「液-液相分離」の版間の差分

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 液-液相分離は主に2つの原理によって生じる。核生成と成長(nucleation and growth)では、[[過飽和]]状態から相分離がはじまる。最初に一定のエネルギー障壁を超えて、小さな液滴が形成される。この核は一定のサイズを超えないと分解してしまうが、それ以上になった核が、周囲の分子を取り込みながら大きくなる。一方、[[スピノーダル分解]]([[Spinodal decomposition]])では、熱力学的に不安定な状態から微小な濃度ゆらぎが自発的に増幅されて、相分離が進行する。核生成のエネルギー障壁が存在しないため、全体的に均一な構造からネットワーク状の構造へと分離が起こる。
 液-液相分離は主に2つの原理によって生じる。核生成と成長(nucleation and growth)では、[[過飽和]]状態から相分離がはじまる。最初に一定のエネルギー障壁を超えて、小さな液滴が形成される。この核は一定のサイズを超えないと分解してしまうが、それ以上になった核が、周囲の分子を取り込みながら大きくなる。一方、[[スピノーダル分解]]([[Spinodal decomposition]])では、熱力学的に不安定な状態から微小な濃度ゆらぎが自発的に増幅されて、相分離が進行する。核生成のエネルギー障壁が存在しないため、全体的に均一な構造からネットワーク状の構造へと分離が起こる。


[[ファイル:Shiraki 液-液相分離 Fig2.png|サムネイル|'''図2. 2種類の物質を混合したときの相図のイメージ図'''<br>A. デキストランとポリエチレングリコール。<br>B. ATPとポリリン酸。<br>C. オボアルブミンとリゾチーム]]
== 液-液相分離と相図 ==
== 液-液相分離と相図 ==


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 相分離は他にもさまざまな種類がある。[[ブロックコポリマー]]などの高分子で見られる、ナノメートルからマイクロメートルスケールで生じる相分離を[[ミクロ相分離]]という<ref name=Leibler1980>'''Leibler, L. (1980).'''<br>Theory of microphase separation in block copolymers. Macromolecules, 13(6), 1602-1617.</ref>。ミクロ相分離は通常のマクロ相分離とは異なり、完全に相分離せず、特定のナノ構造を形成するのが特徴である。
 相分離は他にもさまざまな種類がある。[[ブロックコポリマー]]などの高分子で見られる、ナノメートルからマイクロメートルスケールで生じる相分離を[[ミクロ相分離]]という<ref name=Leibler1980>'''Leibler, L. (1980).'''<br>Theory of microphase separation in block copolymers. Macromolecules, 13(6), 1602-1617.</ref>。ミクロ相分離は通常のマクロ相分離とは異なり、完全に相分離せず、特定のナノ構造を形成するのが特徴である。


 相分離が進むときに[[粘弾性効果]]によってネットワーク状構造など異常な形態が形成されることがある。このような相分離を[[粘弾性相分離|粘弾性(Viscoelastic)相分離]]という<ref name=Tanaka2000>Tanaka, H. (2000).<br>Viscoelastic phase separation. Journal of Physics: Condensed Matter, 12(15), R207.</ref>。
 相分離が進むときに[[粘弾性効果]]によってネットワーク状構造など異常な形態が形成されることがある。このような相分離を[[粘弾性相分離|粘弾性(Viscoelastic)相分離]]という<ref name=Tanaka2000>'''Tanaka, H. (2000).'''<br>Viscoelastic phase separation. Journal of Physics: Condensed Matter, 12(15), R207.</ref>。


 相分離の進行によって状態が変わるケースとして、例えば、一部の成分が[[結晶化]]し、それによって相分離が進行する[[結晶化誘起相分離]]や、小さな分子や[[コロイド]]粒子が除去されることで、残りの成分が相分離する[[枯渇相分離]]、化学反応が進行するにつれて組成が変化し、ある時点で相分離が起きる[[反応誘起相分離]]などもある。
 相分離の進行によって状態が変わるケースとして、例えば、一部の成分が[[結晶化]]し、それによって相分離が進行する[[結晶化誘起相分離]]や、小さな分子や[[コロイド]]粒子が除去されることで、残りの成分が相分離する[[枯渇相分離]]、化学反応が進行するにつれて組成が変化し、ある時点で相分離が起きる[[反応誘起相分離]]などもある。

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