16,040
回編集
細編集の要約なし |
細 (→海馬) |
||
21行目: | 21行目: | ||
===海馬=== | ===海馬=== | ||
海馬は中隔ニューロンの投射を受けシータ波を生成する。まず、[[神経細胞]]レベルでのメカニズムとして、海馬ニューロンはアセチルコリンの入力に対して反応性が高い。例えば、海馬CA1錐体細胞に多く発現する[[KCNQ]] ([[Kv7]]) チャネルは、[[カリウムチャネル|電位依存性K+チャネル]]の一種で[[ムスカリン性アセチルコリン受容体]]([[M1受容体]])を介して活動調整され、アセチルコリン存在下で細胞を[[過分極]]しにくい状態に保つ(すなわち、[[膜電位]]が高い状態に保たれる)<ref name=Delmas2005><pubmed>16261179</pubmed></ref>。 | 海馬は中隔ニューロンの投射を受けシータ波を生成する。まず、[[神経細胞]]レベルでのメカニズムとして、海馬ニューロンはアセチルコリンの入力に対して反応性が高い。例えば、海馬CA1錐体細胞に多く発現する[[KCNQ]] ([[Kv7]]) チャネルは、[[カリウムチャネル|電位依存性K<sup>+</sup>チャネル]]の一種で[[ムスカリン性アセチルコリン受容体]]([[M1受容体]])を介して活動調整され、アセチルコリン存在下で細胞を[[過分極]]しにくい状態に保つ(すなわち、[[膜電位]]が高い状態に保たれる)<ref name=Delmas2005><pubmed>16261179</pubmed></ref>。 | ||
また、海馬のネットワークの神経活動はシータ波の周波数に共鳴しやすいという特徴を持つことが理論的にも実験的にも示唆されている。例えば、海馬の[[錐体細胞]]同士が結合したネットワーク・モデルではシータ波振動を形成することがシミュレーションにより提案されている<ref name=Tiesinga2001><pubmed>11769308</pubmed></ref>。また、in vitro 実験において、海馬全体を摘出して[[人工脳脊髄液]]に浸しておくと、アセチルコリンを与えなくても自発的にシータ波帯域の[[オシレーション]]を形成することが知られている<ref name=Goutagny2009><pubmed>19881503</pubmed></ref>。 | また、海馬のネットワークの神経活動はシータ波の周波数に共鳴しやすいという特徴を持つことが理論的にも実験的にも示唆されている。例えば、海馬の[[錐体細胞]]同士が結合したネットワーク・モデルではシータ波振動を形成することがシミュレーションにより提案されている<ref name=Tiesinga2001><pubmed>11769308</pubmed></ref>。また、in vitro 実験において、海馬全体を摘出して[[人工脳脊髄液]]に浸しておくと、アセチルコリンを与えなくても自発的にシータ波帯域の[[オシレーション]]を形成することが知られている<ref name=Goutagny2009><pubmed>19881503</pubmed></ref>。 | ||
[[ファイル:Fujisawa theta wave Fig2.png|サムネイル|'''図2. 位相前進の模式図'''<br>各場所細胞の発火活動パターンは、シータ波に発火タイミングが調整される。具体的には、動物が場所細胞の場所受容野の中心に存在するときには場所細胞はシータ波の谷底(180°)で発火し、動物が前方に移動するに従いその発火位相少しずつ前進していく。この現象のため、シータ波の一周期の中でそれぞれの場所細胞の相対的位置関係を圧縮して表象することができる。]] | [[ファイル:Fujisawa theta wave Fig2.png|サムネイル|'''図2. 位相前進の模式図'''<br>各場所細胞の発火活動パターンは、シータ波に発火タイミングが調整される。具体的には、動物が場所細胞の場所受容野の中心に存在するときには場所細胞はシータ波の谷底(180°)で発火し、動物が前方に移動するに従いその発火位相少しずつ前進していく。この現象のため、シータ波の一周期の中でそれぞれの場所細胞の相対的位置関係を圧縮して表象することができる。]] | ||
==海馬機能における役割== | ==海馬機能における役割== | ||
===海馬の二状態モデル=== | ===海馬の二状態モデル=== |