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<font size="+1">[http://researchmap.jp/masatoshiyoshida 吉田 正俊]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/masatoshiyoshida 吉田 正俊]</font><br> | ||
''自然科学研究機構生理学研究所 発達生理学研究系・認知行動発達研究部門''<br> | ''自然科学研究機構生理学研究所 発達生理学研究系・認知行動発達研究部門''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年12月21日 原稿完成日:2016年2月7日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中 啓治](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中 啓治](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
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英語名:saliency | 英語名:saliency | ||
類語・同義語:顕著性、サリエンス(salience) | 類語・同義語:顕著性、サリエンス(salience)、セイリエンス(salience)、セイランシー | ||
{{box|text= | {{box|text= | ||
[[感覚]]刺激が刺激の時間的または空間的配置によって[[ボトムアップ性注意]] | [[感覚]]刺激が刺激の時間的または空間的配置によって[[ボトムアップ性注意]]を誘引する特性を「サリエンシー」と呼ぶ。「サリエンシー・マップ」とは、視覚刺激のサリエンシーを計算して単一の二次元マップとして表現したもののことを指す。これは計算論的概念であって、脳にサリエンシー・マップが表現されている保証はない。しかしながら、サリエンシー・マップが表象されている部分としてこれまでに、[[一次視覚野]](primary visual cortex: [[V1]])、[[上丘]]、[[視床枕]]、[[Lateral intraparietal area]] ([[LIP]])、[[frontal eye field]] ([[FEF]]) などがその候補としてあげられている。 | ||
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== サリエンシー・マップ(saliency map) == | == サリエンシー・マップ(saliency map) == | ||
[[Image:サリエンシー3.png|thumb|300px|'''図2.サリエンシー計算論モデルでの主なステップ'''<br>入力する視覚情報は並行処理によって[1]低レベルの視覚特徴ごとに分析が行われ、側抑制メカニズムによって<ref name=ref1><pubmed> 3836989 </pubmed></ref>特徴ごとのサリエンシー(特徴マップ)が計算される。それらの特徴マプを足し合わせることで単一の<ref name=ref2>'''L. Itti, C. Koch, & E. Niebur'''<br>A Model of Saliency-Based Visual Attention for Rapid Scene Analysis.<br>''IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence'': 1998, 20(11):1254-1259.</ref>サリエンシー・マップが計算される。<ref><pubmed>28044023</pubmed></ref>より許可のもと改変して作成。/ CC-BY 4.0)]] | |||
[[Image:Masatoshiyoshida_fig_2.png|thumb|300px|'''図3.サリエンシー・マップ''']] | |||
特徴統合理論はあくまで心理学的な理論であったが、計算論的立場からどのようにボトムアップ性注意が計算されているかを説明するモデルとして「サリエンシー・マップ」が提唱された<ref name=ref1><pubmed> 3836989 </pubmed></ref>。 | 特徴統合理論はあくまで心理学的な理論であったが、計算論的立場からどのようにボトムアップ性注意が計算されているかを説明するモデルとして「サリエンシー・マップ」が提唱された<ref name=ref1><pubmed> 3836989 </pubmed></ref>。 | ||
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* Winner-take-allルール:これら複数の特徴マップが足しあわされて計算されたサリエンシー・マップの中からいちばんサリエンシーの高い部分が選択される。 | * Winner-take-allルール:これら複数の特徴マップが足しあわされて計算されたサリエンシー・マップの中からいちばんサリエンシーの高い部分が選択される。 | ||
Koch and Ulman 1985<ref name=ref1></ref>においてはあくまで計算の原理のモデルであったのだが、それを実際の画像から計算できるようなモデルとして実現したのがItti, Koch and | Koch and Ulman 1985<ref name=ref1></ref>においてはあくまで計算の原理のモデルであったのだが、それを実際の画像から計算できるようなモデルとして実現したのがItti, Koch and Neiburによるサリエンシー計算論モデルだった(図2)<ref name=ref2>'''L. Itti, C. Koch, & E. Niebur'''<br>A Model of Saliency-Based Visual Attention for Rapid Scene Analysis.<br>''IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence'': 1998, 20(11):1254-1259.</ref>。 | ||
このモデルのアルゴリズムレベルでの特色としては、 | このモデルのアルゴリズムレベルでの特色としては、 | ||
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がある 。 | がある 。 | ||
この計算論モデルはC++ソフトウェアとして、[http://ilab.usc.edu/toolkit/ 南カリフォルニア大学Ittiラボ]より、ソースが[[wikipedia:ja:GNU General Public License|GNU General Public License]]に基づいて入手できるようになっている。 | この計算論モデルはC++ソフトウェアとして、[http://ilab.usc.edu/toolkit/ 南カリフォルニア大学Ittiラボ]より、ソースが[[wikipedia:ja:GNU General Public License|GNU General Public License]]に基づいて入手できるようになっている。 | ||
このソフトウェアを使って図1の画像のサリエンシーを計算したのが図3となる。 | |||
ほかにもMatlabでのサリエンシー・マップを計算するプログラムとして以下のものがwebから入手可能である。 | ほかにもMatlabでのサリエンシー・マップを計算するプログラムとして以下のものがwebから入手可能である。 |