「強迫症」の版間の差分

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[[Image:強迫性障害 図1.jpg|thumb|350px|'''図1.強迫症状構造(Y-BOCSによる因子構造のメタ解析)'''<br>OCDにおけるsymptom dimension<ref name=ref6><pubmed>18923068</pubmed></ref><br>点線は、子供のみが関連しているもの]]  
[[Image:強迫性障害 図1.jpg|thumb|350px|'''図1.強迫症状構造(Y-BOCSによる因子構造のメタ解析)'''<br>OCDにおけるsymptom dimension<ref name=ref6><pubmed>18923068</pubmed></ref><br>点線は、子供のみが関連しているもの]]  


 表1に本邦のOCD患者における強迫症状の内容を出現頻度とともに示す<ref name="ref4"><pubmed>9718239</pubmed></ref>。  
 '''表1'''に本邦のOCD患者における強迫症状の内容を出現頻度とともに示す<ref name="ref4"><pubmed>9718239</pubmed></ref>。  


'''表1.日本人によくみられる強迫症状''' <ref><pubmed>9718239</pubmed></ref>  
{| class="wikitable"
 
|+表1.日本人によくみられる強迫症状<ref name="ref4"></ref>  
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| 汚染恐怖 ー 洗浄強迫
| 汚染恐怖 ー 洗浄強迫
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 一般的に強迫症状は、外出時の施錠の確認、トイレ後の手洗いなど日常や社会生活における通常の思考やこだわり、行動の延長上に出現する。また多くの場合、「泥棒に入られるかも」、「汚染を周囲にばらまくかも」などの強迫観念が強迫行為に先行し、その過剰性や不合理性を理解しつつも、様々な認知的プロセスによる修飾がなされ、最悪の事態をイメージし、脅威の危険性や現実性の誤った認識、そして不安が自制できない程度にまで増強されてしまう。その結果、この脅威を完璧にコントロールしたいという欲求により、繰り返し行動に駆り立てられている<ref name="ref8">'''松永寿人、三戸宏典、山西恭輔ほか'''<br>典型例を知る「神経症性障害 2」強迫性障害」<br>''精神科治療学''27; 929-934, 2012.</ref>。この様な典型的なOCD患者では、他の不安症と同様に強迫症状が誘発される対象や状況を、しばしば避けようとする(回避)。また手洗いや確認を、自分の納得する方法で強要したり、「大丈夫か」の保証を繰り返し要求したりして、強迫症状に家族などを巻き込むことが多い<ref name="ref8" />。  
 一般的に強迫症状は、外出時の施錠の確認、トイレ後の手洗いなど日常や社会生活における通常の思考やこだわり、行動の延長上に出現する。また多くの場合、「泥棒に入られるかも」、「汚染を周囲にばらまくかも」などの強迫観念が強迫行為に先行し、その過剰性や不合理性を理解しつつも、様々な認知的プロセスによる修飾がなされ、最悪の事態をイメージし、脅威の危険性や現実性の誤った認識、そして不安が自制できない程度にまで増強されてしまう。その結果、この脅威を完璧にコントロールしたいという欲求により、繰り返し行動に駆り立てられている<ref name="ref8">'''松永寿人、三戸宏典、山西恭輔ほか'''<br>典型例を知る「神経症性障害 2」強迫性障害」<br>''精神科治療学''27; 929-934, 2012.</ref>。この様な典型的なOCD患者では、他の不安症と同様に強迫症状が誘発される対象や状況を、しばしば避けようとする(回避)。また手洗いや確認を、自分の納得する方法で強要したり、「大丈夫か」の保証を繰り返し要求したりして、強迫症状に家族などを巻き込むことが多い<ref name="ref8" />。  


