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 プロスタグランジンは五員環構造を含む20個の炭素鎖からなる生理活性[[wikipedia:ja:脂質|脂質]]である<ref name="ref1"><pubmed>116251</pubmed></ref>。プロスタグランジンと構造の類似した[[トロンボキサン]]を併せてプロスタノイド(prostanoid)と称する。1930年に[[wikipedia:ja:ヒト|ヒト]]の[[wikipedia:ja:精液|精液]]に含まれる[[wikipedia:ja:子宮|子宮]]収縮物質として発見された。[[wikipedia:ja:非ステロイド性抗炎症薬|非ステロイド性抗炎症薬]](NSAID)の抗[[wikipedia:ja:炎症|炎症]]作用、[[wikipedia:ja:鎮痛|鎮痛]]作用、[[wikipedia:ja:解熱|解熱]]作用は、主にプロスタノイドの合成阻害によると考えられている<ref name="ref2"><pubmed>9597150</pubmed></ref>。生体には五員環構造の側鎖や炭素鎖の二重結合の数の異なる多種のプロスタノイドが存在するが、これまでの研究では主にプロスタグランジンD<sub>2</sub> (PGD<sub>2</sub>)、プロスタグランジンE<sub>2</sub>(PGE<sub>2</sub>)、プロスタグランジンF<sub>2α</sub>(PGF<sub>2α</sub>)、 プロスタサイクリン(プロスタグランジンI<sub>2</sub>、PGI<sub>2</sub>)、トロンボキサンA<sub>2</sub>(TXA<sub>2</sub>)の役割が解析されてきた。PGD<sub>2</sub>、PGE<sub>2</sub>、PGF<sub>2α</sub>、PGI<sub>2</sub>、TXA<sub>2</sub>はDP、EP、FP、IP、TPと呼ばれる特異的な[[Gタンパク質共役型受容体]]を介して、多様な生理機能、病態生理機能に関わる<ref name="ref3"><pubmed>21357250</pubmed></ref>。これらの機能には、[[wikipedia:ja:循環器|循環器]]・[[wikipedia:ja:消化器|消化器]]・[[wikipedia:ja:骨|骨]]の[[wikipedia:ja:恒常性|恒常性]]維持、[[wikipedia:ja:卵巣|卵巣]]や子宮といった[[wikipedia:ja:生殖器|生殖器]]の機能、局所炎症に伴う[[wikipedia:ja:血管透過性|血管透過性]]亢進や[[wikipedia:ja:疼痛|疼痛]]惹起、[[wikipedia:ja:細胞性免疫|細胞性免疫]]応答、[[睡眠]]、疾病時の発熱や[[wikipedia:ja:内分泌|内分泌]]応答、[[神経変性疾患]]や[[脳虚血]]に伴う[[神経細胞死]]、脳機能的充血、[[シナプス可塑性]]や[[記憶学習]]、[[心理ストレス]]下での[[情動]]制御などが含まれる。
 プロスタグランジンは五員環構造を含む20個の炭素鎖からなる生理活性[[wj:脂質|脂質]]である<ref name="ref1"><pubmed>116251</pubmed></ref>。プロスタグランジンと構造の類似した[[トロンボキサン]]を併せてプロスタノイド(prostanoid)と称する。1930年に[[wj:ヒト]]の[[wj:精液]]に含まれる[[wj:子宮]]収縮物質として発見された。[[wj:非ステロイド性抗炎症薬]](NSAID)の抗[[wj:炎症]]作用、[[wj:鎮痛]]作用、[[wj:解熱]]作用は、主にプロスタノイドの合成阻害によると考えられている<ref name="ref2"><pubmed>9597150</pubmed></ref>。生体には五員環構造の側鎖や炭素鎖の二重結合の数の異なる多種のプロスタノイドが存在するが、これまでの研究では主にプロスタグランジンD<sub>2</sub> (PGD<sub>2</sub>)、プロスタグランジンE<sub>2</sub>(PGE<sub>2</sub>)、プロスタグランジンF<sub>2α</sub>(PGF<sub>2α</sub>)、 プロスタサイクリン(プロスタグランジンI<sub>2</sub>、PGI<sub>2</sub>)、トロンボキサンA<sub>2</sub>(TXA<sub>2</sub>)の役割が解析されてきた。PGD<sub>2</sub>、PGE<sub>2</sub>、PGF<sub>2α</sub>、PGI<sub>2</sub>、TXA<sub>2</sub>はDP、EP、FP、IP、TPと呼ばれる特異的な[[Gタンパク質共役型受容体]]を介して、多様な生理機能、病態生理機能に関わる<ref name="ref3"><pubmed>21357250</pubmed></ref>。これらの機能には、[[wj:循環器|循環器]]・[[wj:消化器|消化器]]・[[wj:骨|骨]]の[[wj:恒常性|恒常性]]維持、[[wj:卵巣|卵巣]]や子宮といった[[wj:生殖器|生殖器]]の機能、局所炎症に伴う[[wj:血管透過性|血管透過性]]亢進や[[wj:疼痛|疼痛]]惹起、[[wj:細胞性免疫|細胞性免疫]]応答、[[睡眠]]、疾病時の発熱や[[wj:内分泌|内分泌]]応答、[[神経変性疾患]]や[[脳虚血]]に伴う[[神経細胞死]]、脳機能的充血、[[シナプス可塑性]]や[[記憶学習]]、[[心理ストレス]]下での[[情動]]制御などが含まれる。
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[[Image:ProstanoidSignaling.jpg|thumb|350px|'''図 プロスタグランジン合成経路''']]
[[Image:ProstanoidSignaling.jpg|thumb|350px|'''図 プロスタグランジン合成経路''']]


