差分

移動先: 案内検索

変換症

803 バイト追加, 2016年4月9日 (土) 15:31
編集の要約なし
<div align="right">
<font size="+1">[[wj:柴山 雅俊|柴山 雅俊]]</font><br>
''東京女子大学''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年3月30日 原稿完成日:2016年月日<br>
(<u>編集部コメント:各項目は、イントロとしてまず解説用語が何かから始める様にしていますのでここにこの文章を持ってきました。ただ、初学者にはわかりにくいと思います。「訴える症状が運動機能ないしは感覚機能の変化であるが、その症状が生理・解剖学的には説明できない状態を指す(?)。歴史的にヒステリーと医学的に呼ばれたこともある。」ではどうでしょうか?また抄録もご検討ください</u>)
 19世紀末、[[wj:ピエール・ジャネ|ジャネ]]は正常にあっては統合されている自己の[[意識]]、[[記憶]]、[[同一性]]、[[行動]]、[[運動]]、[[身体感覚]]などが、圧倒的な[[外傷体験]]によって分離するという(<u>編集部コメント:心的外傷?圧倒的とは?強いという意味?</u>)によって分離するという[[解離]]の視点から[[ヒステリー]]を捉えようとした。
 ほぼ同じ時期に[[wj:ジークムント・フロイト|フロイト]]はヒステリーの転換型に注目することで[[精神分析]]を創始したことはよく知られている。転換/変換(conversion)という言葉はフロイトによるものであり、受け容れがたい[[無意識]]の心的葛藤が[[抑圧]]され、[[身体症状]]へと置き換えられる過程を意味する。
 Van der Hart, Oらによる[[構造的解離]]によると、解離の諸症状は精神に現れる[[精神表現性解離症状]](psychoform dissociative symptoms)と身体に現れる[[身体表現性解離症状]](somatoform dissociative symptoms)に分けら、またそれぞれ陽性と陰性に分けることができる。通常これら陰性と陽性、身体表現性と精神表現性の症状は互いに交代し合い、時に同時に存在する<ref name=ref1>'''van der Hart O, Nijenhuis ERS, Steele K'''<br>The Haunted Self: Structural dissociation and the treatment of chronic traumatization. <br>''W.W.Norton & Company,'' New York, 2006<br>('''野間俊一、岡野憲一郎訳'''<br>構造的解離:慢性外傷の理解と治療 上巻 基本概念編<br>''星和書店''、東京、2011)</ref>。変換症は身体表現性解離に含まれる。
 陰性の身体表現性解離症状には、運動機能の喪失、種々の感覚の喪失などがある。陽性の身体表現性解離症状には、ある人格部分では生じるが別の人格部分では生じることのない特有の感覚や知覚、運動、行動がある。たとえば、「させられ」的な身体感覚、[[チック]]や震えなどの身体運動、[[非てんかん性発作]]、外傷的出来事の再体験による感覚や運動などがある。Nijenhuisは、[[嚥下]]困難、失声、排尿痛、性器の[[痛み]]、[[大視症]]、[[幻聴]]、[[幻嗅]]、不眠などを含む身体表現性解離の質問紙(Somatoform Dissociation Questionnaire:SDQ-20)を作成している<ref name=ref2>'''Nijenhuis, E.R.S.'''<pubmedbr>Somatoform Dissociation:
 Major symptoms of dissociative disorders.</pubmedbr>''J of Trauma & Dissociation'': 2000, 1(4) ; 7-32</ref>。
==診断基準==
 DSM-Ⅲでは、それまでのヒステリー神経症を転換型と解離型に分け、前者を[[転換性障害]]、後者を[[解離性障害]]と名づけた。転換性障害は[[身体表現性障害]]の下位診断の1つに含められた<ref name=ref3>'''American Psychiatric Association'''<br>Diagnostic and statistical manual of mental disorders (3rd ed.)<br>Washington, DC: 1980</ref>。この点はDSM-Ⅳ、DSM-Ⅳ-TRでも同様である<ref name=ref4><pubmed></pubmed></ref>。
(<u>編集部コメント:DSMの各版の比較は重要でしょうか?</u>)  DSM-Ⅲでは、それまでのヒステリー神経症を転換型と解離型に分け、前者を[[転換性障害]]、後者を[[解離性障害]]と名づけた。転換性障害は[[身体表現性障害]]の下位診断の1つに含められた<ref name=ref3>'''American Psychiatric Association'''<br>Diagnostic and statistical manual of mental disorders (3rd ed.)<br>Washington, DC: 1980</ref>。この点はDSM-Ⅳ、DSM-Ⅳ-TRでも同様である<ref name=ref4>'''American Psychiatric Association'''<br>Diagnostic and statistical manual of mental disorders (4th ed.)<br>Washington, DC: 1994</ref>。  DSM-5でもこうした分類の基本は変わらないが、身体表現性障害(somatoform disorder)は[[身体症状症]](somatic symptom disorder)に置き換えられた<ref name=ref5>'''American Psychiatric Association'''<pubmedbr>Diagnostic and statistical manual of mental disorders (5th ed.)</pubmedbr>Washington, DC: 2013</ref>。そのため変換症/転換性障害 (conversion disorder)(以下では変換症と表記する)は[[身体症状症群]]の下位分類となった。また変換症には[[機能性神経症状症]] (functional neurological symptom disorder)が併記された。DSM-5では、変換症はその持続が6ヶ月未満であれば急性エピソード、6ヶ月以上であれば持続性と特定する。
