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Junko kurahashi (トーク | 投稿記録) 細 (→モルフォゲンモデル) |
Junko kurahashi (トーク | 投稿記録) 細 (→濃度勾配の形成と維持) |
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細胞外マトリックスたんぱく質のうち、主なものは[[ヘパラン硫酸プロテオグリカン]](HSPG; heparin sulfate proteoglycan)と総称される糖タンパク質で、このうち[[グリピカン]]や[[シンデカン]]がモルフォゲン産生細胞の周辺部に分布してモルフォゲンに結合し、モルフォゲンの拡散を助け、あるいは抑制して濃度勾配の維持に関与すると示唆されている<ref name=YanD2009 />30。例えばGlypican-3(GPC3)はShhやWntに結合することが示されているが、Wntシグナルを増強する一方で、Shhシグナルを弱化する<ref name=Capurro2008><pubmed> 18477453</pubmed></ref><ref><pubmed>16024626</pubmed></ref>34,35。特にShhはGPC3の糖鎖に結合してエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれ、リソソームによる分解系に送り込まれる<ref name=Capurro2008 />34。逆に、GPC3のノックアウトマウスではShhシグナルの異常亢進を起こしている。 | 細胞外マトリックスたんぱく質のうち、主なものは[[ヘパラン硫酸プロテオグリカン]](HSPG; heparin sulfate proteoglycan)と総称される糖タンパク質で、このうち[[グリピカン]]や[[シンデカン]]がモルフォゲン産生細胞の周辺部に分布してモルフォゲンに結合し、モルフォゲンの拡散を助け、あるいは抑制して濃度勾配の維持に関与すると示唆されている<ref name=YanD2009 />30。例えばGlypican-3(GPC3)はShhやWntに結合することが示されているが、Wntシグナルを増強する一方で、Shhシグナルを弱化する<ref name=Capurro2008><pubmed> 18477453</pubmed></ref><ref><pubmed>16024626</pubmed></ref>34,35。特にShhはGPC3の糖鎖に結合してエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれ、リソソームによる分解系に送り込まれる<ref name=Capurro2008 />34。逆に、GPC3のノックアウトマウスではShhシグナルの異常亢進を起こしている。 | ||
一方、他のグリピカンについては、[[ショウジョウバエ]]を用いた実験から別のメカニズムが提唱されている。GPC4やGPC6のショウジョウバエホモログ[[Dally-like]](Dlp)は、同じく[[Hh]]や[[Wg]](Wntのショウジョウバエホモログ)に結合し、エンドサイトーシスによって細胞内に取り込む<ref><pubmed>18477454</pubmed></ref>36が、Hhは分解されず[[トランスサイトーシス]]され、Wgは分解形に送り込まれる<ref><pubmed> 18591969</pubmed></ref>37。このように、グリピカンなどの細胞外マトリックスタンパク質によるシグナル分子への結合、細胞内への取り込み、拡散・分解のシステムはシグナル分子特異的である。 | 一方、他のグリピカンについては、[[ショウジョウバエ]]を用いた実験から別のメカニズムが提唱されている。GPC4やGPC6のショウジョウバエホモログ[[Dally-like]](Dlp)は、同じく[[Hh]]や[[Wg]](Wntのショウジョウバエホモログ)に結合し、エンドサイトーシスによって細胞内に取り込む<ref><pubmed>18477454</pubmed></ref>36が、Hhは分解されず[[トランスサイトーシス]]され、Wgは分解形に送り込まれる<ref><pubmed> 18591969</pubmed></ref>37。このように、グリピカンなどの細胞外マトリックスタンパク質によるシグナル分子への結合、細胞内への取り込み、拡散・分解のシステムはシグナル分子特異的である。 | ||
エンドサイトーシスによるモルフォゲンの取り込みに関しては[[ゼブラフィッシュ]]における[[リアルタイムイメージング]]によっても示されている。このように、細胞がモルフォゲン分子を取り込んで分解する様子は、分子を積極的に排除することを意味し、湧き出したモルフォゲンが流し台で排出される様子に例えることができるので、「[[source-sink model]](湧き出しと排水モデル)」と呼ばれる<ref name=Schier2009 /><ref name=YanD2009 /><ref><pubmed> | エンドサイトーシスによるモルフォゲンの取り込みに関しては[[ゼブラフィッシュ]]における[[リアルタイムイメージング]]によっても示されている。このように、細胞がモルフォゲン分子を取り込んで分解する様子は、分子を積極的に排除することを意味し、湧き出したモルフォゲンが流し台で排出される様子に例えることができるので、「[[source-sink model]](湧き出しと排水モデル)」と呼ばれる<ref name=Schier2009 /><ref name=YanD2009 /><ref><pubmed>19741606</pubmed></ref>27,30,38。以上のように、拡散と分解のバランスが組織内におけるモルフォゲンの濃度勾配を調節していると言える。 | ||
==関連項目== | ==関連項目== |