== プロスタグランジン生合成 ==
==生合成 ==


 炭素鎖内の二重結合を二つ有するPGD<sub>2</sub>、PGE<sub>2</sub>、PGF<sub>2α</sub>、PGI<sub>2</sub>、TXA<sub>2</sub>は、遊離[[アラキドン酸]]から生成される<ref name="ref2" /><ref name="ref3" /><ref name="ref4"><pubmed>21942677</pubmed></ref><ref name="ref5"><pubmed>18834304</pubmed></ref><ref name="ref6"><pubmed>14636669</pubmed></ref>。まず、酸素添加酵素である[[シクロオキシゲナーゼ]]([[cyclooxygenase]]; [[COX]])により、アラキドン酸からプロスタグランジンG<sub>2</sub>(PGG<sub>2</sub>)、さらにプロスタグランジンH<sub>2</sub>(PGH<sub>2</sub>)が産生される。次いで特異的な合成酵素の働きにより、PGH<sub>2</sub>が各種PGに変換される。
 炭素鎖内の二重結合を二つ有する[[PGD2|PGD<sub>2</sub>]]、[[PGE2|PGE<sub>2</sub>]]、[[PGF2|PGF<sub>2α</sub>]]、[[PGI2|PGI<sub>2</sub>]]、[[TXA2|TXA<sub>2</sub>]]は、遊離[[アラキドン酸]]から生成される<ref name="ref2" /><ref name="ref3" /><ref name="ref4"><pubmed>21942677</pubmed></ref><ref name="ref5"><pubmed>18834304</pubmed></ref><ref name="ref6"><pubmed>14636669</pubmed></ref>。まず、酸素添加酵素である[[シクロオキシゲナーゼ]]([[cyclooxygenase]]; [[COX]])により、アラキドン酸から[[プロスタグランジンG2|プロスタグランジンG<sub>2</sub>]]([[PGG2|PGG<sub>2</sub>]])、さらに[[プロスタグランジンH2|プロスタグランジンH<sub>2</sub>]]([[PGH2|PGH<sub>2</sub>]])が産生される。次いで特異的な合成酵素の働きにより、[[PGH2|PGH<sub>2</sub>]]が各種PGに変換される。


 一般にPG生成は[[phospholipase A2|phospholipase A<sub>2</sub>]](PLA<sub>2</sub>)により細胞膜中のリン脂質からアラキドン酸が切り出されて開始すると考えられている<ref name="ref5" /><ref name="ref6" />。例えば、[[wikipedia:ja:マクロファージ|マクロファージ]]からのPG産生は[[cytosolic PLA2|cytosolic PLA<sub>2</sub>]] (cPLA<sub>2</sub>)の遺伝子欠損によりほぼ完全に消失する。cPLA<sub>2</sub>の活性は細胞内[[Ca2+|Ca<sup>2+</sup>]]上昇によるcPLA<sub>2</sub>の膜移行、[[MAPキナーゼ]]などによる[[リン酸化]]、遺伝子発現制御といった複数のメカニズムにより制御されている。しかし近年、脳、肝臓、肺の遊離アラキドン酸とその下流で生成されるPGの多くが、[[モノアシルグリセロールリパーゼ]](monoacylglycerol lipase; MAGL)依存的な[[内因性カナビノイド]][[2-アラキドノイルグリセロール]](2-arachidonyl-glycerol; 2-AG)の[[wikipedia:ja:加水分解|加水分解]]により生ずることが報告されている<ref name="ref7"><pubmed> 22021672 </pubmed></ref>。
 一般にPG生成は[[ホスホリパーゼA2|ホスホリパーゼA<sub>2</sub>]](PLA<sub>2</sub>)により細胞膜中のリン脂質からアラキドン酸が切り出されて開始すると考えられている<ref name="ref5" /><ref name="ref6" />。例えば、[[wj:マクロファージ|マクロファージ]]からのPG産生は[[cytosolic PLA2|cytosolic PLA<sub>2</sub>]] (cPLA<sub>2</sub>)の遺伝子欠損によりほぼ完全に消失する。cPLA<sub>2</sub>の活性は細胞内[[Ca2+|Ca<sup>2+</sup>]]上昇によるcPLA<sub>2</sub>の膜移行、[[MAPキナーゼ]]などによる[[リン酸化]]、遺伝子発現制御といった複数のメカニズムにより制御されている。しかし近年、脳、肝臓、肺の遊離アラキドン酸とその下流で生成されるPGの多くが、[[モノアシルグリセロールリパーゼ]](monoacylglycerol lipase; MAGL)依存的な[[内因性カナビノイド]][[2-アラキドノイルグリセロール]](2-arachidonyl-glycerol; 2-AG)の[[wj:加水分解|加水分解]]により生ずることが報告されている<ref name="ref7"><pubmed> 22021672 </pubmed></ref>。


