===
===診断===
 てんかんの診断に脳波検査は欠かせない。同じパターンを示す発作の確認と発作間歇期に発作波(棘⋯徐波結合、鋭波―徐破結合、棘波、鋭波、徐波の群発など、が記録されるとてんかんと考えられるが、てんかんであっても脳波異常が記録されないときもあるため、発作症状からてんかんが疑われる場合には時間をおいて繰り返し、脳波を記録する必要がある。24時間連続して記録するビデオ脳波同時記録は服薬をしない状態で記録するため、発作時脳波を記録できる可能性が高く、鑑別診断の有力な手段である。
 てんかんの診断に脳波検査は欠かせない。同じパターンを示す発作の確認と発作間歇期に発作波(棘⋯徐波結合、鋭波―徐破結合、棘波、鋭波、徐波の群発など、が記録されるとてんかんと考えられるが、てんかんであっても脳波異常が記録されないときもあるため、発作症状からてんかんが疑われる場合には時間をおいて繰り返し、脳波を記録する必要がある。24時間連続して記録するビデオ脳波同時記録は服薬をしない状態で記録するため、発作時脳波を記録できる可能性が高く、鑑別診断の有力な手段である。
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 このように症例が持つ遺伝子異常の種類、変異の位置などにより薬剤の選択が可能となり、薬物代謝酵素、薬剤排泄トランスポーターなどの遺伝子多型から適量を算出することが理論的には可能である。一部の抗てんかん薬では患者の体重、併用薬剤、処方予定の抗てんかん薬に関わるCYPの多型、などからクリアランスを想定できるので、その患者の抗てんかん薬の至適容量を計算することができる(19)。近い将来、このような個別化治療が臨床で実施可能となり、薬剤選択と投与量調整における時間が短縮する。
 このように症例が持つ遺伝子異常の種類、変異の位置などにより薬剤の選択が可能となり、薬物代謝酵素、薬剤排泄トランスポーターなどの遺伝子多型から適量を算出することが理論的には可能である。一部の抗てんかん薬では患者の体重、併用薬剤、処方予定の抗てんかん薬に関わるCYPの多型、などからクリアランスを想定できるので、その患者の抗てんかん薬の至適容量を計算することができる(19)。近い将来、このような個別化治療が臨床で実施可能となり、薬剤選択と投与量調整における時間が短縮する。
{| class="wikitable"
|+表4.抗てんかん薬とCYPs<br>文献(21)より一部改変し、引用
|-
| style="background-color:#d3d3d3" |抗てんかん薬
| style="background-color:#d3d3d3" |
| style="background-color:#d3d3d3" |肺性経路
|-
|Carbamazepine
|'''CYP3A4/5''', CYP2D6, CYP2C8, EPHX1
|酸化
|-
|Ethosuximide
|'''CYP3A4'''
|酸化
|-
|Valproate
|CYP2D6, '''CYP2C9''', '''CYP2C19''', CYP1A2, CYP2B1, CYP2B2, CYP2B4, CYP2E1, CYP4B1, UGT2B1
|酸化(>50%)とグルクロン酸抱合(30-40%)
|-
|Gabapentin
| -
|腎排泄
|-
|Phenobarbital
|'''CYP3A4''', CYP2D6, '''CYP2C9''', '''CYP2C19''', CYP2B1, CYP4A1
|酸化 +N-glucosidation(70%)と腎排泄(25%)
|-|
|Phenytoin
|'''CYP3A4''', CYP2C8, '''CYP2C9''', CYP2C10, '''CYP2C19'''
|酸化
|-
|Topiramate
|'''CYP2C19'''
|酸化(20-60%)と腎排泄(40-80%)
|-
|Levetiracetam
|Hydrolase
|腎排泄(65%)と加水分解(35%)
|-
|Lamotrigine
|UGT1A4, UGT2B7
|グルクロン酸抱合
|-
|Zonisamide
|'''CYP3A4''', CYP2D6
|酸化 + 還元 + N-アセチル化(>50%)と腎排泄
|-
|Clobazam
|'''CYP3A4'''
|酸化
|-
|}


===発病の防止===
===発病の防止===
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==疫学==
==疫学==
 有病率(prevalence rate)とはある時点での患者の割合であるが、調査日における対象人口1000人あたりの患者数で示される。治療継続中または最終発作から5年未満の患者を活動性てんかんとみなして調査する。有病率を考える上で問題となるのは調査方法である。つまり、てんかんの診断方法をいかにするか、単発の発作を除いているか、小児期では発熱時の発作を除いているか、どの地域で調査するか、調査がpopulation based surveyなのか、hospital based surveyなのか、あるいは登録制度を持っている国ではそこに集積されたデータを用いているか、などである。調査地域の年齢構成が異なるため、対象年齢別の調査にする必要がある。これらの要因で有病率は異なる。表6に地域調査による最近の年齢別に有病率が報告されているデータを示した。前年例で見ると4.8から15.4とばらつくが、これは調査の方法論に起因するものと考えられる。最近は先進国では高齢者が増加しているが、有病率は高齢者で比較的高くなる傾向が認められる。国内では地域調査は少ないが、小児期(0歳から12歳)の有病率は8.8、単発または発熱時の発作を除くと5.3と報告されている(16)。
 有病率(prevalence rate)とはある時点での患者の割合であるが、調査日における対象人口1000人あたりの患者数で示される。治療継続中または最終発作から5年未満の患者を活動性てんかんとみなして調査する。有病率を考える上で問題となるのは調査方法である。つまり、てんかんの診断方法をいかにするか、単発の発作を除いているか、小児期では発熱時の発作を除いているか、どの地域で調査するか、調査がpopulation based surveyなのか、hospital based surveyなのか、あるいは登録制度を持っている国ではそこに集積されたデータを用いているか、などである。調査地域の年齢構成が異なるため、対象年齢別の調査にする必要がある。これらの要因で有病率は異なる。表6に地域調査による最近の年齢別に有病率が報告されているデータを示した。前年例で見ると4.8から15.4とばらつくが、これは調査の方法論に起因するものと考えられる。最近は先進国では高齢者が増加しているが、有病率は高齢者で比較的高くなる傾向が認められる。国内では地域調査は少ないが、小児期(0歳から12歳)の有病率は8.8、単発または発熱時の発作を除くと5.3と報告されている(16)。
{| CLASS="WIKITABLE"|+
|- 表6.地域調査による年代別てんかんの有病率<BR>文献 (17)を一部改変して引用
|-
|国及び報告者
|患者数
|対象年齢
|有病率(/1,000)
|-
|USA<br>Hauserら<br>1991
|383
|全年齢<br>0~14歳<br>15~64歳<br>65歳以上
|6.79<br>3.92<br>7.12<br>10.61
|-
|Italy<br>Maremmaniら<br>1991
|51
|全年齢層<br>0~19歳<br>20~59歳<br>60歳以上
|5.1<br>6.3<br>4.9<br>4.5
|-
|
|185
|
|
|-
|
|428
|
|
|-
|
|100
|
|
|-
|
|1,022
|
|
|-
|}


==参考文献==
==参考文献==
<references /> 
<references /> 

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