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DARPP-32

12 バイト除去, 2016年3月28日 (月) 22:34
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== サブファミリー ==
 Inhibitor-1のN末端 40アミノ酸配列はDARPP-32と40%の相同性があり、PP1c結合モチーフを持つ。さらに、inhibitor-1のThr35残基がPKAによりリン酸化されるとPP1c活性部位と結合して活性を抑制する。DARPP1のThr35がPKAによりリン酸化されるとPP1c活性部位と結合して活性を抑制する。DARPP-32と異なり、inhibitor-1は中枢神経系および末梢組織に幅広く発現する<ref name=ref4><pubmed> 10662690 </pubmed></ref>。
== 発現(組織分布、細胞内分布) ==
 DARPP-32の最も重要な機能は、Thr34がPKAによりリン酸化されたP-Thr34 DARPP-32によるPP1活性の抑制である。DARPP-32はN末端7-11残基(KKIQF)にPP1c結合モチーフを持ち、この結合モチーフを介してPP1cと結合する。さらに、DARPP-32のThr34がPKAによりリン酸化されるとPP1c活性部位に対する親和性が増し、PP1活性を抑制する<ref name=ref4 />(図2)。PP1により機能が制御される蛋白として、NMDA受容体、AMPA受容体、Na<sup>+</sup>チャンネル、Ca<sup>2+</sup>チャンネル、Na<sup>+</sup>,K<sup>+</sup>-ATPase、ヒストンH3などが知られている<ref name=ref1 /> <ref name=ref2 /> <ref><pubmed> 21779236 </pubmed></ref>。NMDA受容体GluN1 (NR1) サブユニット(Ser897)、AMPA受容体GluA1 (GluR1) サブユニット(Ser845)はPKAによりリン酸化されるが、同時にP-Thr34 DARPP-32がPP-1による脱リン酸化を抑制するため、これらのPKA/PP-1基質のリン酸化が効率良く促進される。<br />
 DARPP-32はPKAの他に、Cdk5(Thr75)、CK2(Ser97)、CK1(Ser130)によりリン酸化される。Cdk5によってリン酸化されたP-Thr75 DARPP-32はPKAを抑制する。つまり、DARPP-32はThr34あるいはThr75のリン酸化により、PP-1抑制タンパク質としてもPKA抑制タンパク質としても機能する<ref><pubmed> 10604473 </pubmed></ref>。<br />
 Ser97、Ser130のリン酸化は、DARPP-32分子内メカニズムによりThr34リン酸化・脱リン酸化のカイネティクスを調節している。CK2によるSer97のリン酸化はThr34のPKAによるリン酸化を促進し<ref><pubmed> 2557337 </pubmed></ref>、CK1によるSer130のリン酸化はThr34のPP2B(カルシニューリン)による脱リン酸化を抑制する<ref><pubmed> 9461512 </pubmed></ref>。その結果、Ser97、Ser130のリン酸化により、ドパミンD(図)。その結果、Ser97、Ser130のリン酸化により、ドパミンD<sub>1</sub>受容体/PKA/DARPP-32シグナルは促進される。<br />
 Ser97のCK2によるリン酸化は、DARPP-32の細胞質—核内シャトリングの調節に重要である。P-Ser97 DARPP-32は核外に輸送されるが、Ser97が脱リン酸化されるとNESが機能しないためDARPP-32が核内に蓄積する<ref name=ref3 />。
=== DARPP-32の脱リン酸化調節 ===
 DARPP-32のリン酸化レベルは、プロテインキナーゼによるリン酸化とプロテインホスファターゼによる脱リン酸化のバランスによって決定される。特に、P-Thr34 DARPP-32を脱リン酸化するPP2Bは、グルタミン酸によるNMDA受容体やAMPA受容体の刺激に伴うCa<sup>2+</sup>シグナルによって活性化される。ドパミンD<sub>1</sub>受容体やアデノシンA<sub>2A</sub>受容体によって活性化されるPKAシグナルはThr34をリン酸化し、グルタミン酸により活性化されるPP2BはP−Thr34を脱リン酸化する。拮抗的なドパミンD1受容体シグナルとNMDA受容体・AMPA受容体シグナルは、P-Thr34 DARPP-32のリン酸化を介して統合される<ref name=ref6><pubmed> 9334390 </pubmed></ref>。P-Thr34 DARPP-32は、PP2Bに加え、PKAにより活性化されるPP2A/B56δによっても脱リン酸化される。<br />