 COXには[[COX-1]]と[[COX-2]]と呼ばれる二つのアイソフォームが存在する<ref name="ref2" /><ref name="ref3" /><ref name="ref4" /><ref name="ref5" /><ref name="ref6" />。一般に、COX-1は刺激による誘導性が乏しいことから構成型と呼ばれ、COX-2は刺激により[[遺伝子発現]]が誘導されることから誘導型と呼ばれるが、[[脳]]や[[wikipedia:ja:腎臓|腎臓]]ではCOX-1、COX-2のいずれも恒常的に発現している。生理的条件ではCOX-1は[[ミクログリア]]や血管周囲マクロファージに<ref name="ref8"><pubmed>22022466</pubmed></ref>、COX-2は[[大脳皮質]]や[[海馬]]などの[[錐体細胞]]に発現している<ref name="ref9"><pubmed>8352945</pubmed></ref>。さらに炎症や神経変性疾患では、[[血管内皮細胞]]や[[グリア細胞]]にもCOX-2の発現が誘導される<ref name="ref10"><pubmed>15353317</pubmed></ref><ref name="ref11"><pubmed>15081582</pubmed></ref>。COXは[[wikipedia:ja:非ステロイド性抗炎症薬|非ステロイド性抗炎症薬]](NSAID)の主たる標的分子であり、NSAIDの抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用はPGの合成阻害活性によると考えられている<ref name="ref2" />。
 COXには[[COX-1]]と[[COX-2]]と呼ばれる二つのアイソフォームが存在する<ref name="ref2" /><ref name="ref3" /><ref name="ref4" /><ref name="ref5" /><ref name="ref6" />。一般に、COX-1は刺激による誘導性が乏しいことから構成型と呼ばれ、COX-2は刺激により[[遺伝子発現]]が誘導されることから誘導型と呼ばれるが、[[脳]]や[[wj:腎臓|腎臓]]ではCOX-1、COX-2のいずれも恒常的に発現している。生理的条件ではCOX-1は[[ミクログリア]]や血管周囲マクロファージに<ref name="ref8"><pubmed>22022466</pubmed></ref>、COX-2は[[大脳皮質]]や[[海馬]]などの[[錐体細胞]]に発現している<ref name="ref9"><pubmed>8352945</pubmed></ref>。さらに炎症や神経変性疾患では、[[血管内皮細胞]]や[[グリア細胞]]にもCOX-2の発現が誘導される<ref name="ref10"><pubmed>15353317</pubmed></ref><ref name="ref11"><pubmed>15081582</pubmed></ref>。COXは[[wj:非ステロイド性抗炎症薬|非ステロイド性抗炎症薬]](NSAID)の主たる標的分子であり、NSAIDの抗炎症作用、鎮痛作用、解熱作用はPGの合成阻害活性によると考えられている<ref name="ref2" />。


