「音源定位」の版間の差分

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 哺乳類において始めにITD検出を行う神経核はMSOである。MSO細胞は内側と外側の両極に分枝した樹状突起をもつ。外側[[樹状突起]]には同側の、内側樹状突起には対側のAVCNからの投射[[軸索]]が[[シナプス]]を形成し細胞体での同時検出が行われる<ref name=grothe2010><pubmed>20664077</pubmed></ref>(Ref.6)。
 哺乳類において始めにITD検出を行う神経核はMSOである。MSO細胞は内側と外側の両極に分枝した樹状突起をもつ。外側[[樹状突起]]には同側の、内側樹状突起には対側のAVCNからの投射[[軸索]]が[[シナプス]]を形成し細胞体での同時検出が行われる<ref name=grothe2010><pubmed>20664077</pubmed></ref>(Ref.6)。


[[ネコ]]や[[wj:モルモット|モルモット]]を用いた実験から、AVCNからの軸索がdelay lineを形成すること、それにより個々のMSO細胞は最適なITDを持つことなど、Jeffressモデルに対応する特徴が示されている<ref name=joris2007><pubmed>17188761</pubmed></ref>(Ref.7)。しかしモルモット等の小動物においては、頭の大きさから予測される生理的ITDの範囲から外れた位置にITD応答のピークを持つ細胞も観察され、Jeffressモデルで説明しきれない要素も存在する<ref name=joris2007/>(Ref.7)。
 [[ネコ]]や[[wj:モルモット|モルモット]]を用いた実験から、AVCNからの軸索がdelay lineを形成すること、それにより個々のMSO細胞は最適なITDを持つことなど、Jeffressモデルに対応する特徴が示されている<ref name=joris2007><pubmed>17188761</pubmed></ref>(Ref.7)。しかしモルモット等の小動物においては、頭の大きさから予測される生理的ITDの範囲から外れた位置にITD応答のピークを持つ細胞も観察され、Jeffressモデルで説明しきれない要素も存在する<ref name=joris2007/>(Ref.7)。


 さらに[[wj:スナネズミ|スナネズミ]]を用いた最近の研究が示すところによると、ITD応答曲線のピークは200-300マイクロ秒ほど反対側が先行する方向にずれた位置に集中しているという報告もある<ref><pubmed>12037566</pubmed></ref>('''図4''', Ref.8)。つまりスナネズミにおいてはdelay lineが存在しないことが推測され、必ずしもJeffressモデルに合致しない動物も存在するようである。このような動物のMSOにおいては、生理的な範囲では神経活動とITDが一義的に対応し、多くのMSO細胞は音源の位置が対側へ向かうほど発火確率を上げる。このような所見から、音源の位置によるMSO細胞群の発火頻度変化を上位神経核が総合的に判断することでITD検出を行うというモデルも提唱されている<ref name=grothe2010/>(Ref.6)。
 さらに[[wj:スナネズミ|スナネズミ]]を用いた最近の研究が示すところによると、ITD応答曲線のピークは200-300マイクロ秒ほど反対側が先行する方向にずれた位置に集中しているという報告もある<ref><pubmed>12037566</pubmed></ref>('''図4''', Ref.8)。つまりスナネズミにおいてはdelay lineが存在しないことが推測され、必ずしもJeffressモデルに合致しない動物も存在するようである。このような動物のMSOにおいては、生理的な範囲では神経活動とITDが一義的に対応し、多くのMSO細胞は音源の位置が対側へ向かうほど発火確率を上げる。このような所見から、音源の位置によるMSO細胞群の発火頻度変化を上位神経核が総合的に判断することでITD検出を行うというモデルも提唱されている<ref name=grothe2010/>(Ref.6)。

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