 P-Thr75 DARPP-32な主にPP2Aにより脱リン酸化される。PKAにより活性化されるPP2A32は主にPP2Aにより脱リン酸化される。PKAにより活性化されるPP2A/B56δとCa<sup>2+</sup>により活性化されるPP2A/PR72の両者により脱リン酸化される。P-Ser97 DARPP-32は主にPP2A32は主にPP2A(PP2A/B56δとPP2A/PR72により脱リン酸化される。PPR72の両者)により脱リン酸化される。P-Ser130 DARPP-32はPP2AとPP2Cにより脱リン酸化される。このように、脱リン酸化に関わるプロテインホスファターゼはリン酸化サイト毎に異なり、Ca<sup>2+</sup>やPKAにより活性が調節されている<ref><pubmed> 26979514 </pubmed></ref>。
=== ドパミンによるPKA/DARPP-32/PP1シグナル調節 ===
 線条体の[[GABA]]作動性投射神経である中型有棘神経細胞(medium spiny neuron, MSN)は、ドパミンD<sub>1</sub>受容体を発現し黒質網様部(および淡蒼球内節)へ投射する直接路神経(D<sub>1</sub>タイプ; サブスタンスP陽性)とドパミンD<sub>2</sub>受容体を発現し淡蒼球外節に投射する間接路神経(D<sub>2</sub>タイプ;エンケファリン陽性)の2種類が存在する。大脳基底核運動制御サーキットにおいて、直接路神経は脱抑制系を、間接路神経は抑制強化系を構成しており、黒質網様部から視床へのGABA作動性出力の調節を介して大脳皮質運動機能を調節している。DARPP-32は直接路および間接路神経の両方に発現している(図2)。<br />
 直接路神経では、D<sub>1</sub>受容体刺激はPKA/P-Thr34 DARPP-32シグナルの活性化によりPP1を抑制し、グルタミン酸シグナルを増強することにより直接路神経を活性化する。一方、間接路神経では、アデノシンA<sub>2A</sub>受容体刺激がPKA/P-Thr34 DARPP-32シグナルを活性化するのに対して、D<sub>2</sub>受容体刺激はPKA/P-Thr34 DARPP-32シグナルを減弱させる。その結果、D<sub>2</sub>受容体刺激は、PP1活性化を介してグルタミン酸シグナルを抑制することにより間接路神経の活性を低下させる<ref name=ref2 /> <ref name=ref6 /> <ref name=ref8><pubmed> 18622401 </pubmed></ref>。<br />
 直接路神経と間接路神経のDARPP-32を選択的に欠損したマウスの解析により、それぞれの神経のDARPP-32機能が解析されている<ref name=ref9><pubmed> 20682746 </pubmed></ref>。直接路神経のDARPP-32は、自発行動、コカインによる移所運動の増加、ハロペリドールによるカタレプシー、パーキンソン病モデルにおけるジスキネジアを促進することが示された。一方、間接路神経のDARPP-32は自発行動、コカインによる移所運動の増加を抑制するが、ハロペリドールによるカタレプシーを促進する。また、これらの行動変化は、それぞれの神経におけるDARPP32は、自発行動、コカインによる移所運動の増加を抑制するが、ハロペリドールによるカタレプシーを促進する。また、これらの行動変化は、それぞれの神経におけるDARPP-32のリン酸化状態と相関性がある<ref name=ref8 />。
== [[精神神経疾患]]におけるDARPP-32の関与 ==
=== 統合失調症 ===
 線条体や側坐核の間接路神経に発現するDARPP-32はドパミンD2受容体作用に対して拮抗的に作用するため<ref name=ref6 /> <ref name=ref8 />、[[抗精神病薬]]の主な薬理作用であるドパミンD<sub>2</sub>受容体アンタゴニストと類似の作用([[陽性症状]]の改善)を持つと考えられる。線条体の間接路神経において、定型抗精神病薬のの改善)を持つと考えられる。線条体の間接路神経において、定型抗精神病薬である[[ハロペリドール]]によりPの投与によりP-Thr34 DARPP-32が増加し<ref name=ref9 />、カタレプシーの発現を増強する、その結果、カタレプシーの発現を増強する<ref name=ref8 />。つまり、間接路神経でのDARPP-32作用は、抗精神病薬の副作用である[[錐体外路症状]]にも関係している。一方、DARPP-32は[[前頭葉]]([[前頭前皮質]])においてもドパミンD<sub>1</sub>受容体によるリン酸化調節を受けており<ref><pubmed> 16687181 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 21833500 </pubmed></ref>、[[陰性症状]]や認知機能障害の原因とされる[[中脳]]—皮質ドパミン系の低活動や、抗精神病薬の陰性症状や認知機能障害に対する治療効果にも関与すると考えられる。<br />
 アンフェタミン([[覚せい剤]]、ドパミン神経伝達の亢進)、D-リセルグ酸ジエチルアミド([[LSD]]、[[セロトニン神経]]伝達の亢進)、フェンシクリジン(PCP、グルタミン酸神経伝達の抑制)などの薬物は、それぞれ異なる機序で実験動物に統合失調症様の行動異常を引き起こす。これらの薬物をDARPP-32欠損マウス<ref name=ref10 />、DARPP-32点変異マウス(T34A、T75A、S130A)<ref><pubmed> 14631045 </pubmed></ref>に投与しても統合失調症様の行動異常が起きないことから、統合失調症の病態にDARPP-32の関与が示唆される。<br />