 PGH<sub>2</sub>から各種PG合成を触媒する酵素群も多数同定されている<ref name="ref4" /><ref name="ref6" />。PGH<sub>2</sub>からPGD<sub>2</sub>の合成には[[PGD合成酵素]](PGDS)が関与し、[[造血器型PGDS]](hematopoietic PGDS; H-PGDS)と[[リポカリン型PGDS]](lipocalin-type PGDS; L-PGDS)の二種類が存在する<ref name="ref12"><pubmed>12432930</pubmed></ref>。PGH<sub>2</sub>からPGE<sub>2</sub>の合成に関わる[[PGE合成酵素]](PGES)には、[[cytosolic PGES]](cPGES)、[[microsomal PGES-1]](mPGES-1)、[[microsomal PGES-2]](mPGES-2)の三つのアイソフォームが報告され、それぞれ異なる機能を有することが示されている<ref name="ref6" />。COXとPGESの共役にはアイソフォーム特異性があることが知られ、cPGESはCOX-1と、mPGES-1はCOX-2と、mPGES-2はCOX-1とCOX-2の両方と共役しPGE<sub>2</sub>合成に関わるとされる。PGH<sub>2</sub>からPGF<sub>2α</sub>の合成には[[PGF合成酵素]](PGFS)が関与し、現在まで[[aldo-keto reductase (AKR) 1C]] familyや[[AKR5A]] familyがPGFS活性を持つことが報告されている<ref name="ref13"><pubmed>12432932</pubmed></ref>。PGH<sub>2</sub>からPGI<sub>2</sub>やTXA<sub>2</sub>の合成には[[シトクロームp450]]ファミリーに属する[[PGI合成酵素]](PGIS)や[[TXA合成酵素]](TXAS)が関与する<ref name="ref14"><pubmed>8777569</pubmed></ref>。
 PGH<sub>2</sub>から各種PG合成を触媒する酵素群も多数同定されている<ref name="ref4" /><ref name="ref6" />。PGH<sub>2</sub>からPGD<sub>2</sub>の合成には[[PGD合成酵素]](PGDS)が関与し、[[造血器型PGDS]](hematopoietic PGDS; H-PGDS)と[[リポカリン型PGDS]](lipocalin-type PGDS; L-PGDS)の二種類が存在する<ref name="ref12"><pubmed>12432930</pubmed></ref>。PGH<sub>2</sub>からPGE<sub>2</sub>の合成に関わる[[PGE合成酵素]](PGES)には、[[cytosolic PGES]](cPGES)、[[microsomal PGES-1]](mPGES-1)、[[microsomal PGES-2]](mPGES-2)の三つのアイソフォームが報告され、それぞれ異なる機能を有することが示されている<ref name="ref6" />。COXとPGESの共役にはアイソフォーム特異性があることが知られ、cPGESはCOX-1と、mPGES-1はCOX-2と、mPGES-2はCOX-1とCOX-2の両方と共役しPGE<sub>2</sub>合成に関わるとされる。PGH<sub>2</sub>からPGF<sub>2α</sub>の合成には[[PGF合成酵素]](PGFS)が関与し、現在まで[[aldo-keto reductase (AKR) 1C]] familyや[[AKR5A]] familyがPGFS活性を持つことが報告されている<ref name="ref13"><pubmed>12432932</pubmed></ref>。PGH<sub>2</sub>からPGI<sub>2</sub>やTXA<sub>2</sub>の合成には[[シトクロームp450]]ファミリーに属する[[PGI合成酵素]](PGIS)や[[TXA合成酵素]](TXAS)が関与する<ref name="ref14"><pubmed>8777569</pubmed></ref>。


== プロスタグランジン受容体  ==
==受容体==


 PGD<sub>2</sub>、PGE<sub>2</sub>、PGF<sub>2α</sub>、PGI<sub>2</sub>、TXA<sub>2</sub>は、それぞれ[[DP]]、[[EP]]、[[FP]]、[[IP]]、[[TP]]と呼ばれるGタンパク質共役型受容体に結合して作用を発揮する<ref name="ref3" />。DPには[[DP1]]と[[DP2]]が、EPには[[EP1]]、[[EP2]]、[[EP3]]、[[EP4]]が存在し、それぞれ異なる遺伝子によりコードされている。  
 PGD<sub>2</sub>、PGE<sub>2</sub>、PGF<sub>2α</sub>、PGI<sub>2</sub>、TXA<sub>2</sub>は、それぞれ[[DP受容体|DP]]、[[EP受容体|EP]]、[[FP受容体|FP]]、[[IP受容体|IP]]、[[TP受容体|TP]]と呼ばれるGタンパク質共役型受容体に結合して作用を発揮する<ref name="ref3" />。DPには[[DP1]]と[[DP2]]が、EPには[[EP1受容体|EP1]]、[[EP2受容体|EP2]]、[[EP3受容体|EP3]]、[[EP4受容体|EP4]]が存在し、それぞれ異なる遺伝子によりコードされている。  


 これらPG受容体は組織、細胞レベルの発現分布や[[細胞内情報伝達]]が異なることで、特異的な機能を発揮すると考えられている<ref name="ref3" />。DP2以外の八種の受容体はプロスタノイド受容体ファミリーを形成し、細胞内情報伝達とその作用からrelaxant receptor、contractile receptor、inhibitory receptorの三種に分類されている<ref name="ref3" />。Relaxant receptorは主に[[Gs]]を介して[[CAMP]]上昇を惹起し[[平滑筋]]の弛緩を誘導する受容体で、DP1、EP2、EP4、IPを含む。Contractile receptorは主に細胞内Ca<sup>2+</sup>上昇を惹起し平滑筋の収縮を誘導する受容体で、TP、FP、EP1を含む。Inhibitory receptorは主に[[Gi]]を介する[[cAMP]]抑制により平滑筋の弛緩を抑制する受容体で、EP3を含む。但し、EP3にはマウスでは三種、ヒトでは四種のalternative splicingアイソフォームが存在し、ヒトTPにもαとβと呼ばれる二つのアイソフォームが存在する。これらのアイソフォームは異なる細胞内情報伝達に共役することが知られている。DP2は他の八種の受容体とは別のファミリーに属し、CRTH2やGPR44とも称される<ref name="ref15"><pubmed>12895600</pubmed></ref>。Giと共役して[[Th2細胞]]、[[wikipedia:ja:好酸球|好酸球]]、[[wikipedia:ja:好塩基球|好塩基球]]の遊走を誘導することが知られている。  
 これらPG受容体は組織、細胞レベルの発現分布や[[細胞内情報伝達]]が異なることで、特異的な機能を発揮すると考えられている<ref name="ref3" />。DP2以外の八種の受容体はプロスタノイド受容体ファミリーを形成し、細胞内情報伝達とその作用からrelaxant receptor、contractile receptor、inhibitory receptorの三種に分類されている<ref name="ref3" />。Relaxant receptorは主に[[Gs]]を介して[[CAMP]]上昇を惹起し[[平滑筋]]の弛緩を誘導する受容体で、DP1、EP2、EP4、IPを含む。Contractile receptorは主に細胞内Ca<sup>2+</sup>上昇を惹起し平滑筋の収縮を誘導する受容体で、TP、FP、EP1を含む。Inhibitory receptorは主に[[Gi]]を介する[[cAMP]]抑制により平滑筋の弛緩を抑制する受容体で、EP3を含む。但し、EP3にはマウスでは三種、ヒトでは四種のalternative splicingアイソフォームが存在し、ヒトTPにもαとβと呼ばれる二つのアイソフォームが存在する。これらのアイソフォームは異なる細胞内情報伝達に共役することが知られている。DP2は他の八種の受容体とは別のファミリーに属し、CRTH2やGPR44とも称される<ref name="ref15"><pubmed>12895600</pubmed></ref>。Giと共役して[[Th2細胞]]、[[wj:好酸球|好酸球]]、[[wj:好塩基球|好塩基球]]の遊走を誘導することが知られている。  