 一方、強迫行為が不安反応として出現する典型的パターン以外にも、「厳密に適用しなければならないルールに従って、駆り立てられる様に行なわれる」場合がある<ref name="ref2" /> <ref name="ref8" />。例えば、スリッパを完璧な左右対称に並べ直す動作を延々と繰り返したり、本の背の高さをきちんと正確に揃えることにこだわり、整頓が止まらなくなったりする。あるいは、腕を袖に通す時や髭を剃る際の感覚、ドアや冷蔵庫の扉を閉めた時の完璧な「ぴったり」感にこだわり、服の着脱や髭剃り、ドアの開閉など同じ動作を数時間にわたり何度もやり直したり、動けず固まったりして、次の行動に移れなくなる、いわゆる「[[強迫性緩慢]]」に陥ることがある<ref name="ref8" />。この様な繰り返し行為は、通常は観念、あるいは認知的不安増強プロセスの先行を認めず、あるいは不明瞭であり、概ね自我親和性で洞察に乏しい<ref name="ref8" />。この背景には、[[チック障害]]([[tic disorder]]; TD)との密接な関連、そしてチック症状に先行する[[感覚知覚現象]]&nbsp;(sensory phenomena)と同様に、“まさにぴったり”感 (just right feeling)の追求や不完全感を解消したいという精神知覚、あるいは物に触る感覚へのこだわりなどがしばしば見られ、OCDからチック障害に至る連続性が想定される<ref name="ref8" /> <ref name="ref9"><pubmed>16389213</pubmed></ref> <ref name="ref10">'''金生由紀子'''<br>チック障害との関連によるOCDの検討<br>''精神経誌'' 111; 810-815, 2009.</ref> <ref name="ref11">'''山西恭輔、荒井克純、林田和久ほか'''<br>トウレット症候群を伴う強迫性障害の臨床像と治療~blonanserineを用いたSSRI強化療法を中心に~<br>''最新精神医学''20; 326-332, 2012.</ref>。[[DSM-5]]では、新たなサブタイプとして、慢性チック障害の生涯罹病を有するOCD患者は、「チック関連性」と特定される予定である。  
 一方、強迫行為が不安反応として出現する典型的パターン以外にも、「厳密に適用しなければならないルールに従って、駆り立てられる様に行なわれる」場合がある<ref name="ref2" /> <ref name="ref8" />。例えば、スリッパを完璧な左右対称に並べ直す動作を延々と繰り返したり、本の背の高さをきちんと正確に揃えることにこだわり、整頓が止まらなくなったりする。あるいは、腕を袖に通す時や髭を剃る際の感覚、ドアや冷蔵庫の扉を閉めた時の完璧な「ぴったり」感にこだわり、服の着脱や髭剃り、ドアの開閉など同じ動作を数時間にわたり何度もやり直したり、動けず固まったりして、次の行動に移れなくなる、いわゆる「[[強迫性緩慢]]」に陥ることがある<ref name="ref8" />。この様な繰り返し行為は、通常は観念、あるいは認知的不安増強プロセスの先行を認めず、あるいは不明瞭であり、概ね自我親和性で洞察に乏しい<ref name="ref8" />。この背景には、[[チック障害]]([[tic disorder]]; TD)との密接な関連、そしてチック症状に先行する[[感覚知覚現象]]&nbsp;(sensory phenomena)と同様に、“まさにぴったり”感 (just right feeling)の追求や不完全感を解消したいという精神知覚、あるいは物に触る感覚へのこだわりなどがしばしば見られ、OCDからチック障害に至る連続性が想定される<ref name="ref8" /> <ref name="ref9"><pubmed>16389213</pubmed></ref> <ref name="ref10">'''金生由紀子'''<br>チック障害との関連によるOCDの検討<br>''精神経誌'' 111; 810-815, 2009.</ref> <ref name="ref11">'''山西恭輔、荒井克純、林田和久ほか'''<br>トウレット症候群を伴う強迫性障害の臨床像と治療~blonanserineを用いたSSRI強化療法を中心に~<br>''最新精神医学''20; 326-332, 2012.</ref>。[[DSM-5]]では、新たなサブタイプとして、慢性チック障害の生涯罹病を有するOCD患者は、「チック関連性」と特定される予定である。


=== 併発症  ===
=== 併発症  ===

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