「エンドサイトーシス」の版間の差分

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=== 関与する脂質 ===
=== 関与する脂質 ===
 エンドサイトーシス過程においては、上記に挙げた細胞質タンパク質だけでなく、脂質の代謝、とりわけPI(4,5)P2の代謝によっても厳密に制御されている。特に、クラスリン依存的エンドサイトーシスにおけるPI(4,5)P2の役割はよく知られている。膜上に一過的に合成されたPI(4,5)P2はそれと高い親和性をもつ多くのBARドメインタンパク質の形質膜への集積を誘導し、そこでエンドサイトーシスを惹起する。形質膜で合成されたPI(4,5)P2は、その後クラスリン被覆小胞に移行し、ホスファチジルイノシトール脱リン酸化酵素 (SacIやsynaptojaninなど)によって分解されることで、クラスリンの脱被覆が生じ、エンドサイトーシスが完了する。特に神経細胞のシナプス前終末においては、PI(4,5)P2の生合成にはphosphatidylinositol phosphate kinase type Iγ (PIPKIγ)、分解にはsynaptojaninが主に関与している。これら遺伝子の欠損マウス由来の神経細胞では、シナプス小胞のエンドサイトーシスが顕著に遅延する<ref name=Di Paolo2004><pubmed>15386003</pubmed></ref><ref name=Wenk2001><pubmed>11604140</pubmed></ref>。これらの実験結果は、エンドサイトーシスには、細胞質タンパク質に加えて、シナプス局所での脂質代謝が重要な役割をはたしている。
 エンドサイトーシス過程においては、上記に挙げた細胞質タンパク質だけでなく、脂質の代謝、とりわけPI(4,5)P2の代謝によっても厳密に制御されている。特に、クラスリン依存的エンドサイトーシスにおけるPI(4,5)P2の役割はよく知られている。膜上に一過的に合成されたPI(4,5)P2はそれと高い親和性をもつ多くのBARドメインタンパク質の形質膜への集積を誘導し、そこでエンドサイトーシスを惹起する。形質膜で合成されたPI(4,5)P2は、その後クラスリン被覆小胞に移行し、ホスファチジルイノシトール脱リン酸化酵素 (SacIやsynaptojaninなど)によって分解されることで、クラスリンの脱被覆が生じ、エンドサイトーシスが完了する。特に神経細胞のシナプス前終末においては、PI(4,5)P2の生合成にはphosphatidylinositol phosphate kinase type Iγ (PIPKIγ)、分解にはsynaptojaninが主に関与している。これら遺伝子の欠損マウス由来の神経細胞では、シナプス小胞のエンドサイトーシスが顕著に遅延する<ref name=DiPaolo2004><pubmed>15386003</pubmed></ref><ref name=Wenk2001><pubmed>11604140</pubmed></ref>。これらの実験結果は、エンドサイトーシスには、細胞質タンパク質に加えて、シナプス局所での脂質代謝が重要な役割をはたしている。


== シナプス前終末 ==
== シナプス前終末 ==