 このように、プロスタグランジンの生合成や作用に関わる分子種は多岐にわたるが、PGを標的とした従来の化合物は特異性が低く、各種PGの作用機序は長らく不明であった。PG生合成酵素群やPG受容体の同定とクローニングが進み、[[遺伝子欠損マウス]]や特異的阻害薬が開発されたことで、各種PGとその受容体の特異的な役割が解明されてきた。本稿では、脳機能と関連の深い機能に限って紹介する。<br>  
 このように、プロスタグランジンの生合成や作用に関わる分子種は多岐にわたるが、PGを標的とした従来の化合物は特異性が低く、各種PGの作用機序は長らく不明であった。PG生合成酵素群やPG受容体の同定とクローニングが進み、[[遺伝子欠損マウス]]や特異的阻害薬が開発されたことで、各種PGとその受容体の特異的な役割が解明されてきた。本稿では、脳機能と関連の深い機能に限って紹介する。<br>  
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=== 疾病応答  ===
=== 疾病応答  ===


 感染や組織損傷は局所炎症に留まらず、発熱、[[視床下部-下垂体-副腎系]](hypothalamus-pituitary-adrenal axis; HPA)活性化、[[食欲]]不振、[[疲労]]、[[傾眠]]、[[痛覚]]過敏といった全身症状を呈する<ref name="ref16"><pubmed>18073775</pubmed></ref>。これらの症状は[[wikipedia:ja:疾病応答|疾病応答]](sickness behavior; sickness response)と呼ばれ、生存を促進する適応的反応と考えられている。PG合成を阻害するNSAIDはこれらの多くの症状を改善することから、疾病応答におけるPGの役割が推測されてきた<ref name="ref17"><pubmed>22837039</pubmed></ref><ref name="ref18"><pubmed>19275907</pubmed></ref>。[[wikipedia:ja:細菌|細菌]][[wikipedia:ja:内毒素|内毒素]]である[[wikipedia:ja:リポ多糖類|リポ多糖類]](lipopolysaccharide; LPS)や[[サイトカイン]]の一種[[IL-1β]]を末梢に投与すると疾病応答の多くが再現されることから、疾病応答におけるPGE<sub>2</sub>の作用機序に関する研究にはLPSやIL-1βを全身投与した小動物を用いた疾病応答モデルが主に用いられてきた。  
 感染や組織損傷は局所炎症に留まらず、発熱、[[視床下部-下垂体-副腎系]](hypothalamus-pituitary-adrenal axis; HPA)活性化、[[食欲]]不振、[[疲労]]、[[傾眠]]、[[痛覚]]過敏といった全身症状を呈する<ref name="ref16"><pubmed>18073775</pubmed></ref>。これらの症状は[[wj:疾病応答|疾病応答]](sickness behavior; sickness response)と呼ばれ、生存を促進する適応的反応と考えられている。PG合成を阻害するNSAIDはこれらの多くの症状を改善することから、疾病応答におけるPGの役割が推測されてきた<ref name="ref17"><pubmed>22837039</pubmed></ref><ref name="ref18"><pubmed>19275907</pubmed></ref>。[[wj:細菌|細菌]][[wj:内毒素|内毒素]]である[[wj:リポ多糖類|リポ多糖類]](lipopolysaccharide; LPS)や[[サイトカイン]]の一種[[IL-1β]]を末梢に投与すると疾病応答の多くが再現されることから、疾病応答におけるPGE<sub>2</sub>の作用機序に関する研究にはLPSやIL-1βを全身投与した小動物を用いた疾病応答モデルが主に用いられてきた。  