{| class="wikitable"
==危険要因==
 ジャネは解離と幼児期の外傷体験との関連を指摘していたが、変換症の患者には小児期の虐待やネグレクトがみられるという報告はいくつかある<ref name=ref6>'''Singh, S.P., Lee, A.S.'''<pubmedbr>Conversion disorders in Nottingham: alive, but not kicking.</pubmedbr>J''. Psychosom. Res'' : 1997, 43; 425-430</ref>。Rolofsらは、変換症の患者54名と感情障害の患者50名を比較した結果、変換症群は虐待の頻度がより高く、性的虐待がより長期間にわたり、近親姦の回数がより多かったこと報告した。また変換症と虐待の関係は部分的に催眠感受性によって説明することができると述べている<ref name=ref7><pubmed>12411227 </pubmed></ref>。
==併存症==
 変換症の併存診断には、[[気分障害]]、[[パニック症]]、[[全般不安症]]、[[外傷後ストレス障害]]、解離症、[[社交不安症]]、[[強迫症]]などが多い。変換症の1/3に[[大うつ病]]が併存しているという報告もある<ref name=ref8><pubmed>7872143 </pubmed></ref>。大うつ病と診断されたならば、[[抗うつ剤]]などで治療することが望ましい。[[パーソナリティ障害]]が変換症に認められることは多い。神経疾患あるいは他の医学的疾患もまた変換症とよく併存する。
 非てんかん性発作の患者の併存症としては、[[うつ病]]が12—100%、[[不安症]]が11—80%、解離症が90%、他の身体症状症が42—93%、パーソナリティ障害が33—66%である<ref name=ref9><pubmed>10496238 </pubmed></ref>。Reuberらは、非てんかん性発作の患者にはパーソナリティ障害が多くみられ、転帰はパーソナリティの特徴によって異なることを示した<ref name=ref10><pubmed>15090571 </pubmed></ref>。
 変換症は[[離人感]]、[[現実感消失]]、[[解離性健忘]]などの[[解離症状]]を伴っていることがある。とりわけ発症時や発作時に多いとされる。DSM-5では、変換症と解離症がともに存在するならば両方の診断が示唆されるとしている。Yayla, S<ref name=ref11><pubmed>25365395 </pubmed></ref>らの報告によると、変換症と診断された患者54名のうち37%が解離症状を呈していた。この群は解離症状がみられなかった変換症群に比較して、家族に精神病性障害、気分障害、不安症の患者が多かった。また変換症の発症年齢が早期であり、罹病期間が長かった。また[[双極性障害]]や外傷後ストレス障害の併存率が高く、変換症としてはより重症であることが示唆されたとしている。Sarらの報告でも、解離症状を呈する症例では、より多くの併存診断、幼少時の外傷歴、自殺企図がみられた<ref name=ref12><pubmed>15569899 </pubmed></ref>。解離症との高い併存率から、ICD-10のように変換症を解離症に含めたほうがよいと考える臨床家も多い<ref name=ref9 />。
==経過と予後==
 変換症は、数週間で症状が軽快することが多いが、そのうち20-25%は1年以内に再発したり、新しい変換症状を呈したりする<ref name=ref13><pubmed>7388262 </pubmed></ref> <ref name=ref14><pubmed>3585346 </pubmed></ref>。予後が良いのは、発症が急性であること、症状の持続が短期間であること、ストレス因が明らかである場合などである。長期間の症状持続、精神疾患の併存、非てんかん性発作のタイプなどは予後が悪いといわれる<ref name=ref15><pubmed>16946174 </pubmed></ref>。変換症の10年後の予後について報告によれば、73名の変換症患者のうち30名の症状は慢性化しており、11名は明らかな神経疾患が判明したという<ref name=ref16><pubmed>8879713 </pubmed></ref>。
==治療==
==疫学==
 変換症の症状は短期間で回復することが多いが、慢性症状については10万人あたり2〜5人といわれる。神経内科外来では患者の0.3%-5%が変換症ともいわれる。性別については女性が60-75%であり、女性は男性の2〜3倍とされる<ref name=ref5 /> <ref name=ref10 /> <ref name=ref17><pubmed>7022216 </pubmed></ref>。年齢は児童から高齢者まで広範囲にわたるが、8歳以下の児童ではまれである<ref name=ref18><pubmed>14485393 </pubmed></ref>。非てんかん性発作(偽発作)群は運動機能の障害を呈する群に比較して、発症年齢が低い、パーソナリティ障害の併存が多い、親から養育された感覚に乏しいなどの特徴がある<ref name=ref19><pubmed>15546826 </pubmed></ref>。
==関連項目==

案内メニュー