 統合失調症患者において、抗精神病薬治療とは関係なく、前頭前皮質の神経細胞でDARPP-32タンパク質が減少していることが報告されている<ref><pubmed> 12150646 </pubmed></ref> <ref name=ref15><pubmed> 17521792 </pubmed></ref>。DARPP-32 mRNAについては、発現が前頭前皮質で低下しているという報告があるが<ref><pubmed> 18573638 </pubmed></ref>、不変<ref><pubmed> 16786528 </pubmed></ref>あるいは増加<ref><pubmed> 20874815 </pubmed></ref>という報告もあり、意見の一致を見ていない。また、双極性障害患者においても前頭前皮質におけるDARPP-32発現の低下が報告されている<ref name=ref15 />。さらに、統合失調症および[[双極性障害]]の前頭前皮質でDARPP-32のN末端を欠失した[[スプライスバリアント]]であるt-DARPP (truncated isoform of DARPP) [[mRNA]]が増加しているという報告がある<ref><pubmed> 23295814 </pubmed></ref>。動物実験では、抗精神病薬投与に伴うDARPP-32発現の変化は認められていない。出生前のリポ多糖類暴露による統合失調症モデル動物において前頭前皮質のDARPP。動物実験では、出生前のリポ多糖類暴露による統合失調症モデル動物において前頭前皮質のDARPP-32の減少が見られるが<ref><pubmed> 17180123 </pubmed></ref>、すべての統合失調症モデル動物においてDARPP-32の発現が低下するわけではない<ref><pubmed> 22820052 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 16132062 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 23313709 </pubmed></ref>。<br />
 健常人において、DARPP-32のSNPやハプロタイプは、前頭前皮質におけるDARPP-32の発現量、線条体・前頭前皮質の構造、認知機能、報酬予測行動などに影響することが知られている<ref><pubmed> 17290303 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 17913879 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 19620978 </pubmed></ref>。しかし、DARPP-32のSNPやハプロタイプと統合失調症との関連解析では、一部の報告で関連が認められているものの<ref><pubmed> 17290303 </pubmed></ref>、多くの報告で関連は認められておらず<ref><pubmed> 16750903 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 17618027 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 17360599 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 18055181 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 18045777 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 20483474 </pubmed></ref>、統合失調症発症の主要なリスク遺伝子である可能性は低い。
== がんにおけるDARPP-32とt-DARPPの役割 ==
 t-DARPP (truncated isoform of DARPP) は、DARPP-32のスプライスバリアントであり、Thr34を含むN末端の36アミノ酸が欠失している<ref name=ref16><pubmed> 26872373 </pubmed></ref>。胃がんでDARPP-32およびt-DARPPの発現が増加していることが報告されて以来<ref><pubmed> 12124342 </pubmed></ref>、注目されるようになった。胃がん(腺癌)の3分の2でDARPP、t-DARPPが注目されるようになった。胃がん(腺癌)の3分の2でDARPP-32およびt-DARPPの発現が増加している<ref><pubmed> 16061638 </pubmed></ref>。また、乳がんや前立腺がん、大腸がんにおいてもDARPP-32およびt-DARPPの発現増加が報告されている<ref><pubmed> 14508844 </pubmed></ref>。DARPP-32およびt-DARPPの発現は、PP1抑制とは異なる発がん経路の活性化(PI3KDARPPの発現増加は、PP1抑制とは異なる発がん経路の活性化(PI3K/Aktシグナルの活性化、Bcl2の発現など)により、腫瘍細胞の増殖・浸潤・転移や腫瘍血管新生を促進し、また、抗がん剤耐性の獲得にも関与することが明らかにされている<ref name=ref16 />。
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