「境界性パーソナリティ障害」の版間の差分

ナビゲーションに移動 検索に移動
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
2行目: 2行目:
<font size="+1">[http://researchmap.jp/N-Hayashi55 林 直樹]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/N-Hayashi55 林 直樹]</font><br>
''帝京大学医学部精神神経科学教室''<br>
''帝京大学医学部精神神経科学教室''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年5月2日 原稿完成日:2016年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年5月2日 原稿完成日:2016年5月24日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](国立研究開発法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](国立研究開発法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
</div>
</div>


(<u>編集部コメント:一段落程度の抄録をお願いいたします</u>)
英語名:borderline personality disorder 英略語:BPD 独:Borderline-Persönlichkeitsstörung 仏:trouble de la personnalité borderline
 
{{box|text=
 境界性パーソナリティ障害は、パーソナリティ障害の1タイプである。その特徴は20世紀の初めに端を発する境界例の症状論的概念を引き継ぐものであり、そこから豊かな精神療法理論が発展したという点にある。現在では、そのパーソナリティ心理学との結びつきが明らかにされるなどの多くの臨床的研究が蓄積され、生物学的研究が活発に続けられている。わが国の精神科臨床では、それらの発展を日常の診療の中でどのように活かすかが重要な課題となっている。
}}
 
==はじめに==
 境界性パーソナリティ障害は、現在の精神科臨床において一般的な精神障害であり、特に思春期・青年期患者の診療や、物質使用障害や自殺未遂・自傷行為が問題になる精神科救急で扱われることの多い精神疾患である。
 
 その診断に該当するのは、次のようなケースである。ここには、境界性パーソナリティ障害に特徴的な感情・対人関係の不安定さ、衝動性が顕れている。


英語名:borderline personality disorder 英略語:BPD 独:Borderline-Persönlichkeitsstörung 仏:trouble de la personnalité borderline
  症例 Aさん 27歳,女性
  Aさんは、「怒ると止まらなくなる。自分でもそれが怖い」ということを主訴として母親と共に受診した。彼女の激しい怒りは、主に母と夫に向けられる。怒りは2-3時間で収束することが多いが、著しい興奮が持続すると、家具を壊したり、自らの四肢を包丁で刺したり、自分から110番をしてパトカーを呼んだりという行動に至る。その後,2児の母である彼女は、「自分のせいで子どもがちゃんと育たない」といった後悔や自己嫌悪に苛まれる。このような著しい気分の変動のせいで、「苦痛を忘れるため」に鎮痛剤の過量服薬を行うことがある。生活は不規則になりがちであるが、時折母親の支援を必要とするものの、家事をこなすことはできている。
 
  境界性パーソナリティ障害については、現在多くの臨床的実践が蓄積されつつあり、また、精神療法的研究などの臨床的研究、生物学的研究が活発に行われている<ref>'''Gunderson JG, Weinberg I, Choi-Kain L.'''<br>Borderline Personality Disorder. <br>''FOCUS''. 2013;11(2):129-145.</ref>。


==歴史的概観==
==歴史的概観==

案内メニュー