=== 発熱  ===
=== 発熱  ===


 [[視床下部]][[視索前野]]へのNSAIDやPGE2の局所注入実験により、視索前野におけるPGE2産生が疾病応答モデルによる[[体温調節の神経回路|発熱]]に寄与することが示唆されてきた<ref name="ref17" />。その後、[[遺伝子改変マウス]]の解析により、PGE2生合成に関わるCOX-2とmPGES-1が疾病応答モデルにおける発熱に必須であることが示された<ref name="ref19"><pubmed>10216176</pubmed></ref><ref name="ref20"><pubmed>14566340</pubmed></ref>。LPSの全身投与により、COX-2とmPGES-1が脳内の[[wikipedia:ja:血管内皮|血管内皮]]細胞に共に誘導されることから、疾病時の発熱には血管内皮細胞からのPGE2産生が関与することが示唆された<ref name="ref10" /><ref name="ref21"><pubmed>11306620</pubmed></ref>。しかし、血管内皮細胞でのCOX-2とmPGES-1の遺伝子発現誘導はLPS投与から一時間程度の発熱の初期相には見られない。一方、[[wikipedia:ja:肺|肺]]や[[wikipedia:ja:肝臓|肝臓]]におけるマクロファージではCOX-2の発現は末梢へのLPS投与により速やかに誘導され、末梢血中のPGE2濃度も速やかに上昇する<ref name="ref22"><pubmed>16933973</pubmed></ref>。さらに末梢血中へのPGE2阻害[[wikipedia:ja:抗体|抗体]]投与により発熱が遅延することから、発熱の初期相には脳外で産生されたPGE2の関与が示唆された<ref name="ref22" />。
 [[視床下部]][[視索前野]]へのNSAIDやPGE2の局所注入実験により、視索前野におけるPGE2産生が疾病応答モデルによる[[体温調節の神経回路|発熱]]に寄与することが示唆されてきた<ref name="ref17" />。その後、[[遺伝子改変マウス]]の解析により、PGE2生合成に関わるCOX-2とmPGES-1が疾病応答モデルにおける発熱に必須であることが示された<ref name="ref19"><pubmed>10216176</pubmed></ref><ref name="ref20"><pubmed>14566340</pubmed></ref>。LPSの全身投与により、COX-2とmPGES-1が脳内の[[wj:血管内皮|血管内皮]]細胞に共に誘導されることから、疾病時の発熱には血管内皮細胞からのPGE2産生が関与することが示唆された<ref name="ref10" /><ref name="ref21"><pubmed>11306620</pubmed></ref>。しかし、血管内皮細胞でのCOX-2とmPGES-1の遺伝子発現誘導はLPS投与から一時間程度の発熱の初期相には見られない。一方、[[wj:肺|肺]]や[[wj:肝臓|肝臓]]におけるマクロファージではCOX-2の発現は末梢へのLPS投与により速やかに誘導され、末梢血中のPGE2濃度も速やかに上昇する<ref name="ref22"><pubmed>16933973</pubmed></ref>。さらに末梢血中へのPGE2阻害[[wj:抗体|抗体]]投与により発熱が遅延することから、発熱の初期相には脳外で産生されたPGE2の関与が示唆された<ref name="ref22" />。


 EP3欠損マウスではLPSやIL-1βによる発熱応答は消失することから、疾病時の発熱にはEP3が主に働くことが示された<ref name="ref23"><pubmed>9751056</pubmed></ref><ref name="ref24"><pubmed>12837930</pubmed></ref>。しかしEP1欠損マウスでもLPSの投与量によって発熱応答に異常を認めることから、部分的にEP1の関与もある<ref name="ref24" />。さらに[[条件付け欠損マウス]]により、疾病応答における発熱には視索前野神経細胞におけるEP3が必須であることが示された<ref name="ref25"><pubmed>17676060</pubmed></ref>。EP3は視索前野の[[抑制性神経細胞]]に発現しているが、この神経細胞は[[淡蒼縫線核]](raphe pallidus; RPa)にある[[交感神経系]]の[[前運動神経]]を直接的あるいは間接的に抑制する<ref name="ref26"><pubmed>12040067</pubmed></ref>。EP3の活性化は視索前野の抑制性神経細胞を抑制することで、RPaの交感神経系を脱抑制すると考えられている。発熱は皮膚血管収縮による放熱減少、[[wikipedia:ja:褐色脂肪組織|褐色脂肪組織]]からの熱産生促進、ふるえと呼ばれる不随意の筋収縮により誘導される。脳領域不活性化実験から、視索前野におけるEP3活性化は、RPaへの直接投射により皮膚血管の収縮を促し、[[視床下部背内側]](dorsomedial hypothalamus; DMH)を経てRPaへ至る間接投射を介して褐色脂肪組織の熱産生を惹起すると考えられている<ref name="ref27"><pubmed>19327390</pubmed></ref>。
 EP3欠損マウスではLPSやIL-1βによる発熱応答は消失することから、疾病時の発熱にはEP3が主に働くことが示された<ref name="ref23"><pubmed>9751056</pubmed></ref><ref name="ref24"><pubmed>12837930</pubmed></ref>。しかしEP1欠損マウスでもLPSの投与量によって発熱応答に異常を認めることから、部分的にEP1の関与もある<ref name="ref24" />。さらに[[条件付け欠損マウス]]により、疾病応答における発熱には視索前野神経細胞におけるEP3が必須であることが示された<ref name="ref25"><pubmed>17676060</pubmed></ref>。EP3は視索前野の[[抑制性神経細胞]]に発現しているが、この神経細胞は[[淡蒼縫線核]](raphe pallidus; RPa)にある[[交感神経系]]の[[前運動神経]]を直接的あるいは間接的に抑制する<ref name="ref26"><pubmed>12040067</pubmed></ref>。EP3の活性化は視索前野の抑制性神経細胞を抑制することで、RPaの交感神経系を脱抑制すると考えられている。発熱は皮膚血管収縮による放熱減少、[[wj:褐色脂肪組織|褐色脂肪組織]]からの熱産生促進、ふるえと呼ばれる不随意の筋収縮により誘導される。脳領域不活性化実験から、視索前野におけるEP3活性化は、RPaへの直接投射により皮膚血管の収縮を促し、[[視床下部背内側]](dorsomedial hypothalamus; DMH)を経てRPaへ至る間接投射を介して褐色脂肪組織の熱産生を惹起すると考えられている<ref name="ref27"><pubmed>19327390</pubmed></ref>。


=== HPA系活性化  ===
=== HPA系活性化  ===


 視床下部の[[室傍核]](paraventricular hypothalamic nucleus; PVN)の小細胞領域には[[コルチコトロピン放出因子]](corticotropin-releasing hormone; CRH)陽性の神経細胞が存在する。このCRH陽性神経細胞は[[正中隆起]](median eminence; ME)に[[軸索]]を投射しており、神経細胞の活性化に応じてCRHを[[下垂体門脈系]]に放出する。CRHは[[下垂体前葉]]からの[[副腎皮質刺激ホルモン]](adrenocorticotropic hormone; ACTH)放出を誘導し、ACTHは[[wikipedia:ja:副腎皮質|副腎皮質]]から[[糖質コルチコイド]]放出を促す。この一連の過程を[[HPA系]]活性化と称する。視索前野へのNSAIDとPGE<sub>2</sub>の局所投与実験から、LPSによるHPA系活性化に視索前野におけるPGE<sub>2</sub>作用が関与することが示唆されてきた<ref name="ref28"><pubmed>9922367</pubmed></ref>。
 視床下部の[[室傍核]](paraventricular hypothalamic nucleus; PVN)の小細胞領域には[[コルチコトロピン放出因子]](corticotropin-releasing hormone; CRH)陽性の神経細胞が存在する。このCRH陽性神経細胞は[[正中隆起]](median eminence; ME)に[[軸索]]を投射しており、神経細胞の活性化に応じてCRHを[[下垂体門脈系]]に放出する。CRHは[[下垂体前葉]]からの[[副腎皮質刺激ホルモン]](adrenocorticotropic hormone; ACTH)放出を誘導し、ACTHは[[wj:副腎皮質|副腎皮質]]から[[糖質コルチコイド]]放出を促す。この一連の過程を[[HPA系]]活性化と称する。視索前野へのNSAIDとPGE<sub>2</sub>の局所投与実験から、LPSによるHPA系活性化に視索前野におけるPGE<sub>2</sub>作用が関与することが示唆されてきた<ref name="ref28"><pubmed>9922367</pubmed></ref>。


 LPS投与によるHPA系活性化にはタイミングによって異なるPGE<sub>2</sub>生成機構が関与する。すなわちCOX-2やmPGES-1の欠損マウスではLPS投与から6時間後の[[コルチコステロン]]放出は減弱するが、LPS投与から1時間後では減弱を認めない<ref name="ref29"><pubmed>19193887</pubmed></ref>。LPS投与により脳内の血管内皮細胞におけるCOX-2とmPGES-1の発現が共に誘導されることから、LPSによるHPA系活性化の後期相に血管内皮からのPGE2産生が関与する可能性が示唆される。一方、COX-1欠損マウスではLPS投与から1時間後のコルチコステロン上昇が消失するのに対し、6時間後のコルチコステロン上昇は正常であることから、HPA系活性化の初期相にはCOX-1を介したPG産生が関わる<ref name="ref30"><pubmed>20034541</pubmed></ref>。COX-1特異的阻害薬の脳室内投与によりLPS投与によるHPA系活性化の初期相が阻害されることから、COX-1の作用点は脳内であると考えられる<ref name="ref31"><pubmed>19828811</pubmed></ref>。生理的条件下ではCOX-1はミクログリアや血管周囲マクロファージに発現しているが、LPS投与により速やかに血管内皮に誘導されることが報告されている<ref name="ref31" />。
 LPS投与によるHPA系活性化にはタイミングによって異なるPGE<sub>2</sub>生成機構が関与する。すなわちCOX-2やmPGES-1の欠損マウスではLPS投与から6時間後の[[コルチコステロン]]放出は減弱するが、LPS投与から1時間後では減弱を認めない<ref name="ref29"><pubmed>19193887</pubmed></ref>。LPS投与により脳内の血管内皮細胞におけるCOX-2とmPGES-1の発現が共に誘導されることから、LPSによるHPA系活性化の後期相に血管内皮からのPGE2産生が関与する可能性が示唆される。一方、COX-1欠損マウスではLPS投与から1時間後のコルチコステロン上昇が消失するのに対し、6時間後のコルチコステロン上昇は正常であることから、HPA系活性化の初期相にはCOX-1を介したPG産生が関わる<ref name="ref30"><pubmed>20034541</pubmed></ref>。COX-1特異的阻害薬の脳室内投与によりLPS投与によるHPA系活性化の初期相が阻害されることから、COX-1の作用点は脳内であると考えられる<ref name="ref31"><pubmed>19828811</pubmed></ref>。生理的条件下ではCOX-1はミクログリアや血管周囲マクロファージに発現しているが、LPS投与により速やかに血管内皮に誘導されることが報告されている<ref name="ref31" />。
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=== 摂食行動  ===
=== 摂食行動  ===


