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摂食障害(eating disorders)は、主に神経性食思(欲)不振症(anorexia nervosa, AN)と神経性過(大)食症(bulimia nervosa, BN)からなる。ANは身体像の障害、強いやせ願望や肥満恐怖などのため不食や摂食制限、あるいは過食しては嘔吐するため著しいやせと種々の身体・精神症状を生じる一つの症候群である。BNは、自制困難な摂食の欲求を生じて、短時間に大量の食物を強迫的に摂取しては、その後嘔吐や下剤の乱用、翌日の摂食制限、不食などにより体重増加を防ぎ、体重はANほど減少せず正常範囲内で変動し、過食後に無気力感、抑うつ気分、自己卑下をともなう一つの症候群である。これらの摂食障害が思春期から青年期の女性を中心に急増している。しかし最近の際立った特徴として、患者が前思春期の低年齢層から既婚の高年齢層まで拡がりをみせていることや、臨床像が多様化して非定型例が増加していることである。このような背景を踏まえて、ここでは摂食障害の中核となるANとBNについて説明する。 | 摂食障害(eating disorders)は、主に神経性食思(欲)不振症(anorexia nervosa, AN)と神経性過(大)食症(bulimia nervosa, BN)からなる。ANは身体像の障害、強いやせ願望や肥満恐怖などのため不食や摂食制限、あるいは過食しては嘔吐するため著しいやせと種々の身体・精神症状を生じる一つの症候群である。BNは、自制困難な摂食の欲求を生じて、短時間に大量の食物を強迫的に摂取しては、その後嘔吐や下剤の乱用、翌日の摂食制限、不食などにより体重増加を防ぎ、体重はANほど減少せず正常範囲内で変動し、過食後に無気力感、抑うつ気分、自己卑下をともなう一つの症候群である。これらの摂食障害が思春期から青年期の女性を中心に急増している。しかし最近の際立った特徴として、患者が前思春期の低年齢層から既婚の高年齢層まで拡がりをみせていることや、臨床像が多様化して非定型例が増加していることである。このような背景を踏まえて、ここでは摂食障害の中核となるANとBNについて説明する。 | ||
[[Image:Face.png|right|thumb|500px]] | [[Image:Face.png|right|thumb|500px]] | ||
== 神経性食思不振症 == | == 神経性食思不振症 == | ||
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'''精神療法''':認知療法的アプロ-チにより、体重や食物に関連した不合理な認知や思い込みに気づくよう働きかける。すなわち、患者が自分の体重や食事以外の面での考えや感情を正しく認知する能力には自信を失わせず、摂食障害の症状の一部として、体型や体重についての歪んだ認知があることを自覚するよう援助する。 | '''精神療法''':認知療法的アプロ-チにより、体重や食物に関連した不合理な認知や思い込みに気づくよう働きかける。すなわち、患者が自分の体重や食事以外の面での考えや感情を正しく認知する能力には自信を失わせず、摂食障害の症状の一部として、体型や体重についての歪んだ認知があることを自覚するよう援助する。 | ||
このような精神療法的努力と身体的療法による体重の回復とを統合させ、徐々に不合理な認知と身体像の障害を修正していく。体重が改善すると患者の気分の改善、認知機能の強化、思考の清明化がもたらされる。そしてさらに根底にある実存的問題に目が向けられ自己同一性の確立、すなわち自己の確立と個性化の達成を促す。これらを長期の外来通院治療で行う。 薬物療法:不眠、不安、抑うつ気分、胃重感、消化・吸収機能の低下などの随伴症状に対する対症療法や、治療関係を促進して精神療法や行動療法への導入を容易にするために行われる。 | |||
==== 家族への対応の仕方<ref name="cit5">切池信夫:摂食障害の子供を抱える家族に対して、みんなで学ぶ過食と拒食とダイエット、 星和書店、東京、pp251-291、2001</ref> ==== | ==== 家族への対応の仕方<ref name="cit5">切池信夫:摂食障害の子供を抱える家族に対して、みんなで学ぶ過食と拒食とダイエット、 星和書店、東京、pp251-291、2001</ref> ==== | ||
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==== 家族への対応の仕方<ref name="cit5"/> ==== | ==== 家族への対応の仕方<ref name="cit5"/> ==== | ||
過食や嘔吐は秘密裏に行われ、親がこれらの行為に気づくのは発症してからかなり経過してからである。親はこれを知った時、怒りと羞恥心、「しつけ」や「育て方」が悪かったという罪の意識や後ろめたさをもつので、これらをできるだけ取り除くよう配慮する。そして、親に子供をより客観的にみさせ、冷静に対応させるようにする。過食や嘔吐について叱責しないこと、批判や指示をせず子供の話を聞くこと、さらに家族が患者の看護に疲れないために適切なアドバイスを与える<ref name="cit6"/>。 | |||
=== 経過と予後 === | === 経過と予後 === | ||
1997年から2002年までの研究結果をまとめたものでは、9~11年の追跡期間で、回復と部分回復が47~73%、不良が9~30%、致死率0.57~2.33%となっている。そして死因として自殺や事故死、心不全を伴う身体疾患とされている<ref name="cit9">Quadflieg N, Fichter MM: The course and outcome of bulimia nervosa, European Child & Adolescent Psychiatry (Suppl 1), 12 : 99-109, 2003</ref>。 | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |