「スリット」の版間の差分

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==構造==
==構造==
 スリットは[[無脊椎動物]]から[[脊椎動物]]まで種を越えて保存されており、共通の基本構造を持つ。アミノ末端(N末)に4つの[[LRR]](leucine-rich repeat)ドメインと、6~9つの[[EGF]]([[epidermal growth factor]])リピート配列を持つ。また脊椎動物のスリットのホモログの1つであるSlit2は、全長のタンパク質が合成された後にN末の[[Slit2N]]、カルボキシル末端(C末)の[[Slit2C]]の2つに分解される<ref name=ref4 />。Slit2Nのレセプターとしては[[Robo1]]、[[Robo2]]が知られており、軸索の伸長において反発の活性を示す<ref name=ref4 /> <ref name=ref8><pubmed>11404413</pubmed></ref>。一方、Slit2Cについてはその機能が不明であったが、最近PlexinA1を受容体としてSlit2Nと同様に反発活性を示すことが報告された<ref name=ref9><pubmed>25485759</pubmed></ref>。
 スリットは[[無脊椎動物]]から[[脊椎動物]]まで種を越えて保存されており、共通の基本構造を持つ。アミノ末端(N末)に4つの[[LRR]](leucine-rich repeat)ドメインと、6~9つの[[EGF]]([[epidermal growth factor]])リピート配列を持つ。また脊椎[[動物]]のスリットのホモログの1つであるSlit2は、全長のタンパク質が合成された後にN末の[[Slit2N]]、カルボキシル末端(C末)の[[Slit2C]]の2つに分解される<ref name=ref4 />。Slit2Nのレセプターとしては[[Robo1]]、[[Robo2]]が知られており、軸索の伸長において反発の活性を示す<ref name=ref4 /> <ref name=ref8><pubmed>11404413</pubmed></ref>。一方、Slit2Cについてはその機能が不明であったが、最近PlexinA1を受容体としてSlit2Nと同様に反発活性を示すことが報告された<ref name=ref9><pubmed>25485759</pubmed></ref>。


==ファミリー==
==ファミリー==
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 脊椎動物においてスリットは脊髄交連ニューロンの軸索伸長を[[底板]]付近で制御している<ref name=ref10 />。底板から分泌されるスリットは、交連ニューロンの軸索に発現するRobo1、Robo2と直接結合することで反発作用を及ぼす。正中交差前の交連ニューロンの軸索にはRobo3(Robo3.1)が発現しているが、Robo3はRobo1、Robo2の活性を抑えることでスリットに対する応答性を消失させ、それにより軸索正中交差が可能となる。
 脊椎動物においてスリットは脊髄交連ニューロンの軸索伸長を[[底板]]付近で制御している<ref name=ref10 />。底板から分泌されるスリットは、交連ニューロンの軸索に発現するRobo1、Robo2と直接結合することで反発作用を及ぼす。正中交差前の交連ニューロンの軸索にはRobo3(Robo3.1)が発現しているが、Robo3はRobo1、Robo2の活性を抑えることでスリットに対する応答性を消失させ、それにより軸索正中交差が可能となる。


 正中交差後の交連ニューロンの軸索においてはRobo3の発現が失われることで、底板由来スリットがRobo1、Robo2を介して反発活性をもつようになる。この正中交差後に起こる底板からの反発により、底板における軸索再交差が妨げられている<ref name=ref16><pubmed>15084255</pubmed></ref>。また、ショウジョウバエにおいてもスリットはロボと直接結合し、シグナル伝達を行うことで反発作用を示す<ref name=ref3 />。脊椎動物のSlit1、Slit2、Slit3のトリプル[[ノックアウトマウス]]の表現型はショウジョウバエにおけるスリットの変異体における表現型と一致する<ref name=ref10 />。
 正中交差後の交連ニューロンの軸索においてはRobo3の発現が失われることで、底板由来スリットがRobo1、Robo2を介して反発活性をもつようになる。この正中交差後に起こる底板からの反発により、底板における軸索再交差が妨げられている<ref name=ref16><pubmed>15084255</pubmed></ref>。また、ショウジョウバエにおいてもスリットはロボと直接結合し、シグナル伝達を行うことで反発作用を示す<ref name=ref3 />。脊椎動物のSlit1、Slit2、Slit3のトリプル[[ノックアウトマウス]]の表現型は[[ショウジョウバエ]]におけるスリットの変異体における表現型と一致する<ref name=ref10 />。


 脊椎動物の[[視神経]]の発達過程においてもSlit1、Slit2は、視神経軸索に対して反発作用を示している。またSlit1、Slit2それぞれのノックアウトにおける表現型はSlit1、Slit2のダブルノックアウトの表現型と異なることから、Slit1、Slit2は視神経軸索が伸長していく領域に応じて相補的に働いていると考えられている<ref name=ref17><pubmed>11804570</pubmed></ref>。
 脊椎動物の[[視神経]]の発達過程においてもSlit1、Slit2は、視神経軸索に対して反発作用を示している。またSlit1、Slit2それぞれのノックアウトにおける表現型はSlit1、Slit2のダブルノックアウトの表現型と異なることから、Slit1、Slit2は視神経軸索が伸長していく領域に応じて相補的に働いていると考えられている<ref name=ref17><pubmed>11804570</pubmed></ref>。
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===細胞移動===
===細胞移動===
 スリットは神経細胞、[[グリア細胞]]、[[wikipedia:ja:白血球|白血球]]、[[wikipedia:ja:内皮細胞|内皮細胞]]の[[細胞移動]]にも影響を与えている。Slit1、Slit2は[[rostral migratory stream]](RMS)の[[subventricular zone]](SVZ)に存在する未分化の細胞が[[嗅球]]へと細胞移動する際に、反発活性を示す<ref name=ref21><pubmed>14960623</pubmed></ref>。また、後脳の[[小脳前核]]細胞である下オリーブ核ニューロンの腹側正中部付近への細胞移動に関与している<ref name=ref22><pubmed>12051827</pubmed></ref>。
 スリットは神経細胞、[[グリア細胞]]、[[wikipedia:ja:白血球|白血球]]、[[wikipedia:ja:内皮細胞|内皮細胞]]の[[細胞移動]]にも影響を与えている。Slit1、Slit2は[[吻側移動経路]] ([[rostral migratory stream]], RMS)の[[脳室下帯]] ([[subventricular zone]], SVZ)に存在する未分化の細胞が[[嗅球]]へと細胞移動する際に、反発活性を示す<ref name=ref21><pubmed>14960623</pubmed></ref>。また、後脳の[[小脳前核]]細胞である[[下オリーブ核]]ニューロンの腹側正中部付近への細胞移動に関与している<ref name=ref22><pubmed>12051827</pubmed></ref>。


===細胞増殖===
===細胞増殖===

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