 mPGES-1欠損マウスでは、IL-1βの[[wikipedia:ja:腹腔|腹腔]]内投与による[[摂食制御の神経回路|摂食行動]]抑制がほぼ完全に消失することから、疾病時の食欲不振の少なくとも一部にPGE2が関与することが示唆されている<ref name="ref33"><pubmed>16554545</pubmed></ref><ref name="ref34"><pubmed>16946079</pubmed></ref>。EP4アゴニストの[[脳室]]内投与により摂食行動が抑制されること、PGE2の[[脳室]]内投与による摂食行動の抑制がEP4阻害薬により消失することから、食欲不振におけるEP4の役割が示唆されている<ref name="ref35"><pubmed>16997129</pubmed></ref>。一方、DP1活性化は[[NPY受容体]][[Y1]]依存的に摂食行動を促進することが示されている<ref name="ref36"><pubmed>18258196</pubmed></ref>。
 mPGES-1欠損マウスでは、IL-1βの[[wj:腹腔|腹腔]]内投与による[[摂食制御の神経回路|摂食行動]]抑制がほぼ完全に消失することから、疾病時の食欲不振の少なくとも一部にPGE2が関与することが示唆されている<ref name="ref33"><pubmed>16554545</pubmed></ref><ref name="ref34"><pubmed>16946079</pubmed></ref>。EP4アゴニストの[[脳室]]内投与により摂食行動が抑制されること、PGE2の[[脳室]]内投与による摂食行動の抑制がEP4阻害薬により消失することから、食欲不振におけるEP4の役割が示唆されている<ref name="ref35"><pubmed>16997129</pubmed></ref>。一方、DP1活性化は[[NPY受容体]][[Y1]]依存的に摂食行動を促進することが示されている<ref name="ref36"><pubmed>18258196</pubmed></ref>。


=== 覚醒睡眠  ===
=== 覚醒睡眠  ===
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=== 高血圧  ===
=== 高血圧  ===


 近年、血中の[[アンジオテンシンII]]による交感神経系の活性化と高血圧における[[脳弓下器官]](subfornical organ; SFO)の関与が示唆されている。COX-1とEP1の遺伝子欠損マウスでは、アンジオテンシンII(angiotensin II; Ang II)投与による[[wikipedia:ja:高血圧|高血圧]]誘導が消失する<ref name="ref69"><pubmed>22371360</pubmed></ref>。AngIIはSFOにおける[[wikipedia:ja:活性酸素|活性酸素]]種の誘導を惹起するが、この活性酸素種の誘導がCOX-1やEP1の遺伝子欠損およびEP1阻害薬により消失する。さらに、EP1欠損マウスの[[脳弓]]下器官にEP1を再導入すると、Ang IIによる高血圧が正常に誘導されることから、Ang IIはSFOのCOX-1-PGE2-EP1系を介して活性酸素種を発生させ、これが交感神経系の活性化と高血圧を誘導すると考えられている。
 近年、血中の[[アンジオテンシンII]]による交感神経系の活性化と高血圧における[[脳弓下器官]](subfornical organ; SFO)の関与が示唆されている。COX-1とEP1の遺伝子欠損マウスでは、アンジオテンシンII(angiotensin II; Ang II)投与による[[wj:高血圧|高血圧]]誘導が消失する<ref name="ref69"><pubmed>22371360</pubmed></ref>。AngIIはSFOにおける[[wj:活性酸素|活性酸素]]種の誘導を惹起するが、この活性酸素種の誘導がCOX-1やEP1の遺伝子欠損およびEP1阻害薬により消失する。さらに、EP1欠損マウスの[[脳弓]]下器官にEP1を再導入すると、Ang IIによる高血圧が正常に誘導されることから、Ang IIはSFOのCOX-1-PGE2-EP1系を介して活性酸素種を発生させ、これが交感神経系の活性化と高血圧を誘導すると考えられている。


=== 神経細胞死  ===
=== 神経細胞死  ===

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