「DARPP-32」の版間の差分

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 アンフェタミン([[覚せい剤]]、ドパミン神経伝達の亢進)、D-リセルグ酸ジエチルアミド([[LSD]]、[[セロトニン神経]]伝達の亢進)、フェンシクリジン(PCP、グルタミン酸神経伝達の抑制)などの薬物は、それぞれ異なる機序で実験動物に統合失調症様の行動異常を引き起こす。これらの薬物をDARPP-32欠損マウス<ref name=ref10 />、DARPP-32点変異マウス(T34A、T75A、S130A)<ref><pubmed> 14631045 </pubmed></ref>に投与しても統合失調症様の行動異常が起きないことから、統合失調症の病態にDARPP-32の関与が示唆される。<br />
 アンフェタミン([[覚せい剤]]、ドパミン神経伝達の亢進)、D-リセルグ酸ジエチルアミド([[LSD]]、[[セロトニン神経]]伝達の亢進)、フェンシクリジン(PCP、グルタミン酸神経伝達の抑制)などの薬物は、それぞれ異なる機序で実験動物に統合失調症様の行動異常を引き起こす。これらの薬物をDARPP-32欠損マウス<ref name=ref10 />、DARPP-32点変異マウス(T34A、T75A、S130A)<ref><pubmed> 14631045 </pubmed></ref>に投与しても統合失調症様の行動異常が起きないことから、統合失調症の病態にDARPP-32の関与が示唆される。<br />
 統合失調症患者において、抗精神病薬治療とは関係なく、前頭前皮質の神経細胞でDARPP-32タンパク質が減少していることが報告されている<ref><pubmed> 12150646 </pubmed></ref> <ref name=ref15><pubmed> 17521792 </pubmed></ref>。DARPP-32 mRNAについては、発現が前頭前皮質で低下しているという報告があるが<ref><pubmed> 18573638 </pubmed></ref>、不変<ref><pubmed> 16786528 </pubmed></ref>あるいは増加<ref><pubmed> 20874815 </pubmed></ref>という報告もあり、意見の一致を見ていない。また、双極性障害患者においても前頭前皮質におけるDARPP-32発現の低下が報告されている<ref name=ref15 />。さらに、統合失調症および[[双極性障害]]の前頭前皮質でDARPP-32のN末端を欠失した[[スプライスバリアント]]であるt-DARPP (truncated isoform of DARPP) [[mRNA]]が増加しているという報告がある<ref><pubmed> 23295814 </pubmed></ref>。動物実験では、抗精神病薬投与に伴うDARPP-32発現の変化は認められていない。出生前のリポ多糖類暴露による統合失調症モデル動物において前頭前皮質のDARPP-32の減少が見られるが<ref><pubmed> 17180123 </pubmed></ref>、すべての統合失調症モデル動物においてDARPP-32の発現が低下するわけではない<ref><pubmed> 22820052 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 16132062 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 23313709 </pubmed></ref>。<br />
 統合失調症患者において、抗精神病薬治療とは関係なく、前頭前皮質の神経細胞でDARPP-32タンパク質が減少していることが報告されている<ref><pubmed> 12150646 </pubmed></ref> <ref name=ref15><pubmed> 17521792 </pubmed></ref>。DARPP-32 mRNAについては、発現が前頭前皮質で低下しているという報告があるが<ref><pubmed> 18573638 </pubmed></ref>、不変<ref><pubmed> 16786528 </pubmed></ref>あるいは増加<ref><pubmed> 20874815 </pubmed></ref>という報告もあり、意見の一致を見ていない。また、双極性障害患者においても前頭前皮質におけるDARPP-32発現の低下が報告されている<ref name=ref15 />。さらに、統合失調症および[[双極性障害]]の前頭前皮質でDARPP-32のN末端を欠失した[[スプライスバリアント]]であるt-DARPP (truncated isoform of DARPP) [[mRNA]]が増加しているという報告がある<ref><pubmed> 23295814 </pubmed></ref>。動物実験では、抗精神病薬投与に伴うDARPP-32発現の変化は認められていない。出生前のリポ多糖類暴露による統合失調症モデル動物において前頭前皮質のDARPP-32の減少が見られるが<ref><pubmed> 17180123 </pubmed></ref>、すべての統合失調症モデル動物においてDARPP-32の発現が低下するわけではない<ref><pubmed> 22820052 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 16132062 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 23313709 </pubmed></ref>。<br />
 健常人において、DARPP-32のSNPやハプロタイプは、前頭前皮質におけるDARPP-32の発現量、線条体・前頭前皮質の構造、認知機能、報酬予測行動などに影響することが知られている<ref><pubmed> 17290303 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 17913879 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 19620978 </pubmed></ref>。しかし、DARPP-32のSNPやハプロタイプと統合失調症との関連解析では、一部の報告で関連が認められているものの<ref><pubmed> 17290303 </pubmed></ref>、多くの報告で関連は認められておらず<ref><pubmed> 16750903 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 17618027 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 17360599 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 18055181 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 18045777 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 20483474 </pubmed></ref>、統合失調症発症のリスク遺伝子である可能性は低い。
 健常人において、DARPP-32のSNPやハプロタイプは、前頭前皮質におけるDARPP-32の発現量、線条体・前頭前皮質の構造、認知機能、報酬予測行動などに影響することが知られている<ref><pubmed> 17290303 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 17913879 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 19620978 </pubmed></ref>。しかし、DARPP-32のSNPやハプロタイプと統合失調症との関連解析では、一部の報告で関連が認められているものの<ref><pubmed> 17290303 </pubmed></ref>、多くの報告で関連は認められておらず<ref><pubmed> 16750903 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 17618027 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 17360599 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 18055181 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 18045777 </pubmed></ref> <ref><pubmed> 20483474 </pubmed></ref>、統合失調症発症の主要なリスク遺伝子である可能性は低い。


== がんにおけるDARPP-32とt-DARPPの役割 ==
== がんにおけるDARPP-32とt-DARPPの役割 ==
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